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特集【MはMysteryのM FはFantasyのF】乾くるみ/白河三兎/秋吉理香子/伊与原 新/詠坂雄二/日明 恩/古谷田奈月/冴崎 伸

小説新潮 2014年9月号

(毎月22日発売)

947円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2014/08/22

発売日 2014/08/22
JANコード 4910047010947
定価 947円(税込)

特集【MはMysteryのM FはFantasyのF】

 物語は多かれ少なかれ、謎、つまりミステリーの要素を含む。といっても、連続殺人事件の犯人であるとか、厳密に監視された密室から忽然と消えた死体とか、そういった事件ばかりが謎なのではない。
 例えば、あの人はなぜあんなことをしたのだろう? とか、恋愛において、なぜあの人に惹かれたのだろう? というのは、立派に物語を牽引する謎たり得る。
 伏線とその回収と言えば大仰だが、要はエピソードの呼応である。その積み重ねが物語を構築し、カタルシスを生む源になっている、ということだろう。
 ミステリやファンタジーは、そこの面白さにより焦点を当てたジャンルだ。
 エピソードの呼応の妙を、ゆっくりとお楽しみいただきたい。

◆乾くるみ/物件探偵 小岩20分一棟売りアパートの謎
――偶然検索した売買物件。この間取図、もしや私の生活空間?

◆白河三兎/八方美人なストライクゾーン
――突如持ちかけられた、怪しい野球対決。サークルの危機にタージは

◆秋吉理香子/ナルキッソスの鏡
――時代遅れの鏡研ぎ職人・源次郎が、禁じられた相手に恋をして――

◆伊与原 新/エオルスの竪琴
――高級バイオリンが盗まれた! 無人倉庫に響く奇妙な音の正体とは

◆詠坂雄二/風ノ町
――旅人の辿り着いた、けして風の止まぬ町。不思議な神を信じる人々は

◆日明 恩/金曜午後二時十分の彼女
――上得意様の様子が何だか変? すわ詐欺かと揺れる南武信金だが

◆古谷田奈月/大粒のダイナ
――若い女優二人の遊びに過ぎないはずが、変化は気づかぬ間に訪れて

◆冴崎 伸/赤光(しゃっこう)の静魔(シズマ)
――表と裏の顔をもつ静魔に、頭を悩ます二つの依頼が舞い込んできて

【連載第二回】
◆今野 敏/去就 隠蔽捜査6
――ストーカー対策班の編成に悩む竜崎。野間崎まで乗り込んできて

【特別読み切り】
◆近藤史恵/決別
――確かに去年は一度も表彰台に上がれなかった。でも契約打切りとは

◆西村賢太/下水に流した感傷
――同棲する女への度重なる暴行の末、贖罪意識に苛まれた貫多は――

【シリーズ「しゃばけ漫画」】
高橋留美子/十三ノ巻 屏風の中
――なんと若だんなの体調がすこぶる良い! どうやら屏風の世界に入ってしまったようで……。大人気トリビュート、堂々の最終回!

【連載コラム】
◆本の森
――新刊文芸書の中から、選りすぐりのお薦めを紹介
〈歴史・時代〉田口幹人/〈SF・ファンタジー〉石井千湖

【好評連載小説】
阿刀田 高/ヒュポクリシス異聞 絵のない肖像9
飯嶋和一/翼人のかたみ
伊東 潤/死んでたまるか
江上 剛/鬼忘島 金融検査官・伊地知の密命
小川 糸/サーカスの夜に 最終回
木内 昇/球道恋々
柴田よしき/最後の選択IV 名前のない古道具屋の夜
中脇初枝/川にすむ神は水にくすぐられてわらう 最終回
西村京太郎/金沢が歴史を創った日
葉室 麟/鬼神の如く 黒田叛臣伝
原田マハ/暗幕のゲルニカ
森 達也/チャンキ
山本一力/マックでよい
山本幸久/アシタ、デキル?

【連載エッセイ】
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人恋愛塾
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
椎名 誠/じいじいのヨロコビ
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
山田詠美/時計じかけの熱血ポンちゃん

次号予告/編集後記

編集長から

すべての小説はミステリー?!
 ミステリと言うと、事件が起きて、下手すれば連続猟奇殺人で、犯人が分からなくて、一癖も二癖もある怪しい登場人物が満載で……、と思う方も多いだろう。もちろんそういった作品もあって、個人的には大好きなのだが、人死にが嫌いな方には、苦手なジャンルかもしれない。
 ただ、ミステリを全部「殺人事件が起きる話」と思って敬遠している人がいたら、それはとてももったいないことである。誤解を恐れずに一言で言ってしまえば、ミステリとは「謎解き」の面白さを追求した物語だ。そして、これまた極端なことを言ってしまえば、「なぜだろう?」と疑問に思うことがあれば、それらはすべて謎ということもできる。
 とすれば、すべての物語には、何かしらの謎、つまりミステリの要素を含む、とは言えないだろうか。そんな視点で読んでみると、今まで知っていた物語も、また別の顔を見せてくれるかもしれない。


小説新潮編集長 新井久幸

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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