女による女のためのR-18文学賞

新潮社

第6回 受賞作品

王冠ロゴ 優秀賞受賞

三日月 拓

「シーズンザンダースプリン♪」

三日月 拓

――受賞おめでとうございます。小説を書き始めたのはいつごろですか?

 4、5年くらい前です。きれいな言葉とか面白い表現を思いついたときに、ただ思いついただけではもったいない、でもノートに書きとめているだけではつまらない。形にして残したいと思ったとき、小説という形式を思いつきました。小説を選んだのは、公になりやすいというか、他の人の目に触れる機会が多いと思ったから。日記だと自分の中のだけだし、今はホームページやブログという表現方法もありますが、それもやっぱり内輪のものになりやすいような気がして。

――いままでに書いた作品はどれくらいありますか?

 書いていると言うのも恥ずかしいというか、本数に入れたくないものも含めて10本くらいです。1歳半の子どもがいるので、1日のうちで自分の自由な時間が2時間くらいなんです。その時間を使って少しずつ書いています。すばる文学賞や文藝賞など、他の賞にも応募していました。
 小さいころから文章を書くことは好きでした。小学生のころは朝日新聞の「小さな目」という詩のコーナーに応募して、運よく掲載していただいたこともあります。いつの間にか書くことからは離れていましたが、結婚して仕事をやめて、子どもを生んでからまた書き始めました。
 R-18文学賞は、インターネットでたまたま見つけたんです。去年の8月ごろ、募集が始まってからホームページを見つけて、短編だから時間をかけずに書けるかも、と思った。それから1週間くらいで仕上げて応募したのが今回の受賞作です。

――優秀賞に選ばれたと聞いて、どう思いましたか。

 びっくりしました。もう、ほんとに。月並みですが。最終候補になったと聞いて、読者投票のホームページをちょくちょく覗いていたんですけれど、ずっと最下位のほうだったんです。もうだめだ、でも最終選考に残っただけでもありがたいな、なんて思っていたので。

――選考委員の先生方の選評はいかがでしたか。

 やっぱりよく見てらっしゃってすごいな、と思いました。作品の欠点を見事に指摘されたので。例えば山本文緒さんが指摘された「エピソードを重ねる手法も、計算してそうしたのか未熟な結果なのか計りかねる」ということ。確かに、演出として計算してやったわけではなくて自分が書きやすいようにやったことだったんです。

――キャラクターの造型がそれぞれにおもしろく、変な人ばかりなのに本当にこんな人がいるのかも、と思わされました。実在のモデルはいるのでしょうか。

 別にモデルがいるわけではなくて、自然に自分の中から浮かんできました。ビジュアルから思いつく感じで、それぞれ顔がちゃんとあるんです。みんなマンガみたいに美人なんですけど、あ、でも、セーラー服の男性だけは気持ち悪い感じの顔という設定です(笑)。

――これまでにはどんな本を読んできましたか?

 特に好きで、何度も読んできたのはドストエフスキー。なかでも『罪と罰』が好きです。難しくて内容がわからないだけかもしれませんが、何回読んでもおもしろい。登場人物の発言や行動がおかしくて、読んでいて笑ってしまうんです。他のロシアの作家はあまり読んでいないのですが。あとは村上春樹さんや江國香織さんをよく読んでいます。村上さんもドストエフスキーがお好きと聞いて、何かつながるものがあるのかも、と思いました。

――書くために、日常で何か気をつけていることはありますか。

 小説はある程度正しい言葉で書かれたほうがいいと思うので、普段からあまり言葉を崩したり新しい言葉に飛びつくのではなく、正しい言葉を使うように心がけています。きちんとできているかどうか自信はないですが……。あとは、きれいな言葉を思いついたときに書き留めておくようにしています。

――これからはどんな作品を書いていきたいですか。

 今なんとなく考えているのは、年老いた夫婦の物語。自分と同じような若い人の恋愛の話は、なんとなく恥ずかしくて書けないんです。また、今回の小説の続きも考えているので、それも書いていきたいです。小学生だった主人公が高校生になる話なんです。せっかく素晴らしい賞をいただいたので、これからもずっと書き続けたい。これで終わりにはしたくない、と思います。

〈三日月さんの受賞第1作は、「小説新潮」2007年7月号(6月22日発売)に掲載予定です。どうぞお楽しみに!〉