高尾長良「影媛」(新潮新人賞受賞第一作)
新潮 2014年12月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2014/11/07 |
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JANコード | 4910049011249 |
定価 | 947円(税込) |
影媛[150枚]/高尾長良
・まだ相変わらず編集者をやっている/黒川 創
――シリーズ《いま、どうやって生きていますか?》のこと
・遺されたもの達/石内 都
第二十七回・闘牛ならぬ闘山羊
第一二四回・ロンドン色の雲、リバプール色の月
・金井美恵子『お勝手太平記』/大谷能生
・角田光代『笹の舟で海をわたる』/尾崎真理子
・絲山秋子『離陸』/丹生谷貴志
編集長から
新しい想像力へ
一昨年、「肉骨茶」で新潮新人賞を史上最年少受賞(19歳)した高尾長良の受賞第一作「影媛」を発表する。長大な「日本書紀」の中では(印象的ではあるものの)短い一逸話にすぎない「影媛」の悲恋伝説を150枚の中編小説にしたものだ。デビュー作とは大きく異なる〈擬古的〉な文章に驚く読者もいるだろう。「日本書紀」の援用といい、ただマニアックな古典趣味だろうか? いや、若き作家は日本語の古層に潜り、飛び切り新鮮な言葉をつかみ出したのだ。新鮮な古い言葉で神話的メロドラマを描くことを欲望したのだ。だから、この小説は速く、熱い。巫女である影媛が肉体を捨て鳥と化し、大空を駆け巡る時の、風切り音が聞こえそうなほどの疾走感。平群志毘(へぐりのしび)への思いが憎しみから愛に変容する時の、影媛の皮膚と精神に充ちる熱量。先月号で〈戦争小説〉による新潮新人賞デビューを果たした高橋弘希といい、いま新しい想像力が芽生えつつあるのかもしれない。
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。