新潮新書

タイトルがひらめくまで
ひらめき脳
編集者の大事な仕事のひとつに、本のタイトルを考えることがあります。ましてや昨今の新書業界では、「タイトル次第で部数が大きく変わる」なんて巷間よく言われるところであります。
『ひらめき脳』の場合。
原稿がアップした。読んだ。すばらしい。もっと良いものにしたい。著者(この場合茂木さん)と修正点を確認する。ブラッシュ・アップした。よし、できた!
と、ここまでの威勢は良かったのですが、はたと困ってしまいました。
「この本のタイトルどうしよう?」
茂木さん、新書編集部、たまたま取材に来ていたNHKのクルー、出版界とは全然関係のない友人、クリーニング屋のおばさん、ノラ犬、神様仏様……この本が「ひらめき脳」というタイトルに決定するまで、どれだけの人に相談したかわかりません。頭をひねり、タイトル1000本ノックを自らに課しても、「これだ!」と確信できるものをひらめくことがなかなか出来ませんでした。挙句、ある日の編集会議で「ひらめきについての本ですが、どうしてもタイトルがひらめきません」と漏らしたら、失笑を買ってしまいました。
参考までにこれまで思いついたタイトルを以下に列挙すると、
ひらめきは0.1秒(茂木さんの案)
脳はひらめく
脳がひらめくとき
ひらめきの理由
ひらめきの脳科学
ひらめきのアハ!体験
ひらめきの快感
ひらめきの扉
ひらめく技術
ひらめきを抱きしめて
ひらめきを掴むために
脳VS.不確実性
ひらめき革命
ひらめきで世界を変える……
「どれも五十歩百歩だよ!」というツッコミは、すでに自分でしております。あるいは「あっちの方がいいじゃん!」というツッコミは悲しくなるので堪えていただけると幸いです。
しかし、長らくタイトル難民となったこの本にも、ついにその日がやって来ました!――となれば、この原稿的に収まりもつくのでしょうが、結局は、「『ひらめき脳』が一番インパクトがあって良いよ。これにしよう」という編集長のツルの一言であっさり決定したのでした。「ひらめき脳」というタイトルは、実は早い段階で思いついていたものでした。まさに本書にも書かれているように、ひらめきとは意外と見過ごされがちで、実は身近なところに転がっているものなんだ、というのがそのときの実感です。「ひらめきは天才だけのもの。私は凡人だからひらめかない」なんて思うことなかれ。みなさんも気づかないうちに無数のひらめきを経験し、それをこれまでの人生に活かしてきたはずです。
というわけで『ひらめき脳』。みなさまの仕事や生活に必ずや役立つ、茂木健一郎流「ひらめき的人生のヒント」がぎっしり詰まった一冊です。って、説得力ないですか?



