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6TEEN―シックスティーン―
石田衣良

ダイ、ナオト、ジュン、テツロー――あのベストセラー『4TEEN』(直木賞受賞)の少年たちが帰ってくる! ぎこちない恋、初めての裏切り、仲間の死、少しだけリアルに感じられ始めた未来の自分……。東京・月島を舞台に、16歳にしか訪れない一瞬の輝きを鮮やかに切り取った青春小説。

ISBN:978-4-10-459504-4 発売日:2009/09/30

立ち読み 書評 雑誌から生まれた本

1,470円(定価) 購入

波 2009年10月号より

特集[石田衣良『6TEEN』刊行記念インタビュー]
青年期のトンネルを目の前にして――
石田衣良(聞き手・瀧井朝世)


青年期のトンネルを目の前にして――
東京・月島を颯爽と駆ける少年たちを描いた『4TEEN』に待望の続編誕生です。高校生になっても変わらない絆で結ばれた四人は、悩み多き青年期の入り口に立ち……。石田さんに新作への想いを語っていただきました。


   十六歳になった四人の少年たち

――『4TEEN』の刊行から六年。月島の少年たちにまた会えるとは嬉しい驚きでした。続編は予定していたのですか。
石田 何年か経ったら書くのかな、という軽い気持ちはありました。でも実際に続編を書くのは大変ですね。映画でも、パートIにいいシチュエーションを使いきってしまって、IIが中途半端になることって多いでしょう。ただ、今回は中学生だった四人が高校生になって、ダイ君が働き始めたりしているので、その変化が糸口になりました。
 自分の十代の黄金期はいつかと聞くと、十四歳と答える人が多いんです。あの年齢が持っているポップな感じ、明るい感じが出ていたのが『4TEEN』だったと思う。でも十六歳は暗くなり始める時期。青年期の入り口で、これからトンネルに入っていくところですよね。そこで孤立したり引きこもりの方向に行く子もいる。でもこの四人のように素直に成長すると、難しい方向にはいかない。その意味でいい友達がいるっていいことだなと思いましたね。今思うと、こんな青春が送れたらよかったなという気持ちが入っているのかも。
――四人は進学してバラバラになるのではなく、今もしっかりと絆で結ばれている。彼らが放課後に集まるもんじゃ焼き屋が出てくるなど、月島の町も相変わらず魅力的です。
石田 高校は別々になっても、地元に戻ると一緒に遊んでいるという子も多いですから。月島は、今回執筆する際に何度かまた行きましたけれど、もんじゃ焼きブームと高層化がかなり進んでいて驚きました。マンションが増えたせいか子供も多かった。でも裏通りに行くとああした小さな汚いお店もあるんですよ。月島は明治以降にできた新しい町ではあるけれど、かつてなら銀座の女給さんや町工場の工員さんもいたし、中産階級と金持ちもいて。中産階級ばかりが住んでいるニュータウンとは違っていろんな層が入っているのが月島のいいところ。その勢いのいい感じは小説に出せたと思いますね。
――こんな青春が送れたら……とのことでしたが、ご自身がやってみたかったことなども描かれているのでしょうか。
石田 ああ、僕も友達の恋愛をいじりたかった(笑)。カップルにホテルのチケットをプレゼントしてみたかったなあ。
 今回は異性に対する気持ちだったり、恋愛の要素が強いですね。十六歳って本当にちゃんと恋愛を始める年なのかもしれません。まだ十代なので、恋愛をハードに書けないのは僕としては辛かったところですが(笑)。あと、ジェンダーに関する悩みも書きました。これは実際にテレビで(X染色体が過剰にある)クラインフェルター症候群の人を見たことがあったのがきっかけ。この年頃では特に性の悩みは深くなるので、こうした要素が増えましたね。

   あふれる情報の中でどう生きるか

――新しい登場人物も多いですね。同年代の異性たちはもちろん、もんじゃ焼き屋のおばあとの交流、ホームレスの男性との対話も印象的でした。
石田 この年齢のうちに、どこかで大人の世界の本音だったり醜い部分を見て、自分の考えを研ぎ澄ませていくことができたらいいなと思うんです。親に言われた通りに生きる、というのじゃなくて。今はみんなヘンに情報を多く持っているけれど、話してみると深みがなかったり、本当ならあって当然のはずの裏表が足りないなという子が多いんです。大学を卒業して大企業に入れば生涯賃金はいくら、という数字の情報は持っていても、そうした数字の中に一人の人間の人生が納まってしまうものなのか、ということを考えない。予測できない部分があるか、他の可能性があるのか、もっと考えたほうがいい。ネットの情報ばかりで、何かを考える前に結果が分かったフリをしすぎ。
――そうしたネット社会を象徴するように、携帯小説やネットのブログなどもモチーフとして登場しますね。
石田 携帯小説を書く子、ブログに自分の写真を載せていく子……。新しいメディアと十代の関係はあれこれ書いてみました。今、十代の子が一日で一番見ているメディアが携帯電話の液晶画面だそうですから。それに、情報を受け取るだけでなく、みんなが発信する側にもなっていますよね。みんなが成熟していて、それぞれ好きなことをやっていて、小さな流行やモードが次々と取り替わっていく。その中で新しい世代はどんな風に自分の物語を探していくか。そのケーススタディでもあったと思います、『6TEEN』は。
――そんななか、語り手のテツローは、ホームレスとの対話を通して、人と何気ない会話ができることが大事なんだ、と思う。ささやかな幸せに気づくわけですね。
石田 リーマン・ショックで世界が変わって、欲望を抑える方向へベクトルが向いて以降、人間らしく生きることが大切になってきたんですよね。みんなが文化的な生活ができるようになっている。その時足りないのは、やはり人間同士の触れ合いだったりするんです。今の十代の人たちは、この先に楽しいことがどっかーんとあるなんて思っていない。でも身の回りには小さな楽しいことがたくさんある。人生はその小さなお話の連なりなんですよね。今回そういうことを書いたのは、十四歳、十六歳の違いというより、時代の違いでしょうね。
――テツローは、自分と違うタイプの人々を大らかに受け入れていきますね。ごく普通の男の子のようでいて、怒りや憎悪といった激しい感情が見えてこないところは普通ではない気もします。
石田 できすぎた子だよね(笑)。ただ、僕も、自分とまったく違うタイプの人も面白いと思ってしまうほうだし、怒りや憎悪といった感情はポッと切ってしまうんです。そういうところは、僕自身に似ているかもしれない。
 今って、他人を受け入れる心の広さが足りない気がする。情報を受け入れることは躊躇しないのに、具体的な人間となるとはじいてしまう。僕たち日本人みんなが、情報を少し減らして、実際の人間同士の関係にもうちょっと厚みを持たせるようになるといいかなと思います。
――ただ、テツローたちと親や教師との関係性は希薄です。
石田 高校生にもなると体育会の部活に入っている子は別として、帰宅部の子なんかは教師とはすれ違って三年間を生きていくんじゃないかな。この年齢というのは、親が鬱陶しい年齢でもあるし。ベタベタすることに恥じらいがありますね。それは東京の人だからかな。そういう意味では、そこに東京、月島の人というトーンが出ているのかもしれない。生活は放課後がメインで、親とはベタベタしていなくて。僕の高校生の頃もそうだったし。

   「だらんだらん」している感じがいい

――ちなみに石田さんはどんな放課後を送っていたのですか。
石田 本屋さんか映画館に行くか、帰宅途中に自転車で遠くへ行ってみるか、はやく帰ってラジオをかけながら本を読むか。一人で行動することが多かったし、原理的なことを考えていましたね。人はどこから生まれてどこに行くんだろう、なんてことを。あれは居場所が見つからない不安の裏返しだったと思います。ただ、この時期にそうしたことを考えておかないと、大人になってから自分の世界を作ることができない。思春期に悩むことは決してムダにはならないと思います。自分なりに悩めば大人になった時にそれが役立って、毎日毎日をはぐらかしながら生きていける。この小説で、そういう雰囲気がうまく伝わればいいなと思いますね。青春小説もいろいろあって、熱血スポーツ小説のよさもありますが、僕はだらんだらんしている感じが出ればいいなと思っていたんです。
――でも、最終章ではある人に試練が与えられる。ここでは、『4TEEN』にも登場した、意外な人物が登場します。
石田 そう。誰を出したらいいかなと思って、頭の中にリストアップしていった時に、ああ、コイツがいる! と気づいたわけです。まあ、それが誰なのかは、読んでみてのお楽しみということで。
――厳しい出来事が描かれながらも、四人の素直さ、心根のよさが染みてくる、明るくて温かい連作短編集ですね。
石田 温泉に入っている気分で、ぬくぬくしながら書いていましたから(笑)。例えば『眠れぬ真珠』は硬い筆づかいなので、背筋を伸ばして書いたんですよ。でもこれは本当に自由に、楽に書いている。あえて力を入れなかったのは、僕の中に恥じらいがあったからかもしれません。
――ではもうちょっと力を入れて、いつか『8TEEN』を書いてみるのはどうでしょう。
石田 ええー! それは本当に恐ろしいなあ。十八歳って、かなり重要な年なので。うーん、どうだろう(笑)。

(いしだ・いら 作家)
(たきい・あさよ フリーランスライター)

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