「古着屋総兵衛影始末」あらすじ/人物紹介
慶長八年(一六〇三)。徳川家康は、普請中の新都市「江戸」に紛れ込む犯罪者、無法者たちの取締りを鳶沢成元に命じた。かつて関ヶ原に西方で参戦後、浪人となり、夜盗の首魁として悪名を馳せていた成元だが、本多正純に捕縛され、命との交換条件として、そう命じられたのであった。家康の期待に応え夜盗を十日のうちに一掃する。そして家康は、成元に古着屋を扱う権利を与えた。これには、古着商いによって生じる流通網、情報力を駆使して江戸城内外の風聞を集め、それを政治運営に利用しようとする目的があった。
元和二年(一六一六)四月二日の夜。大御所・徳川家康は死の床で、大黒屋総兵衛となっていた成元を呼び寄せる。家康は総兵衛に久能山に用意されている霊廟の裏手に鳶沢一族の隠れ里をつくり、独自の兵力を養うように告げた。鳶沢一族に、「神廟衛士」として江戸の東の防備を固めるとともに、徳川家存亡のときには、江戸にはせ参じ本家大黒屋とともに危難に立ち向かう「影の旗本」として生きていくことを命じたのである。
家康は、総兵衛に一通の書付けを渡し、
「今一通の書付けは本多正純に預けておく。二つの書付けにはわしの花押が割印となっておる。総兵衛、そなたが死ぬとき、総兵衛を世襲する者のみに渡せ。正純に預けたもう一通も正純が信頼する譜代の臣へ受け渡される。そうやって、秘密を継承していくことになる。時いたらば相協力して働け。そなたらは、この家康の直属の臣下じゃ。わしの命ずること、分かったな」
と言い、形見として茎に葵の紋を改刻した太刀「三池典太光世(みいけでんたみつよ)」通称、葵典太を与えたのだった──。

かくして江戸の古着屋の大店にして、影の旗本、鳶沢一族の物語が始まる。
鳶沢総兵衛勝頼 六代目大黒屋総兵衛 鳶沢一族の頭領 祖伝夢想流
笠蔵 大黒屋大番頭 薬調合の達人
信之助 大黒屋一番番頭 次郎兵衛の次男 槍の名手
藤助 大黒屋臨時二番番頭 二千両の金を京に運ぶ途中消息を絶つ
国次 大黒屋三番番頭 祖伝夢想流の遣い手
又三郎 大黒屋四番番頭 変幻自在の身のこなし異名風神
磯松 大黒屋手代 優男だが、小太刀の遣い手
稲平 大黒屋手代 連絡役として活躍
駒吉 大黒屋小僧 自在に縄を扱う別名綾縄小僧。
おきぬ 大黒屋女中 浮世絵おきぬと謳われる美人
作次郎 大黒屋荷運び頭 大力の戦闘部隊の中核
そめ 大黒屋の担ぎ商い 富沢町の青空市で遺体となって見つかる
おてつ 大黒屋の担ぎ商い 情報収集担当
秀三 大黒屋の担ぎ商い 一見呆けた大男だが冷徹な観察眼の持ち主
鳶沢次郎兵衛 鳶沢分家当主 鳶沢一族長老。
勘三郎 鳶沢村名主
澄水尼 月窓院庵主
忠太郎 次郎兵衛の長男 後に大黒丸主船頭
栄太郎 大黒屋二番番頭 算盤の栄太郎と呼ばれる程数字に強いが、病気療養中
るり 忠太郎の娘
栄次 駒吉の弟
芳次 駒吉の従弟
他に光吉郎 重次郎 又兵衛 壱蔵 峰太郎など
千鶴 船宿「幾とせ」の一人娘。十八歳。十一歳上の総兵衛を慕う。
本庄伊豆守勝寛 大目付 前の京町奉行。
松前伊豆守嘉広 南町奉行
房州屋竹松 木更津湊の十手持ち
本多弥八郎正純
井伊掃部頭直該
土屋相模守政直
……
柳沢出羽守保明 将軍綱吉の御側用人 老中上座 川越藩主。
お歌の方 柳沢保明の愛妾
(柳沢の家臣)隆円寺真悟 浪人・川越忍び軍団「道三組」首領
(柳沢の手下)保田越前守宗易 北町奉行
(保田の手下)犬沼勘解由 北町奉行所筆頭与力
(犬沼の手下)遠野鉄五郎 北町定廻同心。執拗に大黒屋を狙う。
(遠野の手下)半鐘下の鶴吉 遠野鉄五郎配下の岡っ引き。
江川屋彦左衛門 富沢町惣代の地位を大黒屋から奪う
(江川屋の手下)儀平 江川屋番頭
(江川屋が利用)閻魔の伴太夫 大黒屋に遺恨を持つやくざ
奥村皓之丞 鹿島新当流
堀内伝蔵 鹿島新当流
諸葉一伝斎 小野派一刀流
添田刃九郎 労咳の刺客 独創の暗殺剣
新堂鬼八郎 天流
柳生宗秋 柳生念願寺一統首領
伊達村兼光 馬庭念流道場師範
小暮蜉太郎 十智流の老剣客
大曲刑部左衛門 丹石流
柳沢幻斎 武川風布七人衆頭領

対立が激化する綱吉と光圀。裏にはある僧の影が……。新潮文庫百年特別書き下ろし作品。
光圀―古着屋総兵衛 初傳―

ISBN:978-4-10-138034-6/整理番号:さ-73-0/発売日/2015/04/01
737円 

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総兵衛は稀代の絵師喜多川歌麿が極秘裏に描く禁制に触れる一枚絵を追うのだが……。
たそがれ歌麿―新・古着屋総兵衛 第九巻―

ISBN:978-4-10-138054-4/整理番号:さ-73-20/発売日:2014/12/01
円 


帰還―古着屋総兵衛影始末 第十一巻―
ISBN:978-4-10-138045-2/整理番号:さ-73-11/発売日:2011/09/01
781円 

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佐伯泰英 児玉清[特別対談]
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