絲山秋子「妻の超然」(100枚)
新潮 2009年3月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2009/02/07 |
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JANコード | 4910049010396 |
定価 | 943円(税込) |
・文化と文明はどう違うか/松本仁一
・源氏物語と整形/大塚ひかり
・バブルで名建築は生まれるか?/平松 剛
これは小説ではない――リディア・デイヴィス『嫌なこといろいろ』
・津島佑子『あまりに野蛮な(上・下)』/稲葉真弓
・安藤礼二『光の曼陀羅 日本文学論』/丹生谷貴志
・三田村雅子『記憶の中の源氏物語』/野口武彦
・中沢新一『鳥の仏教』/日和聡子
・大竹伸朗『見えない音、聴こえない絵』/宮内勝典
・幸福の森(十五)/加賀乙彦
・随想(三)/蓮實重彦
・残夢整理(三)/多田富雄
・母性のディストピア――ポスト戦後の想像力(五)/宇野常寛
・高畠素之の亡霊(十四)/佐藤 優
・明治の表象空間(三十二)/松浦寿輝
編集長から
絲山秋子氏「妻の超然」(100枚)は倦怠期を迎えた夫婦を妻の視線で描く。「ああ、人間とはこのようなものだ」と感じさせるリアルさ。安定した日常に出現する世界の亀裂。前作『ばかもの』以上に、このふたつを作品に濃密に封じ込めた絲山氏の筆は充実している。
新芥川賞作家、津村記久子氏の受賞第一作となる「とにかくうちに帰ります」(130枚)は、暴風雨で埋立洲に閉じ込められた人たちの物語。交通手段を絶たれた四人が各々の事情を抱え、我が家を目指して長い長い橋を歩く。そのある意味では単純な状況が、やがて〈世界が/に在ること〉の隠喩となってゆく。
劇作家でもある戌井昭人氏の「まずいスープ」(150枚)は、大麻を育て密輸にかかわっては不意に失踪するという、超ダメ父とその一家の切実ながら微笑ましくもある連帯を描く。
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。