書籍

新潮選書 新潮クレスト・ブックス とんぼの本 全集・著作集 辞典・事典 新潮オンデマンドブックス

「3」の発想―数学教育に欠けているもの―
芳沢光雄

数学の世界では、「3」の発想を会得すれば、それ以上の数の事象についても応用によって解けるケースが多い。ティッシュペーパーやドミノ倒しの原理、オモリを使った計測法、3項計算、作況指数とジニ係数など、分かりやすい例を挙げ、いかに「3」を学ぶことが重要かを説く。「ゆとり教育」で損なわれた「考える数学力」が本書で身につく。

ISBN:978-4-10-603651-4 発売日:2009/10/23

編集者のことば 立ち読み 書評

1,050円(定価) 購入

波 2009年11月号より

数学嫌いの人たちへ

西村和雄


 本書で著者は、「3の発想」を教育に取り入れることによって数学の面白さや深みが教わる者に伝わり、「なぜ」「どうして」「それは面白い」という感覚を呼び起こすという。その感覚は、学ぶ基本精神である。それが起きなければ、学習は単なる記憶労働となり、苦痛になりかねない。
 昨今の教育現場には、この感覚が失われているのであるが、数字の「3」の発想を知れば、この感覚が呼び起こされるという。
 著者によると、「3」には少なくとも4つの特質がある。つながっていく(第1章)、要となる(第2章)、関係を定める(第3章)、そして現象の特徴を表す(第4章)である。それぞれが、ドミノ倒しは2つでは面白くない、三脚の机はなぜ安定するか、三段論法という言葉はあるが二段論法はない、3点をとって分かる変化の割合、などの多くの例をあげながら、説明されてゆく。
 本書には、難しい数学や数式は出てこない。身近な例で数学が説かれる。実際に、幼稚園児に対して行った実験などもあり、この本を読めば、数学という学問の面白さ、そして学び方が目からうろこが落ちるように理解できるのではないだろうか。
 2002年改訂の現行学習指導要領の下では、小学校の算数は、2桁の掛け算にとどめ、3桁の掛け算は扱われていなかった。文部科学省は、精選をした上での結果であり、2桁の計算ができれば、3桁の計算もできると、当時は説明していた。ところが、実は、2桁の計算までできても、3桁の計算はできず、一方、3桁の計算ができれば、あとは4桁、5桁でも同じように計算できるのである。現行指導要領は、必要最小限の内容に精選したのではなく、必要なものすら落として、最小限に削減したものであったのだ。
「3」が分かれ目になる例として、惑星の軌道の決定問題がある。太陽と地球の2つだけが、引力で相互に作用し合う場合は、明示的に計算できる。これを二体問題という。ところが、太陽、地球、月の3つが相互に作用し合う場合は、明示的には、軌道を求めることができないので、数値解析によって、近似的に予測することになる。これを三体問題と呼ぶ。3つ以上の一般の場合は、多体問題と呼ばれている。
 経済学でも、2つの企業や人の戦略的行動までは分析できるが、3つの企業や人の戦略的行動の分析は難しい。3つについてできる分析は、任意の数についても、同様に拡張できることが知られているのである。
 本書は、「3」という数字の魅力を説きながら、「日本の数学教育が置き忘れてきた『3』の発想」を、数学を生業としない一般の人にも分かり易く説いている。数学嫌いの方々にぜひ多く読んでもらい、ホップ、ステップ、ジャンプしてほしいと思う。


(にしむら・かずお 京都大学経済研究所所長)

今月の新刊
近刊情報

書籍から探す



発売日順に見る



すべてのジャンルを見る



RSS 書籍の新刊情報


メールマガジン

ベストセラーランキング
おすすめの一冊
映画・テレビ・舞台化作品

コロッケ『母さんの「あおいくま」』

糸井重里 ほぼ日刊イトイ新聞『できることをしよう。―ぼくらが震災後に考えたこと―』

塩野七生『十字軍物語3』

カレンダーと手帳 2012


ページの先頭へ戻る