ミステリーという言葉が一般的に使われるようになったのは、いつ頃からだろうか。少し前までは、推理小説、という言い方が一般的だったように思うし、もうちょっと遡ると、それが探偵小説になる。おそらく、扱うテーマやフィールドの広がりと共に、呼び名も変わっていったのだろう。犯人や不可解な状況について推理していく、という言い方では説明し切れない物語が増えてきたのだ。
もっとも、どんなエンターテインメントも、多かれ少なかれミステリの要素はあり、何かしらの「謎」が物語を牽引する力になっている。恋愛小説だって、人の心のミステリアスな部分についての物語と言うこともできる。
乱暴を承知で言えば、「なぜ?」と思うような要素が少しでも入っていれば、それは広義の「ミステリ的」な小説とは言えないだろうか。
今回の特集では、広義なものから狭義なものまで、様々な形のミステリをお届けする。
小説新潮編集長 新井久幸