実はアメリカ合衆国カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogle本社を、筆者は一度訪れたことがある。創業者であるラリー・ページと、サーゲイ・ブリンが共に理事を務めていたX-PRIZE財団の定例会に出席するためだ。私も当時は財団の理事であった。X-PRIZE財団は、宇宙船の開発などの最先端プロジェクトに、プライズ(賞)マーケティングによって賞金を与え、その開発を奨励するために設けられた財団で、実際に宇宙サブオービタル(弾道)飛行を政府の援助なしに成し遂げた民間企業に対して賞金を与えた実績もある。彼らはその財団のスポンサーでもあり、実際に現在もGoogle Lunar X-PRIZEを実施している。これは、民間企業が政府の援助なしに月に無人宇宙船を送り込み月面の画像・映像を地球に伝送した初の会社に贈られることになっている。
このエピソードが、このGoogleという会社のプロフィールを象徴しているように思う。彼らはキーワード検索エンジンを世界で初めてビッグビジネスに仕立て上げた先駆者であり、彼らの野望は全宇宙を検索できるようにすることなのだ。二〇〇四年十月。彼らは人工衛星が撮影した画像などをデータベース化していたKeyholeという会社を買収する。それは、全地球をデータベース化して瞬時に検索できるGoogle Earthの元になったサービスである。そして、この素晴らしい全球画像検索システムには新しいサービスが付け加えられる。Google Moonや、Google Marsといったサービスによって月や火星の詳細な地図データすら手に入れられるようになっている。Google Moonには、日本の探査機かぐやの撮影した画像も入れられている……
実はGoogle以前にも優れた検索システムは存在した。DEC(現ヒューレット・パッカード)の創めた検索エンジンAltavistaはGoogle以前はもっとも優れたキーワード検索エンジンと言われていたし、他にも優れた検索エンジンは多数あった。彼らがうまくいったのは、GoTo.Com(現Overture)のキーワード連動広告システムを真似てAdWordsをはじめたことが大きかった。既にYahoo!の検索エンジンに採用され飛躍的にページビューを伸ばしつつあった彼らのサービスが、マネタイズ(利益化)された瞬間である。
もう一つ、彼らが優れていた点がある。それは検索エンジンのソフトウェア技術だけでなく、そのプログラムを走らせるハードウェアを、出来るだけ安く動かすための技術を磨いたことであろう。いや、もしかするとそれは彼らの一番大きな「発明」だったのかもしれない。当時の検索エンジン技術者はそのソフトウェアの性能向上のことばかり考え、ハードウェアは高価なものを買っておけばいいくらいに思っていた。しかし、Googleの考え方は違っていたのだ。格安の部品調達から考え、できるだけ安く高性能なサーバ機器を準備することに腐心した。また、そのサーバ機器を置くデータセンターも自前で構築し、その電力の供給方法や、冷却の方法に至るまで多数の論文を発表できるほどに、研究を続けたのだった。他社のサービスが、高価なサーバ機器や高額なデータセンター料金で伸び悩んでいたのを尻目に、Googleは格安のサーバやデータセンターをただ増やすことによって、サービスの拡大をできるようになっていった。現在クラウドといわれるサービスの元祖と言えるだろう。
Googleは今やインターネットに関わる技術者の楽園となった。彼らの全宇宙を検索するという野望はまだ一歩を踏み出したばかりだ。映像のYouTubeの買収や、図書館に存在する世界中の全蔵書のデジタル化など彼らの新しい試みは、とどまるところを知らない。最近では、パソコン用OSの巨人マイクロソフトに対抗して、Google独自のOSの発表を行ったところである。携帯電話用OSのAndroidの発表など、彼らの動向からはまだまだ目が離せそうにない。
(ほりえ・たかふみ 株式会社ライブドア元代表取締役社長CEO)