新潮新書
尼さんの告白

尼さんはつらいよ
以前からずっと尼さんのことが気になっていました。
「尼寺の中は、どんなところなのだろうか?」
「尼さんは普段何をしているのだろうか?」
「どんな女性が尼さんになるのだろうか?」
そんなことを知りたいと、常々思っていました。
日本では古くから尼さんが存在していたし(なにせ日本初の出家者は女性です)、今も有名な尼さんが活躍しています。しかも『宗教年鑑』(文化庁編、平成21年版)によると、仏教の「教師」の資格を持つ女性は全体の約48%と、すでに半数に迫る勢い(この数字にはちょっとしたからくりがあるのですが、詳しくは本書で)。
なのに、尼さんの実態についてはあまり語られません。
「そのあたりの事情について詳しく語ることのできる人はいないかな」とずっと探していて、ようやく見つけたのが、本書『尼さんはつらいよ』の著者、勝本華蓮さんです。
勝本さんはお寺にも仏教にも縁のない在家出身。広告デザイナーとして活躍、会社も起業し順風満帆だったのが、さまざまな縁もあり、36歳のときに天台宗で得度、「尼さん」になりました。
それから道場や尼寺で修行をするのですが、そのときの経験が本書では克明に記されています。
どうやらその実態は、われわれ外部の人間が考える「清く、正しく、美しく」といったイメージとは、いささか、いや、大きく違うようで……。
詳しくは本書に譲りますが、そこには尼寺の実情から、「お坊さん」にはわからない苦悩を抱える尼さん、志あるすばらしい尼さんまでをレポートしています。現役尼僧が語るその素顔はいかなるものか――。本邦初の現代尼僧論です。
勝手に期待して勝手に失望しない

「常識」としての保守主義
日本の首相がコロコロ変わることを他人事のように批判するメディアには違和感があります。だって発足したときに期待できるようなことを言っていたのは、あんたじゃないか、と思うのです。政権交代後は特にそういう違和感をおぼえる機会が増えました。政権交代すればオールオッケーみたいなことを言っていた人が、同じ口で「民主党は力不足」「官僚をうまく使え」などと言うのが信じられません。
このへんのことに触れて、『「常識」としての保守主義』では、次のように書いています。
「近時の政治評論には、民主党内閣二代に対する評価が典型的に示すように、『政治家に対して勝手に期待し、勝手に失望する』風情のものが矢鱈に多いのである」「政治を観察するためには、保守主義を含めて、一つや二つの『視点』の意味を理解することが、その『作法』として大事になる」
原理原則を持たぬ政治家が多いのと同様、原理原則を持たぬメディアや評論家が多いために、「勝手に期待し、勝手に失望」という不毛なことが繰り返されるのではないでしょうか。
本書は、保守主義の成立、歴史から代表的政治家の足跡、そしてこれからの可能性について述べた骨太の入門書です。
この一冊を読むと、一つの「作法」が確実に身につきます。
「○○さえすればオールオッケー」といった安易な政治家とその提灯持ちにウンザリという方には、ぜひ一読をお薦めいたします。
『反・幸福論』を読む幸せ

反・幸福論
本書は、京都大学大学院人間・環境学研究科教授の佐伯啓思氏による小社での初めての著作になります。
佐伯氏は、『隠された思考』『「アメリカニズム」の終焉』『現代日本のリベラリズム』『自由と民主主義をもうやめる』など、今までに素晴らしい論考を数多く著され、サントリー学芸賞、東畑記念賞や読売論壇賞など受賞歴も豊富な稀代の思想家です。
本書では、「なぜ日本人は幸せを感じられないのか」という壮大な問いに、佐伯氏の鋭い眼差しと柔らかい筆致で深く迫っています。
未曾有の大震災、度重なる政権交代、「正義論」ブームなど最近のニュースを発端に、歪んだ日本人の思考を再考し、生き方の本質を、はっきりと浮かび上がらせてくれます。
本書の内容を一部記してみます。
・「無縁社会」の何が悪い本書の読了後には、知らず知らずのうちに偽善にまみれていた心や、くすぶっていた疑念が晴れ、喪われた「日本人としての幸福」が見えてきます。
・「自由と権利」の追求が不幸のもと
・経済的豊かさが人間関係を蝕む
・格差是正は欺瞞である
・「遁世」だって悪くない
・「ポジティブ・シンキング」は怪しい
・最新技術の「便利さ」を警戒する
・政界に渦巻く「歪んだ権力欲」の正体
・サンデル教授の「正義」は日本人に有効なのか
・福沢諭吉「人間蛆虫論」からの教え
・「徳」や「義」はどうして喪われたか
・「幸せの条件」は他者の中に宿る……
テレビは本当に大変だった

テレビ局削減論
もう随分前から「出版不況」というようなことは言われていました。今から思えば全然そんな大変な状況ではなかったのですが、確かに景気は長いことあまり良くありません。今後もそんなに急成長する業種ではない気がします。
それに比べると同じマスコミでも、テレビはいいなあ、いつも景気が良くて、と思っていました。しかしこの数年、「民放テレビもヤバいんだ」という記事をよく目にするようになってきました。
とにかく景気が良い人たちだというイメージしかなかったので、本当かな? と思っていたのですが、どうも本当のようです。すでに各局が赤字を計上するような事態になっており、しかも業績向上の見通しはまったく立っていません。『テレビ局削減論』の著者によれば、この構造不況は100年続くかもしれないものだ、とのことです。
そして本業の広告収入だけでは限界が見えてきたので、各局とも副業に走っている、と本書では指摘しています。通販や映画製作などは、よく(いや、嫌と言うほど?)目にするので驚きませんでしたが、中には不動産業や結婚式のプロデュース業なんてものまであるそうです。その結婚式ではテレビ局のアナウンサーやカメラマンなどのスタッフを「活用」するというサービスが受けられるとのこと。
なるほどよく考えたもんだと感心しました。この分ならば葬儀ビジネスに参入する日も遠くないのかもしれません。
もちろんテレビがなくなっては困るし、面白くありません。それではどうすればテレビは生き残れるか、そのための秘策としてキー局の削減を本書は提案しています。
乱暴な話に思われるかもしれませんが、本書でメディアの全体像を俯瞰すると、この提案に必ず納得するはずです。




