新潮新書

ショートショートが新書になった?
妻に捧げた1778話
癌の宣告を受けた妻に対し、何か自分にできることはと考えたとき、小説家・眉村卓が思いついたのは「毎日、短い話を書いて妻に読んでもらうことである」(本文より)。今回の『妻に捧げた1778話』は、その1778篇のお話の中から、19篇を選び、奥様との半生を綴るエッセイの間に収録した本である。新書の形で、このような内容の本が刊行されるのは多分初めてではあるまいか。ところで、眉村氏は、「短い話」を「ショートショート」とも言っている。「短話」とつづめて書いている箇所もある。眉村氏と担当編集者は、原稿用紙(四百字詰め)3枚以上の短い小説をなんと表記したらいいのか頭を悩ませた。というのも、眉村氏が書き続けた1778篇は、ヴァラエティに富んでいて、ショートショートの一般的な定義にはそぐわない気がしたのである。
ショートショートという言葉ですぐ思い浮かぶ作家は星新一氏であろう。星氏も眉村氏もともにSF作家に分類される存在である。しかし、ショートショートは決してSFの専有物ではない。ミステリーの読者にはおなじみの作風であろう。純文学の分野でも川端康成の〈掌の小説〉シリーズは、その一味と考えられなくはない。事典によると、ショートショートの特徴は次の通りである。(1)新鮮なアイデア (2)完全なプロット (3)意外な結末。眉村氏の1778話は、この条件を全て満たしているであろうか。否である。ときには、エッセイ風になり、手紙のようになり、結末は自然に……。それは、著者があとがきで書いているように「実生活の中での気持ちをもとに」しているからだろう。だからこそ、エッセイと短い小説の合体というこの書の試みが成功したのだと、担当編集者は自画自賛している。
2004年5月刊より
2004/05
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