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藤沢 周「キルリアン」(200枚)

新潮 2009年5月号

(毎月7日発行)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2009/04/07

発売日 2009/04/07
JANコード 4910049010594
定価 943円(税込)

◆キルリアン(200枚)/藤沢 周
無意識の底に糸を垂らす。深く、もっと深く。そのとき、鎌倉の谷戸の闇に、新潟の鉛色の雪景色に、情事の記憶が澱むホテル街に、小説家の生が幻影のように浮かび上がる。

◆霊獣 『死者の書』完結編(240枚)/安藤礼二
日本近代文学に屹立する折口信夫の小説『死者の書』。その未完の構想が70年の時を超え、今、再生する。大江健三郎賞に輝く気鋭批評家が挑戦する、小説と批評の融合。

◆妖談/車谷長吉

◆日本私昔話より じいさんと神託/藤谷 治

◆鏡の家の針/谷崎由依

◆信号/間宮 緑

■新潮
・日本の異族/前田速夫
・講演の名人になるには/黒岩比佐子
・マウンテン・ダイバー/服部文祥

◆第42回《新潮新人賞》応募規定

□カンバスと靴下――『灯台へ』翻訳雑記/鴻巣友季子

□中学生以上と小学生以下、現世と冥界――福永信論/古谷利裕

■世の見方の始まり(六)――三好達治・軍人精神/池内 紀

■生き延びるためのアメリカ文学(十五)/都甲幸治
 動物としての人間――J・M・クッツェー『悪い年の日記』

■四方田犬彦の月に吠える(十七)[文化月評]/四方田犬彦

■見えない音、聴こえない絵(63)/大竹伸朗

■本
・菅野昭正『憂鬱の文学史』/池内 紀
・ドン・デリーロ『墜ちてゆく男』/円城 塔
・長嶋 有『ねたあとに』/大和田俊之
・宮崎誉子『派遣ちゃん』/佐々木 敦
・白岩 玄『空に唄う』/柴崎友香
・天埜裕文『灰色猫のフィルム』/福嶋亮大

■連載
・還れぬ家(二)/佐伯一麦
・幸福の森(十七)/加賀乙彦
・随想(五)/蓮實重彦
・残夢整理(五)/多田富雄
・母性のディストピア――ポスト戦後の想像力(七)/宇野常寛
・高畠素之の亡霊(十六)/佐藤 優
・明治の表象空間(三十四)/松浦寿輝

編集長から

〈賭け〉としての小説
◎藤沢周氏の「キルレアン」(200枚)は、五〇歳を目前にした男性作家の内面の肖像を「自らの無意識の底にひっそりと糸を垂らして」(本文より)描き尽くす。その肖像画の背景は、作家が暮らす鎌倉の谷戸の闇であり、故郷新潟の鉛色の雪景色であり、情事の記憶が淀む渋谷のホテル街でもあるだろう。藤沢氏自身が自らの生との対話を極限まで深めたとき、ついに誕生した物語だ◎もし、折口信夫の「無意識の底にひっそりと糸を垂らして」みたら、いったい何が浮上するのか……そう記したくなるのが、『神々の闘争 折口信夫論』で折口研究に新地平を拓いた安藤礼二氏の「霊獣 『死者の書』完結編」(200枚)。そう、日本近代文学に屹立する折口の小説『死者の書』の未完の続編を、文芸評論家を語り手にした虚構という形で完結させる驚くべき試みだ◎その者にしか書けない、今書くしかない、〈賭け〉としての小説二篇である。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞