新潮選書 |
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昆虫未来学―「四億年の知恵」に学ぶ―
驚異の「昆虫力」は人類の未来に欠かせない。革新的研究成果の数々
4億年ほど前に地球に誕生した昆虫は、苛酷な環境の変化を生き延びて、地球でもっとも繁栄する生物になりました。昆虫種は100万を優に越え、全生物種の3分の2を占めるともいわれます。まさに地球は「虫の惑星」なのです。彼らはさまざまな生物と複雑で巧妙な生態系を結び、餌となって食物連鎖を支えるだけでなく、有機物を植物が利用する無機塩類に変える分解者として、あるいは、果樹・野菜の花粉媒介者として、私たちにとってもかけがえのない存在です。
昆虫繁栄の要因は「環境に対する高い適応能力」「精緻なコミュニケーションシステム」「研ぎ澄まされたデザインと機能」の3つです。その「昆虫力」はみごとというほかないもので、そこには人類の未来にも役立つさまざまなヒントが隠されています。
たとえば、気温や湿度に敏感なシロアリの巣は、夏の気温が45度以上、冬の気温が0度以下になるようなところでも、内部の温度はいつも30度くらいに保たれています。また、アサギマダラという、2000キロも移動する蝶の翅の半透明な部分は、細長い鱗粉でまばらに覆われているだけなのに超撥水性を保持しています。このような構造と機能を模倣することができれば、生態系に負荷がかからず、便利で経済的な、一石二鳥どころではない技術が開発できるでしょう。
また、農業に大きな被害をもたらす害虫も、生態系には欠かせない存在なので、駆除してしまえばよいというものではありません。そこで、その生態を科学的に分析した、環境保全型の新しい害虫管理の方法も研究されています。
昆虫は人類のかけがえのないパートナーであり、彼らが極めた構造と機能は、人類が学ぶべきお手本なのです。
2010/12




