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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

感激のポップ

 このところ、『由布院の小さな奇跡』(木谷文弘著、11月刊)、『横井小楠―維新の青写真を描いた男―』(徳永洋著、1月刊)、『薩摩の秘剣―野太刀自顕流―』(島津義秀著、2月刊)と九州に縁のある著作が続いたこともあって、先日、福岡・熊本・鹿児島と、九州三県の書店にご挨拶に行ってきました。
 取材や打ち合わせも兼ねての出張でしたので、あまりたくさんは廻れなかったのですが、各書店の方々から生の話を聞くことができ、まことに有意義な数日間でした。

 なかでも感激したのは、熊本のあるお店を訪ねたときのことです。
 じつは熊本では、『横井小楠』が刊行以来、新書のみならず全書籍中のベストセラー上位にランクインし続けています。ある週など、ベストセラー2位ということもあったほど。特にその書店では、刊行以来ほぼ毎日、かなりの数がコンスタントに売れていると聞いていましたので、その「秘密」がどこにあるのか気になっていました。
 売り場を覗いてみて、謎は氷解しました。熊本の生んだ横井小楠の生涯を熊本出身の著者が書いたということで、著者のメッセージと一緒に、かなり力を入れて置いてくださっていたのです。
 新潮新書のコーナーには担当者の手作りのポップがあれこれ掲げてあり、なかには手書きのパンダの絵とともにこんなコピーも……。
  「新潮新書もヨンデネ」
 これには思わず嬉しくなりました。

 編集者にとって、自分たちの送り出した本は我が子のような存在です(正確に言うと、著者が実の親ですから、編集者は育ての親というところでしょうか)。本がひとたび自分たちのもとを巣立ってからも、気になって気になってしょうがない。新潮新書の編集部では、自分たちでも手作りのポップを作っていますが(このホームページのポップコーナーをご覧ください)、これも一人暮らしの子供に野菜やら米やらを仕送りしたくなる親心のようなものとご理解ください。
 もちろん、その仕送りは少しでも役に立てばと思ってやっているわけですが、親の自己満足と言われればそれまで。やはりそれよりも、書店という「社会」で我が子が認められ、大事にされることの方が嬉しい。
 書店の方々の手作りのポップに出会うと、「ああ、この子の良さをわかってくださったんだなあ」「大事にされているなあ」と、もう感謝感激の心境です。特に内容をきちんと読んでくださっているのがわかるポップを見ると、心の中で「ありがとうございます!」と叫んでしまいます。

 私がよく行く都内の大型店でも、新潮新書のコーナーにたくさんのポップやカードを付けてくださっているところがあります。毎月4点の新刊の中の1つに「今月のイチオシ」と書かれたカードが付けてあって、「そうか、ここの担当者の方はこれに注目してくださったのか」と、こちらも意外な発見があったりして、売り場を通じて担当者の方と会話しているような気持ちになります。
 近所のある郊外型のお店でも、新潮新書のところにだけ手作りのポップが立ててあって、「読んでくださったんだなあ」と感激したり……。
 そんなとき、名乗り出て挨拶しようかとも思うのですが、「子供が頑張っているのに、親がノコノコ出ていくのもなあ」とふだんは躊躇することの方が多いのです。
 でも、たまには「親バカ」丸出しでもいいのかな(書店の方にはご迷惑かもしれませんが)――今回の出張でそんなことを思った次第でした。

2005/02
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