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特集【Kwaidan 2012 怪談】 佐藤愛子/小池真理子/北村 薫/唯川 恵/恒川光太郎/高橋克彦

小説新潮 2012年8月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2012/07/21

発売日 2012/07/21
JANコード 4910047010824
定価 943円(税込)

特集【Kwaidan 2012 怪談】

昨年に引き続き、「Kwaidan【怪談】」の特集をお届けする。この季節になると、テレビでもよく怖い話の特番を目にするが、面白いのは、大抵の場合、それが誰かの語りによって成り立っていることだ。再現フィルムのような構成もあるにはあるが、圧倒的に怖くて臨場感があるのは、やはり語りによる怪談だ。
それは、語り手の力量もあろうが、一方で怪談の本質なのだろうとも思う。つまり、目の前に現れるものではなく、聞き手の想像力に訴えるものが一番怖い、ということだ。音はすれども姿は見えず。影は映れど実体はあらず。どちらも、映像にしてしまうと直接的過ぎて趣を欠く。ないものを表現することにかけて、言葉に勝るものはないだろう。言葉のプロフェッショナルが紡ぎ出す怪の数々。じっくりとお楽しみいただきたい。

◆佐藤愛子/怖いお話
――気配もないのに、怖い。総毛立ち、声も出ない。私、よくここまで死ななかったものだと思うのよ

◆小池真理子/座敷
――地方の名家に嫁した旧友を訪ね、楽しい一夜になるはずが……。闇に呑まれた屋敷に潜むあの影は

◆北村 薫/開く
――民俗学を学ぶ紫苑は、調査で訪れた神社で奇妙な出来事に遭遇。以来、異界の扉が開き始め――

◆唯川 恵/牡丹燈籠 異譚
――かららん――ころろん――、今宵も迫る下駄の音。かの有名な怪談話が、美しく、官能的に生まれ変わる

◆恒川光太郎/スノー・ゴースト
――冬から冬へ――僕の人生に永遠に春は来ない。あの日から、僕は雪景色の中だけで生きる冬の旅人になった

◆高橋克彦/モノクローム
――世界を白黒にすれば、隠されていた景色が見えてくる? 写真が趣味の小説家が出会ったのは

【新連載】
◆杉山隆男/メイのいない五月
――飼い犬のメイがいなければ、妻との会話も成立しない。いつからこうなってしまったのか――。夫婦関係の本質に迫る長編スタート!

【連載第二回】
◆はらだみずき/ここからはじまる
――「プロサッカー選手になる」、夢への第一歩を踏み出すため、セレクションを受けた勇翔。結果はわかっていたものの……

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
飯嶋和一/星夜航行
井上荒野/ほろびぬ姫 最終回
熊谷達也/海峡の絆
近藤史恵/キアズマ
今野 敏/宰領 隠蔽捜査5
佐々木 譲/獅子の城塞
柴田よしき/底のないポケットII 名前のない古道具屋の夜
白川 道/神様が降りてくる
新城カズマ/島津戦記
西村京太郎/十津川警部 新宮に徐福伝説の謎を追う
野中 柊/波止場にて
葉室 麟/春風伝――高杉晋作・萩花の詩 最終回
坂東眞砂子/Hidden times
藤田宜永/風屋敷の告白 還暦探偵
誉田哲也/ドンナ ビアンカ
真山 仁/沈黙の代償
向田邦子 原作 烏兎沼佳代 構成/続・寺内貫太郎一家
米澤穂信/リカーシブル 最終回

【連載エッセイ】
阿刀田 高/源氏物語を知っていますか
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人の恋力
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
高山なおみ/今日もいち日、ぶじ日記
中野 翠/いちまき ある家老の娘の物語
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
宮城谷昌光/随想 春夏秋冬
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ

第二四回「日本ファンタジーノベル大賞」候補作発表
第八回「新潮エンターテインメント大賞」中間発表
次号予告/編集後記

編集長から

怪談の極意
 昨年に引き続き、「Kwaidan【怪談】」の特集をお届けする。
 この季節になると、小説雑誌のみならず、テレビを初めとしたあらゆるメディアで同様の特集を目にする。やはり、格段に怖くて臨場感があるのは、語りによる怪談だろう。再現ドラマの類もあるが、語りとは怖さの質が違うように感じる。
 映像での怖さは、画や音でびっくりさせる要素が強いが、語りでの怖さは、想像力に訴える面が強い。そもそも日本の怪談は、「ないもの」をいかに効果的に見せるかで成り立っているものが多いのだ。音はすれども姿は見えず、はその最たる物だろう。
 そこに「いる」、というのは映像で簡単に表現できるが、そこに「いない」というニュアンスを映像で伝えることは難しい。例えば、「雨が降っている」というのは映像でも表現可能だが、「雨が降っていない」という主張を、映像で瞬時に分からせることはできない。何の注釈もなく晴天の映像を見せられて、「雨が降っていない」とは誰も思わないだろう。
 そこはまさに言葉の独擅場。語りのプロフェッショナルによる怪の宴を、じっくりと楽しんでいただきたい。


小説新潮編集長 新井久幸

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 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
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