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本谷有希子「ぬるい毒」(200枚)

新潮 2011年3月号

(毎月7日発行)

特別定価996円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2011/02/07

発売日 2011/02/07
JANコード 4910049010310
定価 特別定価996円(税込)

ぬるい毒(200枚)/本谷有希子
私のすべては二十三歳で決まる――。奈落の底から浮かび上がった地上で彼女が見た世界。人間の嘘と真実に迫る飛躍作!

南へ(長篇戯曲)/野田秀樹
信じられないのは虚言癖の女か、大噴火の噂か。生き残るのは誰なのか。火山観測所を舞台に現代日本の「信」を問う三部作最終章!

キャンピングカー(後篇)/村上 龍

力と気持ち/舞城王太郎

マザーズ(連載完結篇一挙100枚)/金原ひとみ

■連載小説
・空に梯子(十四)/角田光代
・慈雨の音(十六)/宮本 輝
・還れぬ家(二十三)/佐伯一麦
・幸福の森(三十九)/加賀乙彦

◆第43回《新潮新人賞》応募規定

【特別対談】
動物になること、語りの冒険/多和田葉子+松浦理英子
 ◎〈わたし〉性の不思議◎擬人法でなく擬犬法
 ◎言葉を捨てられるか?◎皮膚感覚は手放せない
 ◎「すべての生命は同性愛でもある」
 ◎冷戦はまだ終わっていない◎多様化する価値観のなかで

シェイクスピアの大衆文学時評 吉田健一論/角地幸男

往復書簡 再会と別離(第二回)/四方田犬彦+石井睦美

批評時空間/佐々木 敦
第三回・見事なまでに成立しないタイム・パラドックスについて――瀬田なつき論

正岡子規(三)/ドナルド・キーン  角地幸男/訳

アメリカスケッチ2.0 ウェブと文化の未来を考える/池田純一
第十回 ファンダムとファンドレイジング

屋根裏プラハ(十七)――スデクの庭/田中長徳

生き延びるためのアメリカ文学(三十六)/都甲幸治
南米文学を捏造する――ダニエル・アラルコン『蝋燭に照らされた戦争』

見えない音、聴こえない絵(八十四)/大竹伸朗

■新潮
・中国における村上春樹受容の第二の転換期/藤井省三
・革命のリテラシーのために/イナン・オネル
・個に寄り添う演劇的想像力/相馬千秋

■本
・山城むつみ『ドストエフスキー』/亀山郁夫
・旦 敬介『ライティング・マシーン―――ウィリアム・S・バロウズ』/今福龍太
・多和田葉子『雪の練習生』/沼野充義
・高樹のぶ子『トモスイ』/池内 紀
・島本理生『アンダスタンド・メイビー(上・下)』/岩宮恵子
・津島佑子『黄金の夢の歌』/小池昌代


編集長から

虚数と虚構
◎二乗するとマイナスになるという奇妙な数字〈虚数〉を知ったとき、具体像を想像できないにもかかわらず、確かに計算することはできるという不思議さに魅了された。文学のみならず、あらゆる表象文化の本質である〈虚構〉とは、どこか虚数のようではないか? 嘘の登場人物達の蠢きが乗算され、嘘の世界がリアルに立ち上がる。それを可能にするのは無論〈想像力〉だ。ちなみに虚数とは英語で「イマジナリー・ナンバー(想像上の数字)」である◎優れた劇作家でもある本谷有希子氏の巻頭小説「ぬるい毒」(200枚)は、嘘が人間の精神や関係をいかに突き動かすか、そのダイナミズムを猛速度で疾走する物語で捉えてみせた。そして、火山観測所を舞台にした野田秀樹氏の最新長篇戯曲「南へ」(200枚)は、大噴火をめぐる嘘や噂に振り回される人間の姿を描く。それは息もつかせぬ圧倒的ドラマであり、鋭利な現代日本批判でもある。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞