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新潮新書

編集者のことば 著者はもちろん、担当者にとっても手がけた本は我が子のように思えるものです。親バカだと思われるでしょうが、編集者の一冊の本にかける思いを読んでやってください。

アポリア(難問題)に挑む2人

人は死ぬから生きられる―脳科学者と禅僧の問答―

茂木健一郎、南直哉

 今やメディアを縦横無尽に活躍する、脳科学者の茂木健一郎さんと、青森県恐山の院代(山主代理)を務める、禅僧の南直哉さんの、四年にわたる対話をまとめたのが本書です。
 それぞれ科学と宗教という、一見相反するポジションにいる二人ですが、そんな垣根をやすやすと乗り越えて、実に興味深い応酬が繰り広げられました。

「脳の快楽、仏教の苦」
茂木 ……人間は脳内の報酬物質の上流に何を持っているかで変わるんだと思います。
 ある人はパチンコかもしれないし、ある人は酒、または女かもしれない。……喜びの上流にあるものをどう耕していくか、どう広げてメンテナンスしていくかということでしか人生はないと思います。……。
  私なんかはそういう話を聞くと、それこそが「苦」というものなのかなと逆に思うんです。茂木さんがおっしゃった「快楽」が私には「苦」に思える。ブッダがそれを解脱しろと説いた「苦」に。
茂木 じゃあ、解脱しなくちゃいけないのか(笑)
「生と死のリアリティ」
  ……私は生より死のリアリティの方が高いと思うんですよ。
茂木 生きているリアリティ、というのはあまりない?
  つまり人間は、皆死ななければならないけれども、必ずしも、みんな生きていなければいけないわけではないですからね。
茂木 何か言っていることがすごい。
  だから生の強度がないと、死のリアリティに負けちゃうと思う。
茂木 してみると、現代人の多くはすでに死しているということですか。死にながら生きている……。
  というよりも、人は死ぬから生きられる。……。
 長々と引用しましたが、このように、「生と死」「存在の根拠」「私とは誰か」といった、人類誕生以来問われ続けてきたアポリア(難問題)に、現代を代表する二人の知の怪物が、互いの存在を賭けて挑んだのが本書です。
 仕事や家庭を離れて、ふっと自らの来し方行く末を思い案ずるとき、手元に置いておきたくなる、そんな一冊です。
2009/04
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