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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

出版ガールの話

 昨年は出版業界で働く人を主人公にした連続ドラマが次々放送されました。黒木華さん主演の「重版出来!」はマンガ雑誌、石原さとみさん主演の「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」は校閲部、高畑充希さん主演の「とと姉ちゃん」は生活誌が舞台。
 基本的に地味な業界なので、世間が関心を持って下さるのは嬉しいことです。
 石原さんに憧れて、新潮社校閲部を目指すガールが増えれば望外の喜びです。
 もちろん、当事者としては「いくらなんでもそれは......」という描写もなかったわけではありませんが、きっとそれはどのお仕事モノのドラマでも同じことでしょうし、自分と関係のある分野の小説を読みながら「こんなことねえよ!」と思う方も多いはずです。

 3月の新刊『警察手帳』の著者は作家の古野まほろさん。古野さんは、東大法学部卒で、バリバリの警察キャリアという経歴の持ち主です。30万人もの職員を要する警察という巨大組織を徹底的にリアルに解説した本書を読むと、お馴染みの刑事ドラマや警察小説と現実とはかなり違うことがよくわかります。「キャリアと叩き上げは対立しがち」といった「警察モノあるある」がかなり誇張された話で、実際にはキャリア、ノンキャリア関係なく極めて真剣で機能的に働いていることがよくわかります。
 著者が心を動かされた現場の敏腕刑事たちの言葉には、私も感動しました。

 他の新刊3点もご紹介いたします。

出世と肩書』(藤澤志穂子・著)は、本邦初(多分)の肩書入門。名刺を見ても、相手がエラいのか、エラくないのか、さっぱりわからない。また、「官房長と事務次官」「常務と専務」「CEOとCOO」のどちらがエラいのかもムツかしい。そんな方に強くお勧めします。

ポピュリズム―世界を覆い尽くす「魔物」の正体―』(薬師院仁志・著)は、骨太の政治思想入門。イギリスのEU離脱、トランプ現象等、世界中を席巻している大きな流れについて、その起源から問題点までを俯瞰した1冊です。

東京都の闇を暴く』(音喜多駿・著)は、小池都知事誕生以降、テレビでもすっかりお馴染みになった若手都議による率直すぎる都政解説。「ドンの力の根源は?」「豊洲問題の本質は?」等々、素朴な疑問に対して、ここまで書くか!というほど正直にディープな情報を書いています。新聞やテレビでニュースを見るよりも、はるかに都政の現状、問題点がクリアに理解できます。

 そういえば、福山雅治さん主演の映画「SCOOP!」の舞台は写真週刊誌でした。映画が参考にしたとおぼしきエピソードの中には、入社当初に写真週刊誌に在籍していた私が知っている大先輩が残した逸話もありました。もちろん、その人の顔は福山さんには似ても似つきません。
2017/03