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受賞作品
『覘き小平次』 京極夏彦
中央公論新社


受賞のことば

かつて草双紙から読本へと展開する本邦の創作文芸の大河の中に「怪談」という太い流れがありました。今回栄えある賞を戴いた『覘き小平次』は、その脈絡を受け継ぐ形で書かれた小説です。
たとえば、近世戯作の基本的な手法として「本歌取り」が挙げられます。受賞作も、先行する「小平次もの」全てを材料にして作られています。しかしかつての作品群がそうであったように、本作も懐古的・復古的な意図で書かれたものではありません。通俗娯楽小説は常に最先端でなくてはならない筈のものだと考えるからです。
近代小説のルーツは往々にして海外に求められがちです。しかし現在流通しているエンタテインメント小説の雛形を辿るなら、必ずしもそうとばかりはいえないだろうと私は考えています。大衆小説の直接的な祖型は講談なのでしょうし、狂歌や俳諧などが培った知的遊戯の命脈が近代以降すっかり断たれてしまったとは思えません。
そうした文脈の中で捉えた時、この度の受賞はいっそう喜ばしく思えます。ありがとうございました。

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