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特集【幻視者の系譜】小田雅久仁/勝山海百合/日野俊太郎/関 俊介/三國青葉/日明 恩/麻耶雄嵩

小説新潮 2013年9月号

(毎月22日発売)

特別定価1,047円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2013/08/22

発売日 2013/08/22
JANコード 4910047010930
定価 特別定価1,047円(税込)

特集【幻視者の系譜】

エドガー・アラン・ポーという名前は、どのような意味で記憶に刻まれているだろうか。ある人にはゴシックと呼ばれる幻想小説の書き手として、またある人には推理小説の始祖として――。

いずれにしろ、ポーが後世に与えた影響は計り知れない。ポーの幻想小説は、その後のSFやホラーを先取りしている感があるし、推理小説にいたっては、今や一大ジャンルを形成している。

フィクションはすべて虚構であるから、強弁すれば「現実でないものを視て描いた世界」と括れるわけだが、中でも幻想小説や推理小説は、現実からの乖離度が高い。

すべての始まりがポーだなどと言うつもりはないが、間違いなく大きな切っ掛けの一つではある。常ならざる世界に魅力を感じ、それを読み、書かずにはおれない人たち。そんなあまたの〈幻視者〉に、この特集を贈る。

◆小田雅久仁/食書
―― 一頁食べたら引き返せない―本を喰った作家は物語の世界へ堕ちて

◆勝山海百合/くさびらのあつもの
――道に迷った一行が上がりこんだ無人の家。旨そうな匂いにつられて

◆日野俊太郎/一条☆方違えストリート
――さえない大学生が辿り着いたのは、摩訶不思議な60年後の京の街!

◆関 俊介/求愛の音色
――サナギの外に出た二人。短い命を繋ぐ、赤と白の歌を鳴らして

◆三國青葉/茅野のユウウツ かおばな憑依帖
――かわいさのあまり、孫に取り憑いた怨霊。何やら頼みがあるらしい

◆日明 恩/口座開設の彼
――窓口に二度現れた男は別人? 全てはお客様の為、信金マンが奔走!

◆麻耶雄嵩/旧友
――故郷に錦を飾った友が密室で死んだ。まさか戌神様の祟り……!?

【第二十五回日本ファンタジーノベル大賞決定】

大賞
◆古谷田奈月/今年の贈り物(抄)
――始まりは父が娘に贈った物語。「現実的」なおとぎ話が幕を開ける

優秀賞
◆鈴木 伸/きのこ村の女英雄(抄)
――小さな拾い物が少女の運命を変えた。巨獣・亜人種満載の冒険物語!

選評
荒俣 宏/小谷真理/椎名 誠/鈴木光司/萩尾望都

【新連載スタート】
◆グラビア 青山裕企/お仕事ちゃん
――子供が親の職場で働いてみたら? 大人気の写真家が写し出す新しい親子像

◆シリーズ「しゃばけ漫画」
上野顕太郎/一ノ巻 狐者異(こわい)
――ベテランから新鋭まで、漫画家が月替わりで大人気シリーズの世界に新たな命を宿す。誰が登場するか、贅沢読みきり企画が遂に始動!

◆柴田ゆう/しゃばけ4コマ
――鳴家に、一太郎に、白沢が! かわいくて面白い4コマ劇場の開演!

【連載第二回】
◆あさのあつこ/ゆらやみ
――疾風のように現われた少年への想いを募らせるお登枝だったが……

◆森 達也/チャンキ
――タナトス。その自殺願望病のため、日本人十代の五人に一人が死ぬ

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
安部龍太郎/冬を待つ城
飯嶋和一/星夜航行
石井光太/蛍の森 最終回
乙川優三郎/ウォーカーズ テン・ストーリーズ
桐野夏生/抱く女
柴田よしき/転がらない球II 名前のない古道具屋の夜
新城カズマ/島津戦記 最終回
嶽本野ばら/傲慢な婚活
西村京太郎/生死の分水嶺・陸羽東線
野中 柊/波止場にて
乃南アサ/水曜日の凱歌
早見和真/イノセント・デイズ
原田マハ/暗幕のゲルニカ
平岩弓枝/私家本 椿説弓張月
山本一力/べんけい飛脚 最終回
山本幸久/アシタ、デキル?

【連載エッセイ】
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人恋愛塾
酒井順子/地震と独身
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
高山なおみ/今日もいち日、ぶじ日記
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
宮城谷昌光/随想 春夏秋冬
山田詠美/時計じかけの熱血ポンちゃん

第一回「新潮ミステリー大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

幻視者の末裔
 エンタメの世界では、今やジャンルの越境やハイブリッドは珍しいことではなく、むしろあらゆる要素を幅広く緩やかに覆っていく方向にあるように見える。しかし、かつてはそれぞれが、それなりに独立したジャンルとして立っていた。
 だが、そうした時期から、ファンタジーとミステリーは親和性の高いジャンルとして、書き手にも読み手にも認識されていたように思う。それは、推理小説の始祖と言われるエドガー・アラン・ポーが、優れた幻想小説の書き手として出発したことと無縁ではないだろう。
 ファンタジーは主に異世界を描き、ミステリーは現世と地続きながら、実際には起きていない事件を描く。どちらも、現実とは遠く切り離された世界を描く小説である。
 そんな作品世界の愛好者は、書き手も読み手も、〈幻視者〉と呼べるのではないか。常ならざる世界に惹かれてしまうあまたの同志へ、この特集を贈る。


小説新潮編集長 新井久幸

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雑誌から生まれた本

小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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