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特集「卒業〈Graduation〉」越谷オサム/小手鞠るい/水沢秋生/佐藤 弘/小島達矢/畑野智美

小説新潮 2013年3月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2013/02/22

発売日 2013/02/22
JANコード 4910047010336
定価 943円(税込)

特集「卒業〈Graduation〉」

卒業と聞いてまず思い浮かぶのは、どんな光景だろう? 卒業は、たいてい入学や入社とセットになっているから、合わせて旅立ちのイメージを喚起することが多い。
しかし、卒業という言葉を単独で切り取って感じるのは、前向きな気持ちよりはむしろ、後ろ髪や未練といった、「断ち切る」必要がある想いではないだろうか。
だから、恋愛を語る場面でよく使われるし、「もう○×は卒業」というような、現在の状態と違うことをはっきりさせたい、というニュアンスが強くなる。
おそらく今日も、あちこちで様々な卒業の儀式が行われているはずだ。
あなたの直近の卒業は何だったろうか?

◆越谷オサム/卒業までにできること
――おれ自身の高校生活に一矢報いてえ! 幼馴染みの太一がそう吠えた

◆小手鞠るい/きょうは楽園を去っていく日
――寄せては返す、幸せだった記憶たち。ふたりきりの最後の旅路で

◆水沢秋生/エンドレス
――卒業式。送る側、送られる側、見守る側、それぞれの思惑が交錯し…

◆佐藤 弘/または、センチメンタルジャーニー
――突然現れた女子高生の幽霊。俺を知っているというが、あの秘密まで?

◆小島達矢/クレームブリュレ
――マイペースな後輩に手を焼く明絵の前に、タチの悪いクレーマーが

◆畑野智美/春のおわり
――ずっと友達、なわけない。感動感涙の卒業式に背を向けるユイだが

【新連載スタート】
◆乃南アサ/水曜日の凱歌
――空襲で東京ががらんどうになった日、鈴子の中で何かが切れた

◆山本幸久/アシタ、デキル?
――就職先もなく八方塞がりの女子大生。不運の末に出会ったのは

【好評読み切りシリーズ】
◆畠中 恵/くたびれ砂糖 しゃばけ
――栄吉が久方ぶりに来てくれた! でも、何やら困っているようで

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
飯嶋和一/星夜航行
桐野夏生/抱く女
佐々木 譲/獅子の城塞
柴田よしき/持てないバケツII 名前のない古道具屋の夜
白川 道/神様が降りてくる
新城カズマ/島津戦記
仙川 環/マテリアル・ライフ
嶽本野ばら/傲慢な婚活
野中 柊/波止場にて
平岩弓枝/私家本 椿説弓張月
向田邦子 原作 烏兎沼佳代 構成/続・寺内貫太郎一家 最終回
山本一力/べんけい飛脚

【連載エッセイ】
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人恋愛塾
酒井順子/地震と独身
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
高山なおみ/今日もいち日、ぶじ日記
中野 翠/いちまき ある家老の娘の物語
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
宮城谷昌光/随想 春夏秋冬

次号予告/編集後記

編集長から

卒業を遠く離れて
 いわゆる「卒業」と無縁になって随分と経つ。会社員生活からの卒業は定年だろうから、まだまだ先のことだ。もちろん、学校や職場を離れることだけが卒業ではない。非常に感覚的だが、「一時期深く関わった物事から抜け出ること」を卒業と言うような気がする。だから、恋愛や趣味を語る場面でよく使われ、もうそこには戻らないよ、戻れないよ、というような意思表示も暗に含まれているように感じられる。
 そこでふと、最近自分は何から卒業しただろうかと考えてみて、思い当たるふしがないことに愕然とした。悪いことではないかもしれないが、寂しい気がしないでもない。よく考えてみれば、何にも入学していないのだから、卒業しないのも当たり前だ。
 毎年この季節になると、街に漂う寂寥感が妙に懐かしくなる。卒業から遠く離れてしまった方に、今回の特集が届くといいなと願っている。


小説新潮編集長 新井久幸

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雑誌から生まれた本

小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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