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特集:短編小説フェスティバル

小説新潮 2008年11月号

(毎月22日発売)

特別定価859円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2008/10/22

発売日 2008/10/22
JANコード 4910047011180
定価 特別定価859円(税込)

【特集:短編小説フェスティバル】

浅田次郎
◆丘の上の白い家
――喧嘩に明け暮れる不良少年の僕にとって、港町の高台に聳える洋館の少女は、月や星に等しい別世界の住人だった

乃南アサ
◆免疫力
――ヤクザも人の子。だから、これは人助けなのだ。警官が多少の金をもらうのも、世のため人のため、なのだ

志水辰夫
◆ながい道草 蓬莱屋帳外控
――飛脚問屋の掟もあらばこそ、身の危険もあらばこそ。街道筋を外れに外れ、医の天職に殉じる男女と死出の道草

時代小説
◆乙川優三郎/秋野
――囲われ者の千津が茶の湯を通して知った、美と自由を願う心
◆北 重人/日本橋
――大普請に沸く江戸で、日本の根元となる橋を架けた男たちがいた
◆北原亞以子/御茶漬蓬莱屋 慶次郎縁側日記
――味と人柄で評判の店に乗りこんで来た女。その語る昔話は…
◆山本一力/御船橋の紅花 八つ花ごよみ
――屋台の女将に懸想する泰蔵。犬猿の仲の甚五郎がそれを知り

警察小説
◆誉田哲也/誰かのために
――「必要とされない」から罪を犯す若者。どうする、久江巡査部長?
◆永瀬隼介/報復
――三日前の警官殺しは、十七年前に取調室で辱めた女の復讐なのか
◆安東能明/片識
――連夜、女の部屋を見つめる交番所長。警務課の柴崎は調査を始めた
◆広川 純/透視鏡
――ミラー越しに覗いたベテラン刑事の尋問。その苛烈さに監督員は…

現代小説
◆恒川光太郎/夕闇地蔵
――雨蛇さま、燃える命の炎、私の目に映る世界は人とは違うのです
◆真山 仁/絹の道
――この村で美しい生糸を創る。女性研究者の情熱の裏に隠された過去
◆柴田よしき/いつか響く足音
――古い団地であたしに寄り添うのは、誰にも言えないあの記憶だけ
◆石田衣良/秋の日のベンチ 6TEEN
――人生の重さに悩むテツローに、ホームレスの老人が伝えた言葉
◆井上荒野/艶の通夜 第二話 太田圭一の愛人、橋本湊
――太田さんは真珠を入れている。それを知っているのは私だけだ

【特集:鉄道百景】
◆酒井順子/こだま号の女
――移ろう風景と駅弁。こだまだからできる東京~博多10時間半のスロー旅
◆関川夏央×原 武史×岡本京子/列車に乗って何を見よう?
――分岐、看板、大船観音、車窓には見るべきものが多すぎる!
◆高橋洋二/ぶらり駅前旅館ひとり旅
――ワンランク上の旅行者を目指し、いざ及び腰で行かん駅前の宿
◆中西千明×藍 孝夫×栗原正哉 聞き手・宮脇灯子/宮脇俊三と旅をした
――同じ列車で同じ景色を見た同行編集者が語る作家の横顔と矜持

宮脇俊三 発掘コレクション
◆小説/彼岸の訪問者
――兄は山から戻らぬまま三十余年が過ぎた。それがなぜ今現れるのか…
◆エッセイ/身近なところにも「旅」はある
――大切なのは金でも時間でもない。紀行の達人が喝破する旅の本質
◆対談/美坂哲男×宮脇俊三 全国温泉浴破VS.国鉄全線乗車
――会社では呆れられ、女房は諦め顔。それでも趣味の方が大事!
◆小説/湿った家
――かつてわが家だった旅館に宿泊する私。佇まいは昔のまま。しかし何かがおかしい

【第四回新潮エンターテインメント大賞決定発表】
◆受賞作/蝶番(抄)
◆受賞の言葉/中島桃果子
◆選評/江國香織

【好評連載小説】
北森 鴻/鏡連殺 第二回
重松 清/ゼツメツ少年
高橋克彦/鬼哭鬼九郎
西村京太郎/宮島・伝説の愛と死
宮部みゆき/ソロモンの偽証
平岩弓枝/聖徳太子の密使
櫻井よしこ/母と過ごす至福の日々

【連載エッセイ】
嵐山光三郎/文士の舌
柴門ふみ/恋のタネ
佐藤 優/功利主義者の読書術
山田詠美/アンコ椿は熱血ポンちゃん
山本益博/マスヒロのあくび指南
河口俊彦/盤上の人生 盤外の勝負
フジモトマサル/終電車ならとっくに行ってしまった
太田和彦/居酒屋百名山

第五回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
川柳うきよ大学/小沢昭一
次号予告

編集長から

小説と鉄道と
 稀代の紀行作家にして鉄道の達人、宮脇俊三氏は、遠くに行くことが旅ではない、と喝破した。日常性からの脱却が旅なのだ、と。
 日常性からの脱却なら、小説も負けてはいない。特集「短編小説フェスティバル」は、現代、時代、警察小説の三つのジャンルから、充実のベスト16作の祭典。浅田次郎氏は、不良少年と美少女という取り合わせから思いもつかぬ展開を見せる。乃南アサ氏は、警官とヤクザの奇妙な共生を抉り、志水辰夫氏は飛脚問屋と蘭医夫婦の死出の道草を描く。いずれも日常からの記憶に残る旅になる。
 もう一つの特集は「鉄道百景」。酒井順子氏は東京~博多間を、こだまスロー旅。関川夏央氏と原武史氏は「絶景以外の車窓の楽しみ」を語り、高橋洋二氏は駅前旅館ひとり旅。「宮脇俊三発掘コレクション」では、単行本未収録の小説二編に、温泉と鉄道を語る対談再録。冒頭の言も、今回再録の名エッセイからである。


小説新潮編集長 高澤恒夫

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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