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高尾長良「影媛」(新潮新人賞受賞第一作)

新潮 2014年12月号

(毎月7日発行)

947円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2014/11/07

発売日 2014/11/07
JANコード 4910049011249
定価 947円(税込)

【新潮新人賞受賞第一作】
影媛[150枚]/高尾長良
日本書紀に描かれた伝説の悲恋が、一三〇〇年の時を経て、再生する。日本語の古層から立ち上がる想像力。精神と皮膚を焦がす憎愛の熱量。新潮新人賞最年少受賞者の飛翔作!

マルティン・ルター通り/多和田葉子
都会の喧騒とは無縁の通りも一つの小宇宙。ベルリンが五感を揺さぶり、歴史を囁く。

海と山のピアノ/いしいしんじ
山で人が溺れた日から半年――忽然と現れた一人の少女が港町に起こした波と歌の奇跡。

蜥蜴/谷崎由依
あなた今晩、妊娠するわ――生の実感を失い、熱帯の夜を彷徨う女の、世界の果てへの旅。

笑う門には老い来たる/宮崎誉子
認知症の父・寄り添う母・戸惑う私・思春期全開の娘。介護の現実を笑い飛ばす一族騒動記。

■新潮
・まだ相変わらず編集者をやっている/黒川 創
 ――シリーズ《いま、どうやって生きていますか?》のこと
・遺されたもの達/石内 都


石川啄木[第七回]/ドナルド・キーン  角地幸男・訳

小林秀雄[第十七回]/大澤信亮

島尾ミホ伝 『死の棘』の謎[第二十一回]/梯 久美子

地上に星座をつくる/石川直樹
 第二十七回・闘牛ならぬ闘山羊

見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
 第一二四回・ロンドン色の雲、リバプール色の月

■■ 連載小説 ■■

ペインレス(五)/天童荒太

長流の畔(六)/宮本 輝

薄情(六)/絲山秋子

土の記(七)/高村 薫

名誉と恍惚(七)/松浦寿輝

女たち三百人の裏切りの書(八)/古川日出男

繭(九)/青山七恵

電車道(十一)/磯崎憲一郎

■本
・金井美恵子『お勝手太平記』/大谷能生
・角田光代『笹の舟で海をわたる』/尾崎真理子
・絲山秋子『離陸』/丹生谷貴志

編集長から

日本語の古層から
新しい想像力へ

 一昨年、「肉骨茶」で新潮新人賞を史上最年少受賞(19歳)した高尾長良の受賞第一作「影媛」を発表する。長大な「日本書紀」の中では(印象的ではあるものの)短い一逸話にすぎない「影媛」の悲恋伝説を150枚の中編小説にしたものだ。デビュー作とは大きく異なる〈擬古的〉な文章に驚く読者もいるだろう。「日本書紀」の援用といい、ただマニアックな古典趣味だろうか? いや、若き作家は日本語の古層に潜り、飛び切り新鮮な言葉をつかみ出したのだ。新鮮な古い言葉で神話的メロドラマを描くことを欲望したのだ。だから、この小説は速く、熱い。巫女である影媛が肉体を捨て鳥と化し、大空を駆け巡る時の、風切り音が聞こえそうなほどの疾走感。平群志毘(へぐりのしび)への思いが憎しみから愛に変容する時の、影媛の皮膚と精神に充ちる熱量。先月号で〈戦争小説〉による新潮新人賞デビューを果たした高橋弘希といい、いま新しい想像力が芽生えつつあるのかもしれない。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞