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編集者のことば

画家たちの「戦争」

 二〇〇六年三月、東京国立近代美術館で幕をあけた「生誕120年 藤田嗣治展 パリを魅了した異邦人」は、国立機関が主催する藤田回顧展としては不満の残るものだったが、そこに展示された藤田の「戦争画」五点の細密描写による大画面には圧倒された。

 藤田は「美術」第四号(昭和十九年五月三日発行)に「戦争画制作の要点」を寄せているが、「戦争画を描く第一の要件は、作家そのものに忠誠の精神が漲つて居らなくてはならぬ。」とし、「次には戦争についての体験又は知識を豊かならしめる事が第二の要件である。戦争画の場面に於て、風土、時刻距離、風速、温度、乾湿の度合、其の現場の特徴、更に其の戦争に参加した軍隊の作戦、服装、兵具等、総て正確に如実に資料を集め、軍部又は技術者の指導を受けねばならぬ。(中略)現下の戦争画は全く苛烈なる凄い相を描写し、又は皇軍が窮地に陥つたり、或は悪戦苦闘の状況をも絵画に写して、猶皇軍の神々しき姿を描き現さねばならぬ。」と書く。
 回顧展に出品された〈アッツ島玉砕〉および〈神兵の救出到る〉(共に本書収録)の迫力ある画面は、藤田がここで宣言していることをうなずかせた。一方、戦意高揚に力をかしたことからくる一種の暗いイメージが「戦争画」につきまとい、今だにタブー視されていることがある。
 戦後六十五年がたち、戦争を体験した世代が少なくなりつつある現在、本書は素直な眼で「戦争画」を鑑賞していただき、「戦争画」とは何だったのかを考えていただく機会をつくりたいと、企画されたものです。本当は図版写真ではなく、実物を鑑賞していただきたい思いが強い。一九七〇年に「無期限貸与作品」として「戦争画」群を受領し、所蔵する東京国立近代美術館は、常設展示の一部分で数点ずつの展示はするものの、一括展示の企画をはたさないまま四十年の月日をおくってきた。一日も早く一括展示が企画され、国民一人ひとりが「戦争画」について考えられる機会がきてほしい。

2010/07

[特別対談]中谷美紀×赤木明登
「つくること、演じること」
 中谷美紀+赤木明登
「波」2011年7月号より

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