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2010年3月号


【100年保存大特集】小説家52人の2009年日記リレー
島田雅彦


 一月十五日(木)
『徒然王子』を書き終え、気が抜け、風邪をひき、復活し、またPC画面に釘付けだが、見ているのはテレビドラマだ。連日寒い。窓から路面を見下ろして、だいたい何度くらいかわかるようになった。白くささくれていると、約マイナス五度。
 サーキット・シティでは倒産セール中だが、買いたい物がない。円高を生かして、何を買いたたくか毎日考えているが、思いつかない。世界の工場中国からただ買うばかりで、アメリカが売る物は国債しかないというのは悲しい。人民元が切り上げられたら、きっと中国はメード・イン・ジャパンをこぞって買うことになるかな? その時に備えて、チャーミングな商品を開発しておかないと。
 一月十六日(金)
 午前11時、エブリー・フィッシャー・ホールでグスターボ・ドゥダメル指揮ニューヨーク・フィルの演奏で、マーラーの第五交響曲を聞く。弱冠二七歳のベネズエラ人は若かりし頃のカラヤンを思わせるメリハリの利いた棒を振る。あざといくらいにテンポを変え、客を飽きさせまいとサービスに努める。すでに押しも押されぬ人気者だ。彼が指揮をするシモン・ボリバル・ユース・オーケストラのCDも聞いたが、南米に若い名手が続々現れると、音楽マーケットが大いに賑わう。ベネズエラはかつてのキューバのようにアートとスポーツで世界に影響力を与え得る潜在力がある。ふとチャベス大統領の未来のことを考えた。潤沢な石油収入をばらまき、国連を舞台に反米勢力の結集を図るマッチョの株は実質原油価格に左右される。移ろいやすい政治よりもアートの方が確実な投資になることは多くの投資家がすでに気づいている。
 午後、USエアウエイの飛行機がハドソン川に着水した。歩いていけるところだったので見に行きたかったが、寒いので諦めた。フェリーが頻繁に通る絶好の場所を選んで、着水したパイロットは早速ヒーローになっていた。水温は2度。肉のつき方にもよるが、水中に投げ出されたら、2分から5分で死んでしまう。実に腕のいいパイロットだ。オバマはエア・フォース1のパイロットにスカウトしたらいい。墜落の原因はエンジンが鳥を吸い込んだせいだ。鳥を調教すれば、テロも可能ということか。オーストラリアのカンガルー・バンパーみたいに、鳥を吸い込まないようにするネットとかつけられないのかな。

 
続きは本誌にてお楽しみ下さい。

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