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漫才
ビートたけし

結成三十五年、ツービート復活! 爆笑・元祖毒ガス漫才、超ロング収録!! 超高速漫才につき、必ず一時間以内にお読み下さい。また、健康保険の対象にはなりません……。「今の漫才しか知らない人にとってはまことに過激に思えるかもしれないし、昔のツービートを知っている人なら懐かしく思うかもしれない――たけし」

ISBN:978-4-10-381219-7 発売日:2009/05/25

立ち読み 書評

1,470円(定価) 購入

波 2009年6月号より

日記にして、自伝にして、企画書にして、本音
水道橋博士・玉袋筋太郎


玉袋 楽屋でこの本が出るって話題になったら、殿が「三日で書いた」って豪語したんだ。それを聞いたとき、すごいな、よっぽどたまってたのかなという気がしたよ。しかも二百五十六ページのボリュームだから。
水道橋 いや、「漫才の本書く」って言われて、製作も突貫作業だったら、本人の頭のなかに降りてくるイメージとしては一瞬であり、三日以下なんじゃない(笑)。
玉袋 ほぼ、イタコ状態だった。
水道橋 あの本に出てくる漫才の、断片、断片だけは、楽屋で会うたびに、聞いてたんだけど、どこがどうつながるのか全然わからなくて、で、いざゲラを渡されて全部読んだら、想像してたものよりはるかにすごいというか、部分部分を照射して近くで見てると、それこそ「芸術新潮」で連載してた「便所の落書き」的な、悪趣味な言葉の羅列が、俯瞰で見てみたら、すごい壮大な壁画、ツービート漫才史の体系、になってたという驚き。しかも、ビートたけしマニアにとっては、懐かしいのもあるじゃない。
玉袋 最新のネタもあれば、昔のネタもある。変な絵やアラビア語の推薦文なんかも出てくるな。
水道橋 初期のツービートスタイルを見ていない今の人が読むと、捨てぜりふの口汚いフレーズとか、シモにこだわっていくところとかは、かなり下品に感じる部分もあると思う。でもそこがビートたけしの原点で、三十五年の歳月が過ぎても、全くブレてないところがすごい。で、本の中のネタそのものはいろいろプラスされて、原点的な浅草のドブ板の芸人暮らしに始まり、趣味の数学のフェルマーの定理を語り、カンヌ映画祭の審査員のこきおろし、まで、ビートたけしという人の、歴史人脈の広がりを見せるわけじゃない。
玉袋 そうそう。大河になった今でも、どぶ川の流れみたいなのが上流にある人なんだ。功なり名は一応遂げたわけですからね、今さら別にうんこだのなんだの言わなくてもいいんだけど、まだやる。
水道橋 それをやらざるを得ない、もうやりたくてしようがない殿という、芸人としての性、執着、なるほどなと思っちゃう。あと、固有名詞というか、ヅラとか、ホモへのこだわりも、昔から変わらないね。
玉袋 異様なほどの執着だよね。変わってないと言えば、この本の中でのきよしさんとのやりとり。もちろんきよしさんは、この本に何もタッチしてないんだけど。
水道橋 たぶん、出版することすら知らない。きよしさんは、ビートたけしの喋りの壁打ちっていうかさ、あらゆる、罵詈雑言の球をすべて受けとめる壁みたいだよね。
玉袋 しかも何も考えずにな。きよしさんってほんとに変わらないんだもの。うん、きよしさんの本当の姿が見えてきたな。あの存在感。もしかしたらきよしさんの手のひらに殿がいるのかもしれない。
水道橋 きよしさんとの昔のエピソードが入ってるじゃない。ああいったところもまた、ツービートの歴史を補完してる感じがする。きよしさんの奥さんが、おかまで、自衛隊のレンジャー部隊にいたという設定とかさ、もう三十年前のラジオのリスナー以外……。
玉袋 だれも知らないはずなんですよ。
水道橋 これをなぜそこまで書きたいのか(笑)。
玉袋 一部の人にだけ懐かしいんだけど、それを解説もなしでドンと出してくるところがまたすごい。僕らだと気を遣って、絶対脚注を入れちゃうな。
水道橋 しかし、これ漫才でやるとなると、これだけ、無軌道なネタ、普通なら覚えられないと思うよ。
玉袋 うん、俺たちには無理だな。脈絡がないもの。
水道橋 あと、時間軸もばらばらだし、それを頭の中の連想性だけでやってるっていう感じだね。なのに、わかりにくくならないし、興味深い。殿の映画は、ビートたけしの画像力、右脳を見ているように、この本は、ビートたけしの言語を司る、左脳の中を見ているような気がする。あるネタが殿のニューロンという脳の神経細胞の一つに入ったのが、シナプスという隙間を通って、また次の細胞にビビッと、伝達されて、別のネタに変わる瞬間が見えるよう。
玉袋 やっぱり言葉の引っ張り出し、引き出しはすごいよね。時事ネタから歴史から何から、もうほんとに。
水道橋 ネットでこの「漫才」ウィキペディアをやって、全部に解説を付けて欲しいよね。
玉袋 うん。マニアはやりたくなるな。
水道橋 いや、俺もう自分でやってるもんね(笑)。
玉袋 ビートたけし検定みたいなのも出来たりして。
水道橋 かってツービートがNHKの漫才コンクールで落とされたときのメンバー、審査員は誰? とかさ……。
玉袋 うん、京丸京平さんが取った時ね。
水道橋 ああいう、三十年前の記憶の引っかかり、とげみたいなのを落とさないんだよね。天才の備忘録、漫才師としてのネタ帳、自叙伝、芸人の本音の側面もある。
玉袋 殿が日記を書くかは知らないけどね、でも、これは人生の日記になってる(笑)。ほんとに、フェラーリ買ったんだもんな。自叙伝的な漫才だよ、これは。
水道橋 でもこの話を小説ではなく、「漫才」という形式で語っているから、わかりやすくさせてるんだね。
玉袋 寄席の言葉だから、っていうのはあると思う。本の出だしのあたりなんかは、まさに演芸場でやってたようなネタだからね。きついよ。
水道橋 うん。燃えたビデオボックスの話とか、ああいう時事ネタって、今喋れるわけないからね。
玉袋 とにかく演芸場のにおいがすごいする本だよ。やっぱりそのにおいを忘れたくないっていう部分が、これを出そうと思った根っこにあるのかな。でも殿に、そう振ったら振ったで、「あんなところなんか戻りたくねえよ」って言うんだろうけどな(笑)。
水道橋 うん。テレビの無菌でデオドラントされた世界に、もう数十年、君臨していても、煮込みや、どぶ板のにおいじゃないと居心地の悪さを感じるっていうのがあるんだろうね。
玉袋 やっぱり原点が漫才師だから、この「漫才」を書くっていうか、考えることで、最近いろんなことをやって、ちょっとずれたチューニングを戻してる感じがする。
水道橋 あと、普段、テレビなんかで飲み込んでる言葉の多さが、口に出したい部分もあるだろうね。
玉袋 ま、あるかもしれないな。今のテレビにね。
水道橋 だって、時事ネタでも、本当はこんなこと思ってたのか、ってネタが、たくさん書いてあるだろう。
玉袋 そうだそうだ。頭の中でこーんなたまってるフレーズを、テレビでは選んで話してるんだろうけど、本ではもう全部、わーっと出してる感じがするよ。
水道橋 「TVタックル」でも、頭の上に吹き出しでも付けて、ビートたけしの本音というのを出せばいいよ(笑)。
玉袋 そうそう。内心このやろーって思ってる。何を熱くなってんだ、こいつらはとかね。だから、これを読んで、また番組を見ると、今黙ってるけど、絶対こんなこと考えてるなということがわかる。
水道橋 殿の声が聞こえてくるね。
玉袋 心の叫びだな(笑)。年末の特番で、若いスタッフが、どうやってたけしさんで番組を作っていいか難しいって悩んでた。でも、この本を読めばね、新しいスタッフも、ツービートを知らない人も、あ、たけしさんってこういうふうに持ってけば、こういうふうに広げてくれるんだっていうことがわかるんじゃないかな。ある意味、この本は、企画書だよな。
水道橋 いろいろな読み方ができる。私的な相関図、交友録としても、だれも知らない人がいっぱい出てくるよ。
玉袋 読んで喜ぶ人もいるだろうな、おれの名前が出てきたーっ、てな。悪口なんだけど(笑)。
水道橋 いや、ほんと。これ、「ビートたけし」のエンドクレジットみたいなもんでさ、たけしに携わった人がぶわーっと最後に出てくるみたいな感じがするよね。
玉袋 師匠の歴史というか、生きざまが全部つながる。
水道橋 というか、ビートたけしの恐るべきところって、この本を、舞台の上で、アドリブでやれっていって、できないわけじゃないところだね、やっぱり。
玉袋 猛烈に、おれ、またツービートの漫才見たくなっちゃった。六十歳になったツービートも見たいよね。
水道橋 百万部売れたら、紀伊國屋ホールでやるって書いてあるから、それに期待だな。

(すいどうばし・はかせ/たまぶくろ・すじたろう 漫才師)

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