佐藤友哉「ベッドタウン・マーダーケース」(270枚)
新潮 2013年8月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2013/07/05 |
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JANコード | 4910049010839 |
定価 | 943円(税込) |
柴田元幸/訳・解説
岸本佐知子/訳
・私小説と文学市場/山本芳明
・家が怖い/中納直子
・肉と肉のコミュニケーション/大橋 仁
――自己探求の彼方へ
――社会学的「反物語」論
消された過去――J・M・クッツェー『イエスの子供時代』
第一一〇回・ヴェネチアの愛
・大澤信亮『新世紀神曲』/安藤礼二
・池田純一『ウェブ文明論』/大澤真幸
・津島佑子『ヤマネコ・ドーム』/木村友祐
・筒井康隆『聖痕』/巽 孝之
・小川洋子『いつも彼らはどこかに』/谷崎由依
・黒川 創『暗殺者たち』/橋爪大三郎
・磯﨑憲一郎『往古来今』/古谷利裕
編集長から
マーダーケース」
放射能は恐ろしい、被曝によってDNA鎖が破壊され、致命的な病いに到るかもしれないから恐ろしい、万年億年単位で放射能という穢れを放ち続けるから恐ろしい……。私たちが素朴に抱いている感情を、小説家は自身の中で育み、ときにはグロテスクなまでに拡大・変形させ、虚構の構造体を建築する。佐藤友哉「ベッドタウン・マーダーケース」(270枚)はまさにそのようにして生まれた長篇小説だと思う。
主人公は、わが妻とその胎内の子を殺害した犯人を追う復讐者にして逃亡者。舞台は、地球全土の放射能汚染を契機に、原子力技術を筆頭にしたテクノロジーの多くが封印され、人為的に「文明更新(アップデート)」されるようになった超管理社会。この作品は悲劇であり、ディストピアを舞台にしたスラップスティックでもあり、小説家のパーソナルな告白でもあり、一見途方もない虚構を通じた文明批評でもあり、それらすべてのハイブリッドだ。
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。