新潮新書

弱者の武器
ラジオ記者、走る
この本の担当者である私はかつて週刊誌の記者をやっていました。
新聞などと違い、支局はないので、何か事件があれば全国のどこへでも飛ばされます。そしてまずは警察署に行って、事件についての基礎的な情報を広報担当(大抵副署長)に聞きます。
このときに、普通に広報してくれる担当者ならばいいのですが、一定の確率で「雑誌? 雑誌はクラブに入っていないから駄目だよ」と言う担当者がいます。
すると、「いや、そちらは公務員なんだから、記者クラブにしか対応しないというようなことはおかしいでしょう」と言い返し、押し問答を繰り返し、ようやく向こうも多少の情報を出す、ということがよくありました。
最終的には話を聞けるからいいのですが、それでも面倒です。ですから「クラブがある、新聞、テレビはいいなあ」と思ったものでした(実際には向こうは向こうで色々大変で、巷間よく目にする「記者クラブ批判」にはあまり意味を感じませんが)。
しかし、この本を読むと「クラブがあってもラジオは大変だなあ」ということがよくわかります。ラジオの場合、永田町の記者クラブに所属はしていますが、実に立場が弱い。選挙特番で、「話し合い」の結果、どんどんテレビに出演者の時間を奪われていくあたりは、泣けてきます。
もちろん、やられっぱなしというわけではありません。ラジオ記者たちは、デメリットをメリットに変えて取材を続けています。人数が少なければその分、フットワークは良くなる。身軽だからこそ歩いて取材もできる。そのたくましさには感動します。
誰もが青春時代に一度はお世話になったラジオ。そこでマイク一本を武器に走り回る記者たちの奮闘ぶりをお読み下さい。
2006年3月刊より
2006/03



