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【ファンタジーセラー2011】もうひとつの世界、売ります。

小説新潮 2011年9月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2011/08/22

発売日 2011/08/22
JANコード 4910047010916
定価 943円(税込)

【ファンタジーセラー2011】

 昨年に引き続き、「Fantasy Seller」をお届けする。
 現在巷ではハリー・ポッターシリーズの完結編が上映されているから、ファンタジーと魔法は切り離せない印象を受けるし、舞台もヨーロッパを思い浮かべるかもしれない。
 だが、ファンタジーが広大な世界を持っていることは、この国の本好きなら既にご存知のことだろう。食べ物のジャンルではないが、ざっくりと大括りにしても、和・洋・中をはじめ、様々なテイストで数多くの作品が描かれている。もしかしたら日本は、世界中でもっとも多様なファンタジーを味わえる国なのかもしれない。
 その証拠が、「ファンタジック」という言葉だ。幻想的な、という意味合いで使われることが多いであろうこの言葉は、実は英語にはない。ファンタジーから派生したと思われる和製英語なのだ。そんな言葉を作ってしまうほどに、我々はファンタジーを身近に感じてきた、ということではないだろうか。

◆仁木英之/鏡の欠片 僕僕先生
──突然降ってきた霊宝をめぐる童子の冒険と、孝心の物語

◆小田雅久仁/耳もぐり
──失踪した彼女のアパートで、隣室の男がねっとりと語り出す

◆遠田潤子/弓と椿
──男は語り始めた、宝を追い求めた先祖と年若い巫女の悲恋を

◆紫野貴李/うぃすたりあ伝奇
──華族の邸宅に咲く藤の花には、血塗られた言い伝えがあった

◆石野 晶/針ネズミのジレンマ
──初めての彼氏だったのに、皮肉な力が二人の邪魔をして

◆宇月原晴明/鳴瀧の赫夜
──かぐや姫にとりつかれた貴族の前に、再び現れる竹取の怪

【好評読み切り短編】

◆白石一文/七月の真っ青な空に
──蓮がキジトラの雄を送り届けた里親は、ひどく痩せた男だった

◆さだまさし/空蝉風土記 信州・鬼宿
──後輩が来週嫁ぐ先は、昔から鬼が泊まりに来る家なのだという

【連載エッセイ】
阿刀田 高/源氏物語を知っていますか
柴門ふみ/大人の恋力
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
嶽本野ばら/地嶽八景亡者戯
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ

【連載ノンフィクション】
大崎善生/赦しの鬼 団鬼六の生涯
高橋秀実/僕たちのセオリー 実録・開成高校硬式野球部

【新連載スタート】

◆熊谷達也/海峡の絆
――大火の町・函館に吹き始めた強風に、泊敬介は胸騒ぎを覚えていた――

◆坂東眞砂子/Hidden times
――海の果て、遠く離れた南島に、南十字星に導かれて集まりし日本人たち

◆北村 薫/うた合わせ
――独自の感性で新旧の歌を自在に語る、北村版・古今和歌集がスタート!

【新シリーズ開始】

◆朱川湊人/遠くの友だち
――団地に引っ越した小学生が出会う、ちょっぴりおかしな初めての友だち

【反響止まらず 震災ルポ第二弾】

◆彩瀬まる/すぐそこにある彼方の町
――旅行先の福島で被災し、奇跡的に生還した体験を綴った「川と星」の著者が、被災地でボランティアを体験。見えてきたのは想像を越えた意識の壁

【第二十三回日本ファンタジーノベル大賞決定】

【大賞】勝山海百合/さざなみの国(抄)
【優秀賞】日野俊太郎/吉田キグルマレナイト(抄)
【選評】荒俣 宏/小谷真理/椎名 誠/鈴木光司/萩尾望都

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
浅田次郎/赤猫異聞
荒山 徹/蓋島伝――長宗我部元親秘録
飯嶋和一/星夜航行
池井戸 潤/鋼のアリス 最終回
大沢在昌/冬芽の人
白川 道/神様が降りてくる
西村京太郎/サンライズ出雲殺人事件
蜂谷 涼/鬼の捨て子
葉室 麟/春風伝――高杉晋作・萩花の詩
宮部みゆき/ソロモンの偽証
山本一力/べんけい飛脚

第七回「新潮エンターテインメント大賞」最終候補作発表
第八回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

大きな異世界、小さな異世界
 昨年に引き続いて「Fantasy Seller」をお届けする。今年は、日本ファンタジーノベル大賞の決定発表も合わせて掲載しているので、これから世に出る二人の作家にも、是非ご注目いただきたい。紙幅の関係で、受賞作は冒頭しか紹介できないが、それぞれの持ち味は充分に味わえると思う。
 今まであまり興味のなかった方には、ファンタジーは魔法とかドラゴンとかが出て来る特殊なジャンルの小説と思われているかもしれない。もちろんそういった作品も多々あるが、それだけではない。異世界の話、というと大仰だが、ちょっとだけ不思議なことが起こる世界、だって立派な異世界だ。
 こんなこと出来たらいいな、とか、あんな物があったらいいな、と考えたら、そこはもうファンタジー世界のとば口だ。
 今までファンタジーはあまり読んだことがないという方にも、そういった気楽な気持ちで、今回の特集を楽しんでもらえたらいいなと思っている。


小説新潮編集長 新井久幸

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小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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