女による女のためのR-18文学賞

新潮社

第8回受賞作品
受賞の言葉

王冠ロゴ 大賞受賞

窪 美澄

「ミクマリ」

窪 美澄(くぼ・みすみ)

1965年東京生まれ。広告制作会社勤務を経て、出産後、フリーランスの編集ライターに。妊娠、出産、子育て、女性の体と健康を中心にすえ、占星術、漢方などをテーマに、書籍、雑誌、webの世界で活動中。

受賞の言葉

 私はふだん、フリーで書籍の企画を立てたり、雑誌の記事を書く仕事をしています。今、出版という世界は、とてもシビアな状況に直面していますが、そのなかで、どうやったら読者の方に正しく、わかりやすく、そして楽しく、情報が伝わるのかを考えて、日々仕事を続けてきました。
 仕事や家事や子育てで嵐のように過ぎていく日々のなかで、ふと、「小説を書いてみたい」と思ったのは、35才を過ぎてからです。自分にとって、小説というのは簡単に手の届かない、とても特別で大事な存在で、それを書く資格は自分にないと思っていました。
「小説を書いていったいどうするの?」「小説を書いたところで何になるの?」「ほかにやることがあるんじゃないの?」そういう問いを常に自分の胸につきつけながら、それでも、物語を書くという作業はやめられず、そのおもしろさに次第に引き込まれていきました。
「女による女のためのR-18文学賞」は、性をテーマにした文学賞ですが、性について書くというのは、多くの年齢を重ねた私にとっても、とても勇気の必要な作業でした。それでも、その恥ずかしさを乗り越えて、家族や友人、そして、世間のみなさんにどんなふうに思われてもいいから、自分がいちばん書きたいことを書くということ。小説を書くという作業は、とてつもなく長い階段を、一段ずつ、手探りで登っていくような作業だと思いますが、「R-18文学賞」に挑戦したことで、ほんの一段ですが、その階段を登れたような気がします。そして、今後も、その長い階段を爪に血をにじませながら、じりじりと一段ずつ登っていけたらいいなと思っています。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。