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松浦理英子「奇貨」(150枚)

新潮 2012年6月号

(毎月7日発行)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2012/05/07

発売日 2012/05/07
JANコード 4910049010624
定価 943円(税込)

奇貨/松浦理英子
小説家のおれがレズビアンの女友達に抱いた複雑な「好意」。性愛も友情も超えた奇妙な同居生活を描く、『犬身』より5年振りの新作!
[中篇小説150枚]

いつも彼らはどこかに/小川洋子
第一回・帯同馬
ただ一頭の馬を慰めるためだけに暗闇に閉じ込められた彼――。物言わぬ動物たちの存在を光源に、人生の深奥がふと浮き上がる。
[新連作短篇]

十三月怪談/川上未映子
死んでしまったら会えなくなる。もう二度と。分ちがたき思いを抱く夫婦に訪れるある奇跡。

メタノワール/筒井康隆

デッキブラシを持つ人/堀江敏幸

双頭の船(3)/池澤夏樹

死小説[第三章]/荒木経惟

ひっ/戌井昭人
テキトーに生きたい。脳味噌が邪魔だ。半島の先で人生ドン詰まりのおれは深い穴を掘る。
[中篇小説160枚]

■第38回〈第二期第十三回〉川端康成文学賞発表
・犬とハモニカ/江國香織
【選評】秋山 駿/辻原 登/津島佑子/堀江敏幸/村田喜代子

数学と農業 「自然史過程」について・2/中沢新一

曼荼羅を喰らう 古川日出男『ドッグマザー』論/安藤礼二

夜露死苦現代詩2.0 ヒップホップの詩人たち/都築響一
 第十二回・生かされるなら生きてやる――志人

地上に星座をつくる
 第二回・恋をした/石川直樹

アメリカスケッチ2.0 ウェブと文化の未来を考える/池田純一
 第二十四回・ギークはロックスター

世界同時文学を読む(十一)/都甲幸治
 消えてゆく愛――ジェームズ・ソルター『最後の夜』

見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
 第九十七回・小屋と自画像1

■新潮
・ジョセフ・ナジ――カラスの痕跡/小野正嗣
・ワタミとカフカ/木下古栗
・ひそやかな約束/淺野卓夫

■本
・都築響一『東京右半分』/青木淳悟
・村田沙耶香『タダイマトビラ』/陣野俊史
・高樹のぶ子『マルセル』/田中和生
・池澤夏樹『氷山の南』/沼野充義
・西村賢太・編『藤澤清造短篇集』/藤沢 周

■連載小説
・満月の道(六)/宮本 輝
・あたいは 太刀魚(たちうお)に なりも(申)した[遊女考(八)]/村田喜代子

第45回《新潮新人賞》応募規定

第25回《三島由紀夫賞》候補作品発表

編集長から

感情の虹、関係のモザイク
◎今月の巻頭作品は松浦理英子氏の「奇貨」(150枚)。私小説作家の「おれ」とレズビアンの女友達の奇妙な同居生活を描く本作を読みながら、性格的にも性的にも微妙な相性の二人が交換し合う情動の細やかさに驚嘆した。不満、寂しさ、僻み、嫉妬、おののき、不安、羨望……複雑に分光された感情の虹が誌面を横断する。その虹をくぐり抜けた物語の展開は実にスリリング! 松浦氏にとって(短篇一作を除けば)『犬身』以来五年ぶりの創作となる本作は新作を待望してきた私たちへの、まさに《奇貨》だ◎小川洋子氏の新連作短篇「いつも彼らはどこかに」の、一分の隙間もない精妙なモザイクのようでありながら、そのモザイクをなす人間たちの関係性が刻一刻と変化していく様。戌井昭人氏「ひっ」の倫理的なまでの無-意味。川上未映子氏「十三月怪談」の瑞々しく、パワフルな奇譚。他の掲載作も含め、いずれにも魅了された。本号は創作が充実した。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞