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古井由吉「後の花」(新連作)

新潮 2015年8月号

(毎月7日発行)

947円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2015/07/07

発売日 2015/07/07
JANコード 4910049010853
定価 947円(税込)

後の花[新連作]/古井由吉
春の寒気に、特攻機と少女を思う。季節の移ろいが「永遠の今」を現前させる小説の豊饒。

メメント・モリ[250枚]/原田宗典
精神の失調、自殺未遂、麻薬逮捕、家庭崩壊、大震災……死を想いながら、それでも小説家は生きて書いてゆく。十年ぶりの復活長篇。

■ 川端康成文学賞受賞第一作 ■
病棟の窓/大城立裕
妻の脳梗塞に続き、老作家は骨折で入院することに。それでも繊細に、豊かに、生は続く。

赤い風船/森内俊雄

禊/藤沢 周

■■ 連載小説 ■■

荒れ野にて(八)/重松 清

薄情(十二)/絲山秋子

長流の畔(十三)/宮本 輝

■新潮
・パンテオンの式典に参列して/小野正嗣
・霧の晴れ間に/谷崎由依
・詩を漫画にする 中也と秀雄を描く/月子

◆第48回《新潮新人賞》応募規定

■■ 新発見 ■■
水木しげる出征前手記/解説・中条省平
召集直前、二十歳の青年は死の予感に打たれながら、生への、芸術への想いを書き綴った。国民的漫画家が戦中に刻んだ精神の記録。

■ 対談 ■
古典=現代を揺らす/町田 康×古川日出男
漂白された「物語」を豊かにするために。古典と対峙する同時代作家の刺激的な初対話。

『風と共に去りぬ』の謎を解く/鴻巣友季子
第一回・パンジー・ハミルトンの奇妙な消失

僕達の勝敗 戦後七十年に寄せて/ミハイル・シーシキン  奈倉有里・訳

温室を襲う雨と雪と風 ――追悼・杉本秀太郎/片山杜秀

ジャン=リュック・ゴダール、3、2、1、 [第五回]/佐々木敦

石川啄木[第十四回]/ドナルド・キーン  角地幸男・訳

島尾ミホ伝 『死の棘』の謎[第二十七回]/梯 久美子

小林秀雄[第二十四回]/大澤信亮

地上に星座をつくる/石川直樹
 第三十三回・未知の山、K2へ

見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
 第一三一回・濡れる絵の匂い

■本
・赤城修司『Fukushima Traces, 2011-2013』/太田靖久
・カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』/小山田浩子
・中村文則『あなたが消えた夜に』/倉本さおり
・荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の漫画術』/高橋弘希
・舞城王太郎『淵の王』/三輪健太朗
 

編集長から

生と死と創作の狭間から

古井由吉氏は大江健三郎氏との最近の対話で「随想のように書いたものが小説になることはありえないか」「随想のほうがスケールが大きい小説に読める」と予感した。古井氏の新連作小説(第一話「後の花」)において、予感は実現したのではないか。執筆中に感じる天候の不穏な乱れは、自身の末期を老作家に意識させ、同時に敗戦の年の春の寒さを、大空襲の記憶を呼び寄せる。随想的な言葉が心身の内外を、現在と過去を往還する。いま、生と創作の狭間に未知の領域が立ち上がる◎生と創作の狭間から生起した稀有な作品をさらに二作掲載する。原田宗典「メメント・モリ」は長らく沈黙を余儀なくされた作家の十年ぶりの長篇。自殺未遂、家庭破綻、麻薬逮捕などの過酷な私体験が絶望の果てのヒューモアにより直視された。新発見「水木しげる出征前手記」は93歳の国民的漫画家が、20歳で戦死を予感しつつ、芸術、宗教、哲学と格闘し、生の意義を模索した壮絶な精神の記録だ。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞