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編集者のことば 一冊一冊の本に、生まれたきっかけや制作にまつわるエピソードがあり、編集に携わった担当者の思いがこもっています。そんな「裏方からのひとこと」、よろしければご一読を―。

木を植えよ!

「本物の森」だけが、いのちを守る。
そして、それはあなたの庭から始められる。


「本物か、ニセモノか。Iさんはどちらなんでしょうか? しばらく仕事をしてみないと、わかりませんね」
 著者の宮脇先生に二年ほど前、初めてお目にかかった時、先生は私(I)に向かってそうおっしゃった。いい加減な気持ちで原稿依頼などしてはいないが、こう言われると、正直ビビる。ことば通り、先生は厳しかった。他人に厳しいのは、自分に三倍くらい厳しいからだと分かったのは、本作りのために、横浜にある先生の仕事場や、何カ所かの植樹祭にお伺いしてからだった。とにかく、先生は忙しい。上海から成田に帰国し、その足で札幌に飛び、二日間、講演会と植樹祭。横浜には一日帰っただけで、再び、鳥取へ。その次の週はアフリカ……。国内、海外を問わず、植樹祭、講演会、インタビュー取材……そんな芸能人みたいなスケジュールの中で寸暇を惜しみ、先生はこの本を書き下ろした。

「完璧な本にしましょう」(これも先生の口癖)と、妥協を惜しまぬ姿勢は、その後、何度も原稿の修正を重ねることになった。いつ先生は本の仕事をしているのだろう? と私は思った。移動中、旅先のホテルで、満員電車で立ちながら(実際に目撃した)、先生はこの本を書いたのだ。思いもよらぬ時間に、思いもよらぬ速さで、先生は連絡をくれ、原稿を直してきた。先生の迫力に引きずられるように、私もこの仕事に集中していった。先生と接していると、ニセモノのままでいることができないのだ。
「木を植えなければいけない。しかも、その土地に合った正しい木を、本物の木を」
 誇張ではなく、このことのためだけに、78歳の先生は起きている時間のほとんどすべてを費やしている。
「ニセモノを植えるから、二次災害が起こり、森が弱り、維持費がかかるんです。本物の木だけが、放っておいても永久に生き続け、人間の生活を守り、心を豊かにするんです。木と同じように、今の世の中、ニセモノが多すぎます。ニセモノは、長持ちせずに、すぐにダメになる……」
 植えるべき「本物の木」とは何か? ということについては、ぜひ本書をお読みいただきたいのだが、この本はいろいろな意味で「本物であることの大切さ」を私に教えてくれた。
「厳しい」と書いてしまったが、付け加えると、先生は講演会やパーティ、植樹祭で、老若問わず女性に囲まれる。これも、本物だけが発する魅力なのである。

2006/11
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