女による女のためのR-18文学賞

新潮社

第17回受賞作品
受賞の言葉

王冠ロゴ 大賞受賞

清水裕貴

「手さぐりの呼吸」

清水裕貴(しみず・ゆき)

1984年、千葉県船橋市生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。写真家、グラフィックデザイナー。車の運転が好き。海、川、湖によく行くが泳げない。

受賞の言葉

水辺から感謝を込めて

 日々の幻を表現するために、文を書いたり写真を撮ったりその他諸々な事をして生きています。小説は難しいですが、とても楽しいです。大好きな作家のお二人に読んでもらえたらいいなと思って応募したところ、思いがけず素晴らしい賞を頂けて、大変嬉しく思っています。
 この小説は、私が卒業した武蔵野美術大学の傍らを流れる玉川上水が舞台になっています。太宰治が入水自殺した川で、入学式の時に太宰治似の助手が「僕が川辺にじっと佇んでいたら止めて下さい」と言っていたのをよく覚えています。太宰の成分がちょっと残っていたら吸い込みたいねと言いながら、仲間達と水辺を歩いていました。その時は多分吸い込めなかったんだと思いますが、今後色々なエッセンスを吸い込みつつ、精進していきたいと思っております。
 遠くの知らない人や、もう生きていない人、存在していたかどうかわからない人など、様々な人の時間が重なるように、願いを込めて。