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【医療小説特集】海堂 尊/帚木蓬生/篠田節子

小説新潮 2011年11月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2011/10/22

発売日 2011/10/22
JANコード 4910047011111
定価 943円(税込)

【現代エンタ最前線】
医療小説&新潮エンターテインメント大賞作家特集

日本のエンターテインメントは、レベルが高いと言われる。世界の小説事情に通じているわけではないが、それでも、これだけありとあらゆる題材を小説に仕立て上げている国は、寡聞にして知らない。例えば医療。濃密に生死とかかわる現場であるが故、ドラマの宝庫ではあろう。だが、それを誰にでも分かりやすく、かつ興味深く描き出すのはまた別の話だ。読む方にも同じ事が言える。作中で説明があるとはいえ、専門的だったり馴染みのなかったりする場面を、文章だけでイメージしていくのは、思っているほど簡単なことではない。現代日本の文藝シーンは、書き手も読み手も、そこを軽やかにクリアしている。今回の医療にまつわる三つの作品で、それは実感していただけるはずだ。またもう一つ、今年で第七回を迎える「新潮エンターテインメント大賞」歴代受賞作家の特集を企画した。ノンジャンルの新人賞ならではの、特定の分野に偏らない、現代日本のエンターテインメントの広がりを感じていただけるのではないかと思う。

医療小説の魅惑

◆海堂 尊/被災地の空へ――DMATのジェネラル
――未曾有の震災を前に何ができるのか? 救急医・速水の決断とは

◆帚木蓬生/死産
――病兵を抱えて村に入った私の前に、ビルマ人妊婦が横たわった――

◆篠田節子/ミッション
――先輩医師の志を継ぎ、ヒマラヤに独り来た女医・頼子が見たのは

新潮エンターテインメント大賞歴代受賞作家競作

◆吉野万理子/南西の風やや強く
――自分より幸福な人を減らす密かな儀式。それを見られた伊吹は……

◆榊 邦彦/青い空と赤い糸
――昭和25年の夏。高校球児だった祖父には秘められた思い出があった

◆井口ひろみ/20th Century Beauty
――太っている=美しい!? 美の基準がひっくり返った未来の東京では

◆中島桃果子/「かつて」と「今」に贈る恋文
――お姉ちゃんが落ちていく。ゆっくり、確実に。シノくん、助けて

◆小島達矢/It's Just Begun
――廃墟で一人黙々と踊る男。その背中には確かに見覚えがあった

◆神田 茜/バナナ
――俺は目つきが悪い。俺に似た娘も可哀想だが、笑ってごまかせ……

【第七回 新潮エンターテインメント大賞決定発表】
受賞作】水沢秋生/ゴールデンラッキービートルの伝説(抄)
選評】恩田 陸

【新連載スタート】
◆藤田宜永/風屋敷の告白 還暦探偵
――定年退職を機に、探偵事務所を開いた憲幸と勉。売りは「素人であること」

【連載第二回】
◆井上荒野/ほろびぬ姫
――両親の葬儀の日、あなたに出会った。両親が消えた場所をあなたが塞いだ

【連載エッセイ】
阿刀田 高/源氏物語を知っていますか
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人の恋力
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
嶽本野ばら/地嶽八景亡者戯
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ

【好評シリーズ読み切り】
◆さだまさし/空蝉風土記 津軽・人魚の恋
――その人は突然私の眼の前に現れ、瞬く間に消えた。謎の言葉だけを残して

◆朱川湊人/秋に来た男
――まだ初々しい夫婦の間にふいに蒔かれた、疑惑の種。妻の過去に一体何が?

【連載ノンフィクション】
大崎善生/赦しの鬼 団鬼六の生涯
高橋秀実/僕たちのセオリー 実録・開成高校硬式野球部

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
浅田次郎/赤猫異聞
飯嶋和一/星夜航行
大沢在昌/冬芽の人
熊谷達也/海峡の絆
柴田よしき/貯められない小銭II 名前のない古道具屋の夜
白川 道/神様が降りてくる
西村京太郎/サンライズ出雲殺人事件
蜂谷 涼/鬼の捨て子 最終回
葉室 麟/春風伝――高杉晋作・萩花の詩
坂東眞砂子/Hidden times
本多孝好/魔術師の視線
宮部みゆき/ソロモンの偽証 最終回

第八回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

書き手も読み手も高レベル
 一昔前は、「中間小説」という言い方だった。いわゆる純文学に比して、娯楽性の高い小説を、そんなふうに言っていた時代がある。それが、いつからかエンターテインメントと呼ばれるようになり、一般化した。確かに、何と何の中間なのか分からない表現よりは、よほど当を得ている。
 読者を楽しませることにかけて、日本の小説は貪欲だ。どんなに重いテーマでも面白く読ませてしまうし、特殊な業界や世界のディテールも、物語の中で違和感なく理解させてくれる。
 その最も分かりやすい例が、医療小説だろう。生死という非常に重いテーマを扱い、医学用語が頻出しても、リーダビリティは高く、我々をエンターテインしてくれる。
 そして、それをすんなり楽しんでしまう日本人は、読み手としてのレベルが非常に高いと言うことができるだろう。今月の特集で、それが証明されると思っている。


小説新潮編集長 新井久幸

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 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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