多和田葉子「カール・マルクス通り」
新潮 2014年9月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2014/08/07 |
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JANコード | 4910049010945 |
定価 | 特別定価998円(税込) |
原発事故のあと、哲学は可能か/中沢新一×東 浩紀
猫が死んだ/横尾忠則×保坂和志
――平野啓一郎新作をめぐって
――加藤典洋『人類が永遠に続くのではないとしたら』を読む
――蓮實重彦『「ボヴァリー夫人」論』をめぐって
――松浦寿輝『明治の表象空間』について
第二十四回・斜里の子どもたち
第一二一回・電気絵具
・野良や/円城 塔
・妄想する力、人造の神、一義性/西川アサキ
・西村賢太『やまいだれの歌』/小島慶子
・坂口恭平『徘徊タクシー』斎藤 環
・岸 政彦『街の人生』星野智幸
・尾崎真理子『ひみつの王国―評伝 石井桃子―』湯川 豊
編集長から
◎本号掲載の中沢新一と東浩紀の初対談「原発事故のあと、哲学は可能か」は、哲学と原子力の関係に始まり、日本の哲学の過去と未来、そして、有限の脳に規定された人間が無限の世界を思考することの限界と可能性までを討議する。その多様な論点を小欄で紹介することはできないが、たとえば「言葉とモノというのはまったく違うシステムでつくられている。だからこそ言葉とモノが接するときにおもしろいものが生まれるはず」(東氏)という視点ひとつでも、私たちの眼前にある文学作品に新鮮な補助線を与えてくれるだろう◎多和田葉子「カール・マルクス通り」の主人公はベルリンの街を遊歩しながら、世界に満ち溢れたモノに感覚を開き続ける。多種多様なモノが主人公の精神に飛来するたび、言葉が弾ける。弾けた言葉がさらに日本語とドイツ語の間で複雑に運動する。この希有な作家の独自性は、多言語性以上に、「言葉とモノが接するとき」への獰猛な欲望にあるのではないか。
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。