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【読むクスリ 医療小説の誘惑】帚木蓬生/海堂 尊/久坂部 羊/知念実希人/小笠原 慧

小説新潮 2013年6月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2013/05/22

発売日 2013/05/22
JANコード 4910047010633
定価 943円(税込)

【読むクスリ 医療小説の誘惑】

病は気から、と言われる通り、気の持ち方で体調は見る間に変わる。気合いだけで病気が治るとは思わないが、それでも気持ちで負けてしまっては、治癒への道は遠いだろう。
以前、重病を告知された友人から、「気が滅入って何もする気が起きなかったけれど、楽しみにしていた新刊を読んだら気が晴れた。次の本も読みたいし、早く元気にならなきゃと思った。ありがとう」と言われ、とても嬉しかったことがある。
今回、「読むクスリ」と題してみたのは、医療小説に限ったことではない。小説全般を指してのことだ。
作品を楽しんで読む、次作を心待ちにする、という行為は、きっと気持ちに何らかの前向きな効果をもたらすはずである。病気でなくとも、日々の生活の中で、「面白かった。明日も頑張ろう」と思ってもらえるような一刻を提供できればと願い、「小説新潮」を作っている。

◆帚木蓬生/父の石
――虫医者と呼ばれた父。排出させた蛔虫は世界一、二を争う

◆海堂 尊/ガンコロリン騒動記
――おかしな博士と画期的すぎる新薬がとんでもない波紋を呼んで

◆久坂部 羊/他生門
――心臓移植で蘇った俺。しかしいい気になれたのも束の間だった

◆知念実希人/泡 統括診断部の事件カルテ
――カッパが現れた! 超個性派天才女医が謎の正体を追いつめる

◆小笠原 慧/ビューティフル・ドリーマー メンタルクリニック物語
――就職難は臨床心理士も同じ。奇跡的に職を得られた場所は

「第二回 日本医療小説大賞」決定発表
[選評]篠田節子/久間十義/渡辺淳一
ブックガイド 二〇一二年医療小説総括 杉江松恋
医療小説宣言 海堂 尊

【梅雨のあとさき】

◆白河三兎/肩を濡らさない相合傘
――不本意な相合傘に戸惑う僕。前には気になる女の子が――

◆遠田潤子/夜のささやき
――わがままで、偉そうで、迷惑ばかりかける――忘れられないあいつ

◆水沢秋生/晴れた日には傘をさして
――大事な日には必ず雨が降るのが雨男。何故、今日は晴れている?

◆彩瀬まる/明滅
――その日、脳裏に蘇ったのは身体に刻みつけられた忌まわしい記憶で

◆光本正記/誕生日、惑星に猫
――誕生日はいつも必ず雨だった。嫌でたまらなかったのに

【新連載】
◆西村京太郎/生死の分水嶺・陸羽東線
――いなくなったと思えばひょっこり帰ってくる。今度もいつもの気まぐれかと思ったら、彼女は遺体となって現れた

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
安部龍太郎/冬を待つ城
飯嶋和一/星夜航行
石井光太/蛍の森
桐野夏生/抱く女
佐々木 譲/獅子の城塞 最終回
白川 道/神様が降りてくる 最終回
新城カズマ/島津戦記
杉山隆男/メイのいない五月
仙川 環/マテリアル・ライフ
嶽本野ばら/傲慢な婚活
野中 柊/波止場にて
乃南アサ/水曜日の凱歌
早見和真/イノセント・デイズ
はらだみずき/ここからはじまる
平岩弓枝/私家本 椿説弓張月
山本一力/べんけい飛脚

【連載エッセイ】
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人恋愛塾
酒井順子/地震と独身
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
高山なおみ/今日もいち日、ぶじ日記
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
宮城谷昌光/随想 春夏秋冬
山田詠美/時計じかけの熱血ポンちゃん

第三十二回「新田次郎文学賞」決定発表
第一回「新潮ミステリー大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

すべての小説は「読むクスリ」
 第二回の「日本医療小説大賞」は、残念ながら該当作なしという結果となってしまったが、医療小説とは何か? については、突っ込んだ議論が交わされた。受賞作はなかったものの、現代日本で、医療を扱った小説が数多く発表されていることは事実であるし、それらの完成度は年々高くなっている。それは、書き手と読み手のレベルが上がっているからに他ならず、医療が生活に関わる度合いが強まっているという意味でもあるだろう。
 これを機会に、普段の生活を「医療」という観点で見直してみて欲しい。通院、服薬、介護は言うに及ばず、良く使われる言葉の「癒し」だって、心の治療と言うことができる。
 小説には、毎日の生活で疲れ気味の心を励ましてくれる、そんな効果がある。医療に関係あるなしは別として、小説はすべからく健康な毎日を過ごすための養分である、という意味を込め、「読むクスリ」という特集を企画した。


小説新潮編集長 新井久幸

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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