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絲山秋子「妻の超然」(100枚)

新潮 2009年3月号

(毎月7日発行)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2009/02/07

発売日 2009/02/07
JANコード 4910049010396
定価 943円(税込)

◆妻の超然(100枚)/絲山秋子
「あっ、破局っ」なんていい響きなんだろう。夫が浮気中の妻の〈心〉を繊細でヒューモアに充ちた言葉で描く。

◆【芥川賞受賞第一作】とにかくうちに帰ります(130枚)/津村記久子
暴風雨の日、長い長い橋をわたって〈うち〉に帰る。世界に在ること、世界が在ることの隠喩としての物語。

◆まずいスープ(150枚)/戌井昭人
大麻を育て密輸にかかわり失踪するダメ父と一家の奇妙で可笑しな連帯。「意味わかんねえ人間」たちのドラマ。

◆地球 その他の短篇/キム・ムンゾー  訳/木村榮一

◆八月/佐川光晴

◆男と点と線/山崎ナオコーラ

■新潮
・文化と文明はどう違うか/松本仁一
・源氏物語と整形/大塚ひかり
・バブルで名建築は生まれるか?/平松 剛

◆第41回《新潮新人賞》応募規定

■ケンブリッジ帰りの文士――吉田健一論/角地幸男

■三つの「アナベル・リー」――川村二郎氏をしのんで/飯吉光夫

■【連載完結】わが戦前―平成年間の感情、思想、文芸― 第二十三回/福田和也

■この土地の時間と空間、さらには因果関係――カフカ『城』ノート(五)/保坂和志

■生き延びるためのアメリカ文学(十三)/都甲幸治
 これは小説ではない――リディア・デイヴィス『嫌なこといろいろ』

■四方田犬彦の月に吠える(十五)[文化月評]/四方田犬彦

■見えない音、聴こえない絵(61)/大竹伸朗

■本
・津島佑子『あまりに野蛮な(上・下)』/稲葉真弓
・安藤礼二『光の曼陀羅 日本文学論』/丹生谷貴志
・三田村雅子『記憶の中の源氏物語』/野口武彦
・中沢新一『鳥の仏教』/日和聡子
・大竹伸朗『見えない音、聴こえない絵』/宮内勝典

■連載
・幸福の森(十五)/加賀乙彦
・随想(三)/蓮實重彦
・残夢整理(三)/多田富雄
・母性のディストピア――ポスト戦後の想像力(五)/宇野常寛
・高畠素之の亡霊(十四)/佐藤 優
・明治の表象空間(三十二)/松浦寿輝

編集長から

ホーム・スウィート・ホーム
 今号では、〈家〉をめぐる魅力的な中篇三作をお届けする。
 絲山秋子氏「妻の超然」(100枚)は倦怠期を迎えた夫婦を妻の視線で描く。「ああ、人間とはこのようなものだ」と感じさせるリアルさ。安定した日常に出現する世界の亀裂。前作『ばかもの』以上に、このふたつを作品に濃密に封じ込めた絲山氏の筆は充実している。
 新芥川賞作家、津村記久子氏の受賞第一作となる「とにかくうちに帰ります」(130枚)は、暴風雨で埋立洲に閉じ込められた人たちの物語。交通手段を絶たれた四人が各々の事情を抱え、我が家を目指して長い長い橋を歩く。そのある意味では単純な状況が、やがて〈世界が/に在ること〉の隠喩となってゆく。
 劇作家でもある戌井昭人氏の「まずいスープ」(150枚)は、大麻を育て密輸にかかわっては不意に失踪するという、超ダメ父とその一家の切実ながら微笑ましくもある連帯を描く。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞