古井由吉「後の花」(新連作)
新潮 2015年8月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2015/07/07 |
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JANコード | 4910049010853 |
定価 | 947円(税込) |
・パンテオンの式典に参列して/小野正嗣
・霧の晴れ間に/谷崎由依
・詩を漫画にする 中也と秀雄を描く/月子
水木しげる出征前手記/解説・中条省平
古典=現代を揺らす/町田 康×古川日出男
第三十三回・未知の山、K2へ
第一三一回・濡れる絵の匂い
・赤城修司『Fukushima Traces, 2011-2013』/太田靖久
・カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』/小山田浩子
・中村文則『あなたが消えた夜に』/倉本さおり
・荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の漫画術』/高橋弘希
・舞城王太郎『淵の王』/三輪健太朗
編集長から
◎古井由吉氏は大江健三郎氏との最近の対話で「随想のように書いたものが小説になることはありえないか」「随想のほうがスケールが大きい小説に読める」と予感した。古井氏の新連作小説(第一話「後の花」)において、予感は実現したのではないか。執筆中に感じる天候の不穏な乱れは、自身の末期を老作家に意識させ、同時に敗戦の年の春の寒さを、大空襲の記憶を呼び寄せる。随想的な言葉が心身の内外を、現在と過去を往還する。いま、生と創作の狭間に未知の領域が立ち上がる◎生と創作の狭間から生起した稀有な作品をさらに二作掲載する。原田宗典「メメント・モリ」は長らく沈黙を余儀なくされた作家の十年ぶりの長篇。自殺未遂、家庭破綻、麻薬逮捕などの過酷な私体験が絶望の果てのヒューモアにより直視された。新発見「水木しげる出征前手記」は93歳の国民的漫画家が、20歳で戦死を予感しつつ、芸術、宗教、哲学と格闘し、生の意義を模索した壮絶な精神の記録だ。
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。