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滝口悠生「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」(140枚)

新潮 2015年5月号

(毎月7日発行)

947円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2015/04/07

発売日 2015/04/07
JANコード 4910049010556
定価 947円(税込)

ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス(一四〇枚)/滝口悠生
ジミヘンのギターのように幾重にもフィードバックされる、苦い恋と東北バイク一人旅の時間。記憶の不可思議さに迫る飛翔作!

ウルチロイックのプーシキン(一〇〇枚)/藤谷 治
夜の韓国、疲弊の果て。悩める小説家が出会ったのは、日本語を話す一人の清掃夫だった。

呼び声、もしくはサンザシ/金井美恵子

ふるさと/いしいしんじ

友達のルート/青木淳悟

ジェットコースター/大竹昭子

■■ 連載小説 ■■

荒れ野にて(五)/重松 清

ペインレス(九)/天童荒太

土の記(九)/高村 薫

薄情(十)/絲山秋子

長流の畔(十)/宮本 輝

名誉と恍惚(十一)/松浦寿輝


■ 対談 ■
AとXの対話/中村文則×田中慎弥
歴史、国家、個人――「大前提」が崩れゆく時代に、小説による現実への抵抗は可能か?

■□ 発見と検証 □■
幻の占領期雑誌「国際女性」と谷崎潤一郎/石川 巧
創刊号発掘が文豪の謎を解き明かし始めた。京都発の婦人誌と谷崎、その知られざる関係。

ジャン=リュック・ゴダール、3、2、1、 [第二回]/佐々木敦

ゴア・ヴィダル――三年越しの追悼/川本 直

石川啄木[第十一回]/ドナルド・キーン  角地幸男・訳

小林秀雄[第二十一回]/大澤信亮

島尾ミホ伝 『死の棘』の謎[第二十五回]/梯 久美子

地上に星座をつくる/石川直樹
 第三十一回・アルバータ縦断の旅

見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
 第一二八回・縁形の家

■新潮
・奈良、早春/前田英樹
・死蔵――『批評メディア論』余滴/大澤 聡
・世界の革命家よ! 孤立せよ!/岡和田 晃
・パリの窓/石川竜一

■本
・桐野夏生『奴隷小説』/江南亜美子
・柴崎友香『パノララ』/倉本さおり
・九龍ジョー『メモリースティック』/杉田俊介
・高尾長良『影媛』/日和聡子
・野田秀樹『エッグ/MIWA―21世紀から20世紀を覗く戯曲集―』/山城むつみ

編集長から

滝口悠生「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」

 吉田健一は枯れ葉が冬の朝の光に洗われる様子に「時間」の本質を見出した。ジミ・ヘンドリクスはステージ上でギターを燃やすことさえ「音楽」たりえることを示してみせた。ならば……水田が夏の陽光に輝く場面から始まる滝口悠生の「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」(一四〇枚)は、この二人の偉大な芸術家へのささやかなオマージュなのかもしれない。
 それにしても、本作の魅力をどう伝えればいいだろうか? 「記憶」が過去と現在をつなぐ小さなタイムマシンだとすれば、三十代の男性が青春時代の東北バイク旅行を回想する本作は、手持ちの簡素な材料だけで作られた、なのに未知の時間旅行を体験させてくれるタイムマシンだ。旅と恋と音楽の記憶が、九・一一と三・一一の記憶が、そして一瞬一瞬ごとに過去を生成する「現在」が、ギターの弦のように共鳴し、フィードバックする。「楽器」という題の作品で新潮新人賞よりデビューした作家の、これは飛躍作だ。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

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