川端康成文学賞



川端康成文学賞




受賞作品


「かけら」 青山七恵

「新潮」 2008年11月号


受賞のコメント


「かけら」を書くにあたって、初めて取材旅行をした。バッジをつけてバスに乗り込み、添乗員に誘導されるがまま、さくらんぼ狩りをし、きのこの栽培室を見学し、高原を散策した。そして翌日から書き始めた。
 小説を書くときには、何回も主人公の目を借りる。主人公に見えているもの、見えていないものは何か、考える。旅行から帰って校了までのあいだ、頭の中で私は何十回とはとバスに乗り、さくらんぼを食べ、高原のベンチに座った。小説が完成するにつれて、自分が過ごした一日の記憶が、主人公が過ごした一日の記憶により鮮やかに塗り変えられていくのを感じた。
 小説を書くという体験の新しい一面を知った、思い出深い作品だった。受賞することができて、今、本当にうれしい。



〔青山七恵氏略歴〕
昭和五十八年埼玉県生まれ。筑波大学図書館情報専門学群卒業。平成十七年「窓の灯」で文藝賞受賞。平成十九年「ひとり日和」で芥川賞受賞。




候補作品


楽観的な方のケース 岡田利規
terra 川上弘美
我是 リービ英雄
かけら 青山七恵
廃疾かかえて 西村賢太
麝香猫 遠藤徹

選考委員


秋山駿 アキヤマ・シュン

1930年東京生れ。早大仏文科卒。1960年、評論「小林秀雄」で群像新人文学賞を受賞。1990年、『人生の検証』で伊藤整文学賞受賞。1996年刊行の『信長』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。他に、『舗石の思想』『知れざる炎―評伝中原中也―』など多くの著書がある。日本芸術院会員。



井上ひさし イノウエ・ヒサシ

(1934-2010)山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍した。2004(平成16)年に文化功労者、2009年には日本藝術院賞恩賜賞を受賞した。1984(昭和59)年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行った。



辻原登 ツジハラ・ノボル

1945年、和歌山県生まれ。1990年「村の名前」で芥川賞、1999年『翔べ麒麟』で読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で谷崎潤一郎賞、2005年『枯葉の中の青い炎』で川端康成文学賞、2006年『花はさくら木』で大佛次郎賞を受賞。他の著書に『黒髪』『発熱』『約束よ』『ジャスミン』『夢からの手紙』『円朝芝居噺 夫婦幽霊』『許されざる者』など。



津島佑子 ツシマ・ユウコ

1947(昭和22)年、東京生れ。作家・太宰治の次女。白百合女子大学英文科卒。在学中より「文芸首都」「三田文学」に参加。『寵児』(1978年女流文学賞)、『光の領分』(1979年野間文芸新人賞)、『黙市』(1983年川端康成文学賞)、『夜の光に追われて』(1987年読売文学賞)など受賞作多数。1991年10月から翌年6月までパリ大学東洋語学校で日本文学を講義する。『謝肉祭』『大いなる夢よ、光よ』『かがやく水の時代』など多くの作品がある。



村田喜代子 ムラタ・キヨコ

1945年、福岡県北九州市八幡生まれ。1985年、自身のタイプ印刷による個人誌「発表」を創刊。1987年『鍋の中』で芥川賞を受賞。1990年『白い山』(文藝春秋刊)で女流文学賞を、1992年『真夜中の自転車』(文藝春秋刊)で平林たい子賞を、1998年『望潮』で川端康成賞を受賞した。『花野』(講談社刊)、『蕨野行』『蟹女』『龍秘御天歌』(文藝春秋刊)などの著書がある。



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