
昨年、世界遺産に登録されたレーティッシュ鉄道のベル二ナ線、アルブラ線。鉄道の世界遺産は世界に三つしかなく、もう二つはオーストラリアとインド(意外!)にあるそうです。鉄道ファン垂涎のこの鉄道取材から、いくつかこぼれ話をご紹介します。
●雷神さま
「旅」編集部のカメラマンSくんは、自他共に認める強力な「雨男」。過去には20年間雨の降らなかったドバイに雨を降らせた実績もあります。昨年の秋、アルザスの葡萄畑を撮影しに行ったときも見事、雨を降らせ、地元の人に「このところ雨が降らなくて困ってたんだよ。どうもありがとう」と感謝されたとか。当然今回もやってくれるとは思っていました。しかし、雨ばかりか雷まで落としてくれるとは! これで「雨男」から一気に「雷神さま」に昇格です。
彼の“力”は旅のしょっぱなに発揮されました。成田から飛行機に乗って十数時間、ようやくチューリヒ空港到着、とおもいきや、空港のすぐそばまで飛んできたところでなんと、集中豪雨にみまわれました。飛行機は空港の上空をむなしく旋回。同行してくださった
スイス政府観光局の作永さんに「うちのSのせいです。すみません」と謝る私。そうこうしていると、目の前がぴかっと光った!にしては、何の衝撃もありません。近くで雷が落ちたのかなあ、なんてのんきにおもってました。が、じっさいには私たちの乗っていた飛行機そのものに雷が落ちていたことが後ほど判明。ぞっとしました。でも飛行機って雷が落ちても大丈夫なようにできているそうです。
けっきょく飛行機はチューリヒ空港に降りることができず、バーゼル空港へ。バーゼル空港では機体の計器点検の必要もあり、バスでチューリヒ空港へ向かうことになりました。その日のうちになんとか目的地だったクールにはたどり着けましたが、ほとんど終電まぢかでした。
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そんなSくんですから、いつも撮影時にはお天気に恵まれず、悲しいおもいをしてきました。今回は最初に派手にやらかしてくれたおかげか、わりと好天続きでしたが、116~117ページのラーゴ・ビアンコを撮影するためには、やっぱり雨男、3回同じ場所へ行かなくてはなりませんでした。左写真はその時のSくんの様子です。雪の残る急斜面を上り下りしながら撮影スポットを探すSくん。その後方の赤いジャケットは、スイス政府観光局のスーパーウーマン(フルマラソンランナーでもあります!)の押尾さんです。 |
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元気な女子に囲まれていたせいか、今回のSくんはアウトドア系な取材も多いなか、本当によくがんばりました。最終日は朦朧としてほとんど目の焦点が合ってなくて、夕飯の途中から眠りこけておりましたっけ。その成果はこちら(左写真)。素晴らしい写真ですので、本誌でゆっくりご鑑賞ください。 |
●ちび鉄と鉄子
私自身もともと特に鉄道が好き、というわけではありませんが、今回は鉄道取材ということもあり、弊社で「日本鉄道旅行地図帳」を手がけた“生まれる前から鉄”の編集者Tさんにお話を聞き、にわか鉄子気分でスイスへ飛びました。日本ではどうもこのごろ、ようやく日の目をようになってきた“鉄の世界”。スイスでも、こんな可愛い“ちび鉄”くんを見つけました。
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クールの駅で、いまかいまかとレーティッシュ鉄道の入線を待つ男の子。男の子の鉄道好きは万国共通なのか? |
ところでスイスでは、日本の鉄子にも遭遇しました。ポントレジーナという駅で乗り換えるため、列車を待っていたときのこと。停車していた列車がなんともアンティークで、色といいロゴのデザインといい、かわいらしい。にわか鉄子の私がばしゃばしゃシャッターを切っていると、その脇でやはりシャッターを切る音が。
……日本人女性でした。「この列車って、特別なんですか?」と訊ねてみたところ、「そうですよ。**年前の△△△ってモデルの復刻版です(すみません、覚えられなかった、、、)。すごく貴重な車両なんです」と即答されました。そう答えつつもファインダーから目を離そうとしない彼女。ほとんどわき目もふらず、ヨンさまおっかけのおばさまたちのような勢いです。その姿には、にわか鉄子の私などとは年季の違う、深遠なものを感じました。
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レトロなデザインの |
鉄道ネタのおまけで、「自転車専用車両」の内側から撮影した写真をアップしておきます。この車両、けっして居心地が悪いわけではありませんが、窓の近くに吊るされた自転車と一緒に揺られていると、なぜか「ドナドナドーナード~ナ~」という悲しいメロディを口ずさみたくなってしまうのでした。
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自転車車両に乗って窓から外を見ると、 |
●小さなアート発見
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126ページで紹介している |
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元オーナーさんとカリジェが仲良しだったそう。本誌には載せられなかったけれど、ホテル内のレストランのメニューの表紙もカリジェだし、レストランにはいろいろなリトグラフが掛けられています。そして、子供用の「すごろく」のようなものも見つけました。これ、塗り絵にもなりそうです。 |
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同じくクールの教会では、ジャコメッティのステンドグラスを見つけました。ジャコメッティといっても、あの、針金のような人体像を得意とした芸術家ではなく、そのお父さんの従兄、アウグスト・ジャコメッティの作品です。アウグストの作品は日本ではほとんど紹介されていないけれど、スイス近代絵画史ではかなり重要な位置を占める人です。彼の作品はスイス印象派なんて呼ばれてます。ほかにもスイスのいくつかの教会の壁画やステンドグラスを手がけているそうです。 |
そして、その「ジャコおじさん」と同時代に活躍したのが、セガンティーニ。光にあふれているのに、胸がキュンとしめつけられるような、メランコリックな画風。私はそんな彼の作品が大好きなのですが、今回、サン・モリッツで見た代表作をとおして、その画面にひそむ光の秘密をかいま見た気がしました。セガンティーニは絵の具を混ぜない。点描というよりも、細い線を塗り重ねることで画面をつくってゆきます。巨大な絵画に近寄ってみると、その線がよく見えてくるのですが、塗り重ねられた絵の具のデコボコが、まるでモザイクのように、周囲の光を乱反射していたのです。「そうかー、絵の具がモザイクみたいになっているから、彼の絵はじっさいに、光を放っているんだ!」というのが、私の大発見。もしかしたら美術史家の方々の間では常識なのかもしれませんが、それを実物に触れることで発見できた(つもりになった)のは、旅人としては嬉しい。印刷物や映像からは、なかなか実感しにくいことですから。こんな小さな発見がいくつもあるから、旅はやめられません。
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セガンティーニの絵画のディテールを |
(By こぐま)
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