夜露死苦現代詩2.0

ストリート生まれ、音楽を

第8回 ここはえらくこっけいでかくて広えーが冷てえ夜景――TOKONA-X

TOKONA-X
『尾張ヒールズ』Feat.EQUAL(from M.O.S.A.D)
『P×××Y』
YouTubeでは、TOKONA-XのPVその他の楽曲を視聴することができます→http://bit.ly/zeKWpi

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立ち読み(本誌記事より)

(文・都築響一)

 11月22日の真夜中を過ぎたころ、名古屋市街の中心部を少し外れたRADIXというクラブに向かった。便利なロケーションでもないし、電車もバスもとうに終わっている時間なのに、フロアは身動きできないほどに混み合っている。すでに400人を超す入場者で超満員なのに、あとからあとから新しい客が入ってきて、フロアに降りる階段の途中で、それ以上進むことができず立ちすくむ。
 ステージ上にはラッパーとDJのセットが次々に登場し、激しい音と言葉をフロアにぶつけ、観客は腕を挙げてそれに応える。しかしいつものように拳をあげるのでもなく、人差し指を立てるのでもなく、両腕をバツの字に組み合わせて。それは「X=エックス」であり、名古屋が生んだ偉大なラッパー「TOKONA-X」(トコナ・エックス)を称えるサインだ。今夜RADIXで開かれているパーティは、2004年11月22日にわずか26歳で急死したTOKONA-Xの命日にあわせて開かれている、もう7回目になるライブ・イベントなのだ。

続きは本誌にてお楽しみ下さい。

TOKONA-X

 1978年生まれ・愛知県常滑市出身。1996年7月、日比谷野外音楽堂で開催されたジャパニーズ・ヒップホップの記念碑的イベント「さんピンCAMP」に弱冠17歳で参加。共にそのステージに立ったDJの刃頭と「ILLMARIACHI」を結成し、インディ・レーベル「音韻王者(オーティノージャー)」からCDデビュー。名古屋弁で挑発的にまくし立てていくパフォーマンスは、当時のシーンに凄まじい衝撃を与えた。
 一方、旧友のラッパー“E”QUALやAKIRAらと共に組んでいた「M.O.S.A.D.」の一員としても精力的な活動を重ねる。その実力はアンダーグラウンド界の注目を集め、多数のレーベルによる争奪戦を巻き起こす。しかし2004年、満を持してDef Jam Japanからアルバム『トウカイXテイオー』でメジャーデビューを果たした矢先の同年11月22日に26歳の若さで急逝。現在活躍する若手ヒップホップアーティストに与えた影響は計り知れない。

都築響一(つづき・きょういち)
1956年、東京生まれ。現代美術・建築・写真・デザインなどの分野で編集・執筆活動を続ける。93年、東京のリアルな居住空間を捉えた『TOKYO STYLE』を発表。96年には『ROADSIDE JAPAN』で第23回木村伊兵衛賞を受賞。『賃貸宇宙』『着倒れ方丈記』『バブルの肖像』『現代美術場外乱闘』『天国は水割りの味がする』など著作多数。今回の連載は、街角に隠れた言葉で日本の現在を映し出した『夜露死苦現代詩』(05年から06年にかけて『新潮』に連載)に続く形となる。
都築響一

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