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ソウルから車で2、3時間、 |
中学の歴史の授業で、火薬、羅針盤、活版印刷術を称して世界三大発明と教えられた記憶がある。このうち活版印刷を発明したのは、ドイツのグーテンベルクであることは、教科書的常識だろう。しかし、今回、韓国の忠清道を取材旅行して回って、それが事実ではないことを知った。
金属活字を使ったグーテンベルクによる聖書刊行は1455年だが、それを80年ほど遡った1377年に、韓国の清州にあった興徳寺で、すでに金属活字印刷が行われていたという。
それを証明するためつくられたのが、韓国・忠清北道の中心都市の清州にある古印刷博物館だ。
興徳寺の跡地に建てられたというその博物館を訪ねると、世界最古の金属活字本とされる「白雲和尚仏祖直指心体要節」(一般に「直指」と呼ぶ)がつくられた工房が、精巧な立体模型などで再現されていた。このほか、さまざまな資料の展示を通して鋳造方法が詳しく分かるようになっている。
14世紀の韓国は、高麗王朝の末期。後を継いだ朝鮮王朝が儒教を国教としたのに対し、高麗は仏教を国の根本に置いた国。僧侶は当時最高の知識階級であり、寺院で金属活字のような高度なテクノロジーが発達したのは、納得がゆく。
実際、2001年には、この「直指」、ユネスコ世界記録遺産にも登録されており、その正統性が認められた格好だ。なんでも、ドイツのグーテンベルク博物館でも、その発明に先行するものとして、「直指」が紹介されているらしい。
おそらく、この「直指」は、韓国の教科書に載っていて、わが国の教科書には載らない、歴史的事実のひとつ、だろう。
この韓国の至宝というべき「直指」であるが、残念ながら、その実物の金属活字本は、韓国国内に存在しない。
朝鮮王朝時代の末、フランスの初代代理公使だったコラン・ド・プランシーが収集した後帰国、1911年に競売でアンリ・ヴェヴェルなる人物の所有するところとなる。
19世紀~20世紀初頭において欧米列強の略奪の場となったアジア。大英博物館をみても分かるように、彫刻品などすぐに価値の分かるものは、英国人の独壇場。一方、古書のようなマニアックなアイテムとなると、やっぱり、フランス人の出番という気がする。
彼の死後、遺言により、1952年、「直指」は、フランス国立図書館に寄贈された。1972年、「世界図書の年」の記念行事である「本の歴史」に展示されていたのを、偶然、韓国の学者の李相国氏が目にし、初めて、韓国内で「直指」の存在が知られるようになった。
数奇な運命を辿って、復活した世界最古の金属活字本は、韓国内に存在しないが、1400年代に印刷された本は相当数、残っている。
この時代、知識階級の中心は、僧侶から両班へと移り、印刷される対象も、仏典から、儒教に関する書物へと変化してゆく。あの偉大な世宗大王は、ハングル活字の鋳造も行い、儒学だけではなく、医学、農業、天文地理など実学の書物も刊行した。
こと印刷術に関する限り、欧州のルネサンスより、東アジアの方が、よほど進んでいたことを、この博物館の展示は教えてくれる。
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◆清州古印刷博物館 |
(by YAO)


