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毎日何千何万冊もの本に囲まれ、古今東西の物語を嗜む――私たちに一番身近な読書のプロフェッショナルといえば書店員さん! そんな書店員さんに、『青読』の創作秘話からウェブでしか聞けないような桜庭一樹氏の正体まで、色んな質問を寄せていただきました。
独特な文体のヒミツとは?
本屋さんにはどのくらい行くの?
過去と未来、どっちが好き?
「物語」の反対語は?
少年と少女の違いは何?
自分の本は、書店のどのコーナーに置いてほしい?
無人島に行くとしたら……?
本屋に欲しい新しいサービスって?
禁断の貸し本屋は実在したの?
『青読』のストーリーやキャラクターの誕生秘話とは?
登場人物の名前は、どうやって決めるの?
烏丸紅子の臭いって?
学生に読んで欲しい本はある?
アイディアが浮かぶ瞬間って?
桜庭さんはどんな少女だったの?
本を書き始めたのはいつ?
物語に登場する苺の香水のモチーフってあるの?
「哲学的福音南瓜書」は創作なの?
「桜庭一樹」は本名なの?
青年のための読書クラブのモデルはあるの?
人生を変えた本はある?
『慣習と振る舞い』は本物の珈琲店?
ビリーズブートキャンプについてどう思う?
最後に著者より
桜庭先生の作品には、“かんばせ”という、普段は耳にしない言葉が出てきますが、何かこだわりなどを、持っていらっしゃるんでしょうか? (ちなみに、私はこの表現好きです。)
有隣堂厚木店 岩堀華江氏
昔の小説をよく読むので、古い言葉遣いが自然に口からも出てきます。「よしんば~だとしても」とか「そんな大仰な」とか「茫漠としてるね」とか。日常会話で使わない言葉は、じつは紙の上でしか知らず、耳で聞いたことがないせいで、発音をまちがえていたりします。大人になるまでずっと「こっけい」という言葉を、「こっけい↓」という発音でなく、こう、なに、あのほら、鳥の「うこっけい」と同じ「こっ↑けい」と間違えて発音し続けていました。ある日、「君、訛ってるよ」と注意されました。訛りじゃない。
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プライベートでは書店に行かれますか?
有隣堂厚木店 岩堀華江氏
ほぼ毎日、夕方四時から五時ぐらいまではどこかの書店にいます。ときどき書店員さんに発見(?)されます。
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今回の作品は、過去から近々の未来までが舞台となっていますが、普段、過去(歴史)を読み解くこと、未来(将来)を想像すること、どちらに魅力を感じますか? またはお好きですか?
リブロ渋谷店 幸恵子氏
過去は現在の自分や、自分を取り巻く社会と繋がっていて、未来もまた同様で、どちらも同じ一つの川のようなものだと考えています。過去だけ、未来だけでなく、わたしたちを包んで運んでいく時間として、どちらも書いていきたいなー、と思っています。
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「物語」の反対語はなんだと思われますか?
リブロ渋谷店 幸恵子氏
「死!」と閃いたけど、どうしてなのかはよくわからない……。
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少年と少女、その性質の違いは何だと思われますか?
リブロ渋谷店 幸恵子氏
少年は、大人になる。(by銀河鉄道999)
少女は完成形。でも上から大人スーツ(byハチクロ)をもこもこ着れば、たぶん無問題。
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桜庭氏は著書を書店のどの位置において欲しいでしょうか?
これは書店員として悩みどころです。ミステリーの棚に入れるべきか、でも一口にミステリーとは言えない気がするし……、女性作家の並びか? それも違う気がする。(下手すると男性作家のコーナーにおいてたりする人もいますし……)かといって、ライトノベルや、ティーンズ文庫の棚には四六版は入らない……。と日々格闘しています。
もし、「ここがいい!」という場所があればぜひ教えてください。
リブロエキュート大宮店&大泉店 後藤夫妻
わたしも! わたしも、書店に入るたびに自分の本を探します! うろうろ、うろうろ、うろうろ、うろうろうろ……。男性作家のコーナーにあると、涙が! 国内ミステリの棚は、広義のエンターテイメント作品が置かれている気がするので(SFとかもおいてあるし)、ここにおいていただいてよいかなーと思います。でも、ミステリ棚の前にあまりいかない女の人もいるかもしれないし(ミステリ棚の前は男性客のほうが多い気が。気のせい?)、うーん、できたら……りょ、両方にいれたらうれしいなー……えへ。
文庫の棚では、かさばってしまいすみません……。空いてるところがあったら(棚のいちばん上の、はみだしても大丈夫なところとか?)おいてやってください……。
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ベタな質問で恐縮ですが、無人島に行くとしたら、何を持っていきますか? 本に限りません。
三省堂書店そごう千葉店 内田剛氏
『百年の孤独』と、鏡。
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書店員として質問です。
本屋にあったらいいサービスって何でしょうか?
三省堂書店そごう千葉店 内田剛氏
平棚の展開やPOPを見て、知らなかった本と出会うことが多いので、大いに頼りにしております。あとは……大きな本屋さんには、品揃えが豊富で探し物がばっちりみつかることを期待しつつ、最寄駅のちいさな本屋さんになら、たとえばレジの横にちょっとしたカウンターがあって、
常連客「マスター、いつもの!」
書店員「はい(と、定期購読してる雑誌を渡す)」
とか、
常連客「マスター、失恋しちゃったよ!」
書店員「そんなときには、コレ。『青年のための読書クラブ』。失恋なんてへいちゃらになる素敵な本さ(と、ウインク)」
こういう、失恋レストラン的な面があるとうれしいです。(けど、そんな暇ないですよね……。これは妄想ということで……)
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第2章で出て来た「禁書貸し本屋」は現実に存在したのでしょうか? また、大変失礼ですが、もし現実に存在するのであればその事について詳細に書かれている書籍があれば、ご紹介頂ければ幸いです。
オリオン書房ノルテ店 白川浩介氏
「禁書専門の貸本屋」はわたしの創作です。ルイ王朝の頃の禁書流通については『禁じられたベストセラー 革命前のフランス人は何を読んでいたか』(ロバート・ダーントン)を参考にしました。読書クラブについては、『読書の首都パリ』(宮下志朗)で勉強しました。ロマンス小説専門の貸本屋は実際にあったらしく、『ボヴァリー夫人』が作中で読みふけってたのがそれらしいです……。この「禁書」+「読書クラブ」+「現代日本の漫画喫茶」のイメージで、禁書専門店「哲学的福音南瓜」の全貌を創作しました。それから『本の都市リヨン』(宮下志朗)という、ルネサンス期に出版業界の黄金都市として栄えたものの、百年後には誰もいなくなってしまったリヨンの盛衰史を描いたノンフィクションを読み、この影響もあって「読書を巡る箱庭都市の百年盛衰」というテーマを思いつきました。
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一つの学園のクラブ活動の「裏日誌」で、学園の封印された歴史が明らかになるという発想だけでゴハン三杯はいけるぐらいしびれましたが、その骨格に則って生み出される個々のストーリーの奇抜さにもっと痺れました。読み終わった後から、「読書クラブ」という「箱」が無ければこの物語は成立しない事に気づきましたが、読んでいる時は「箱」が想像力の邪魔になりはしないかなどと余計な心配をしたのです(完全な杞憂でしたが)。そこで、抽象的な質問で恐縮ですが、登場人物の個々のキャラクターや場面は最初から設定されていたのでしょうか? それとも物語る上で自然と決まってきたのでしょうか?(誰が日記を書いていたのかが最後に分かるという仕掛けを考えると大変な愚問をしている様な気も致しますが)
オリオン書房ノルテ店 白川浩介氏
「烏丸紅子恋愛事件」を書きながらとつぜん生まれた設定で、これにあわせてつぎの話、つぎの話と考えていきました。場面もキャラクターも最初の時点には五里霧中!! でした。どこに行くのかわからず、書きながら、百年、パリ、美青年、選挙、ロック・スター、中野ブロードウェイ、とすこしずつ構成要素が集まってきました。
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これ以外はありえないというくらい登場人物たちの名前がドンピシャでしたが、どうやって決められたのですか?
紀伊國屋書店新宿本店 平野千恵子氏
ストーリィは頭の中で決まっていても、原稿を書き始める瞬間まで名前はついてないことが多いです。書きながら、脊髄反射的にポンッとつけます。でも、後から違うと思って変更することも……。今回はある人物に「古寺日の出」とつけてたのですが、なんだか奇妙な違和感が。アッ、響きがちょっと「古川日出男」さんに似てない? と思って、途中で別の名に変えました。それが誰かは、内緒……と思ったけど、気になると思うので、書くと、文学論議の空中楼閣青年・メガネの加藤凛子サンです。
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お嬢さま方が感じられた烏丸紅子の異臭とはずばりどんな臭いですか? やっぱりアジの開きとかたこ焼き?
紀伊國屋書店新宿本店 平野千恵子氏
都心のミッション・スクールに潜入取材したとき、本物のお嬢様世界に紛れこんだ自分から、煙が立つような、猛烈な異臭を感じた(イメージは、日本海の磯の臭い)。これが強烈なイメージになって生まれた設定で、日本海を道頓堀におきかえたときに、たぶん、どぶ川、どろソース、鴉が集まる電柱、安香水などに変換されたと思います。
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「朝の読書会」などが多く行われているそうですが、学生に読んで欲しい(学生のうちに読んで欲しい!)という本ががあれば教えてください。
またその本にちなんだエピソードやオススメポイントなどあれば一緒に教えてください。
青山ブックセンター 小川紘枝氏
読書会で桜庭さんの本を読んだ、というお手紙をよく中学生の子からもらいます。図書館で借りたり、お母さんと本屋さんに行って一緒に選んだりしてくれてるようです。なので、自分の本も読んでほしい、が……あとは、自分の中高生の頃を思い出すと、あの年代には大人とはちがう集中力があった気がするので、仕事や受験勉強で忙しくなったらなかなか読めない大作を、若いうちにたくさん読んでほしいなぁと思います。わたしが、あの頃読んでよかったーと思うのは、『百年の孤独』とか『赤と黒』で、逆に、もー、時間があったんだから読んでおけばよかったのにー、と残念なのは『失われた時をもとめて』とか『人間喜劇』です。
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創作のインスピレーションはいつ浮かぶことが多いですか?(散歩中など)
青山ブックセンター 小川紘枝氏
電車を降りた瞬間。飲んだ帰りのタクシー。寝ようと思って電気消して寝転がって五分後。とかが多いです。メモとペンを常備!
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中学、高校時代はどんな少女で、どんな本を読まれたのですか?
ブックファースト渋谷店 諏訪原氏
なまけものでした。でも本はよく読みました。雑食で、ミステリ、SF、文学、エンタメとなんでもありでしたが、新刊よりもすこし昔のものが好きでした。お小遣いに限りがあるので、図書館で借りることが多かったです。ガルシア=マルケス、ヘッセ、吉野朔実、サマセット・モーム、神林長平、テネシー・ウイリアムズ、佐々木丸美、内田善美、J・ティプトリー・ジュニア、ウィリアム・アイリッシュ、萩尾望都……。
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いつから本を書き始めたのですか?
ブックファースト渋谷店 諏訪原氏
小学生の頃に、ノートに小説の真似事を書いたりし始めました。筆圧が高いので、書きすぎて右手中指がいまも薬指のほうにぐんにゃり曲がっています。直らない……。
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今作『聖女マリアナ消失事件』より登場する苺の香水はただの香水なのでしょうか? それとも、ある種の秘薬をモチーフとされたのでしょうか?
紀伊國屋書店新宿南店 竹田勇生氏
うわー、いま、部屋の本棚に走っていって探したけれど、探すとなるとみつからなーい……。苺の香水は、大島弓子さんの漫画の影響を受けて出てきたキーワードで、たしか「いちご物語」を読んでなにか考えたんだと思うのですが……。どこに行ったんだ、「いちご物語」。秘薬ではなくてもともとは普通の香水ですが、人の怨念がとりついた魔的な存在、というイメージでした。あと同じ作者の「ヒー・ヒズ・ヒム」という作品に出てくるロック・スター、ピーター・ピンクコートのヒット曲「ラッカー行進曲」(今日の苺はラッカのかおり。シェラック、ラッカラッカ。いまや苺はすごいかがやき。ひとくちかじればWA…O…O…O…N!――という歌)に魅せられて浮かんだものでもあります。
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僕はたった数行の「哲学的福音南瓜書」に大変魅せられているのですが、モデルは存在するのでしょうか? 桜庭さんご本人の創作ならこの書物をもっと読みたく思います。
紀伊國屋書店新宿南店 竹田勇生氏
わたしの創作です。ほんとは「作者不詳」じゃなくて「桜の庭にある一本の樹」という意味のフランス語を著者名にしようか、などと考えてたんですが、やりすぎかなー、と照れてやめました。昔、地下流通していた無神論の本を、もし自分がその頃の地下作家(?)だったらどう書くかなー、と思って書きました。
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こんなに女性的な文章なのに、お名前をみて最初は男性だと思っていました。本名ですか?
三省堂書店神田本店 山口氏
いや、ペンネームです。烏丸紅子、とかと一緒で、なんとなく弾みでつけちゃいました。
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今回の青年のための読書クラブはミーハーな私としては歓声を上げたくなるくらい共感できるものだったのですが、モデルとかはあったりするんでしょうか?
三省堂書店神田本店 山口氏
文芸部や漫研とはすこしちがう、ひたすら読書するだけの部活にしたかったので、ヨーロッパの小説に出てくる紳士の社交クラブのイメージを重ねて、少女だけの「読書クラブ」を創作しました。モデルとはちょっとちがいますが、大人になってから、作家、友達、編集者、書店員さん、営業部の人、読者さんとか、会った人たちと本の話をしているとき、いまは大人で立場もばらばらだけど、みんな「本を読む学生」だったんだなー、と思いました。そのうちに、誰もが読書という四次元ポケットみたいな共通空間を通じて、かつて同じ部室の読書仲間だったような、で、大人になったいまはOGで、たまたま再会した、そんな幻が浮かびました。そういう意味で、本を読む人たちとの繋がりそのものがモデルかもしれません。
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人生を変えた本、もしくは人生の指標の本はなにかありますか?
丸善丸の内本店 本田友紀氏
ヘルマン・ヘッセ『デミアン』。なにもかも奪われて、読む前と読んでからで自分が別の人間になってしまった気がしました。そういうものを、自分もいつか書きたい、と思いました。
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『慣習と振る舞い』のモデルのお店はありますか?
丸善丸の内本店 本田友紀氏
中野ブロードウェイの中にあるとある珈琲店がとっても素敵なお店で、モデルにしました。じつは本書の打ち合わせもわざわざその店でやってました……。
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ビリーズブートキャンプについてどう思われますか?
丸善丸の内本店 本田友紀氏
この本の書き下ろし部分を完成させるために、3月半ばから鳥取の実家に一ヶ月缶詰になり(普段は東京にいます)、4月半ばに完成して帰京しました。すると、女性の担当編集さんがほぼ全員、ビリーズブートキャンプに入隊していました。一ヶ月前まではみんな文学少女だったのに!? 浦島太郎状態で、ビックリしました。ビリーって誰? ちょうど「1、2、3、悠久!」という短編小説を上梓したばかりで、自分ですごくタイトルを気に入っていたのに、ビリーが「1、2、3、ヴィクトリ~!」と叫ぶのとかぶってしまい非常にショックです。
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ご質問くださった書店員さん、読んでくださった方々、ありがとうございました! というわけでみなさん、また放課後の部室でお会いしましょう。合言葉は、えーと、未来に現れる最後の読書クラブ員の名をとって、「1、2、3、永遠!」でどうでしょうか。ではでは。
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