026 名前:名無しのVIP 投稿日:2008/07/28(月) 21:13:38 ID:shinchosha

ワーキングプアヒーロー「マ男」の後日談、第21回掲載!


027 名前:名無しのVIP 投稿日:2008/07/29(火) 14:57:46 ID:shinchosha

NEW ワーキングプアヒーロー「マ男」の後日談、最終回掲載!



その後のエピソード

俺は2chにスレッドを立て、みんなから力を貰った。
最初にスレッドを立てた時は、こんな気持ちになることなんて絶対無い、と思っていたが、人と人の繋がりは不思議なもので、みんなのおかげで、少しずつ俺の気持ちは変わって行ったのだ。
そして結果的に気持ちは覆り、俺は新たなスタート地点に立とうとしていた。(もうスタートしてるけどな)

そんな俺がこれから書くのは、スレッド完結からリーダー就任までのお話。
いわゆる、追加エピソードです。楽しめるかどうかは分からないけど、目を通して貰えるとありがたい。

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2007年12月17日 月曜日

「おはようございます」
スレッドを完結した俺は、いつものように出社した。
この時の俺の気持ち的には、いくらかポジティブで、藤田さんを快く送り出す事もできるようになっていた。
つまり、余裕が出来ていたのだ。

「おはよう、マ男くん」
藤田さんだ。いつも一番最初に挨拶を返してくれるこの人も、今月末で去る。
そう考えると、やはりどこか辛いが・・・。
すると
「マ男さん、今日お昼いいですか」
木村くんだ。
「うん? あぁいいけど」
「どうも」
席に戻る木村くん。

藤田さんが去ると聞いて、生気の抜けていた開発室も、今は活気が戻りつつあるように思えた。
時間がそうさせたのか、俺に余裕が出来たからそう見え始めただけなのか・・・。
「おい、藤田、お前ホントにやめんのか?」
「・・・えぇ、申し訳ありません」
藤田さんは、まだ過去を断ち切れてないのかもしれん。それを断ち切るために、転職するのだろうか。



「ったくよぉ~。話が急すぎるぞ、お前。お前が抜けてから、この先の仕事、どう割り振れば良いんだよ」
「えぇ・・・。ですが、大丈夫だと思いますよ。後任はすでに社長に伝えていますし」
「あぁ? お前と肩を並べる奴なんかどこにも居ないだろうが」
すいません、私ということになっています。どうみても力不足です、すいません。
「いえ、私と比較してみても、後任の人の方が上だと思いますよ。
 今は劣っていたしても、将来的に見れば確実に私よりも上になります」
「んなこたーどうでもいいんだよ!!」
なら最初から話に出すなよ・・・
「お前が抜けたら、どのぐらいの損失でこのぐらいの人間が、どうのこうの」

この話、毎週やってるんだよ。確かに言いたい事は分かるが、いい加減しつこい。

「マ男さん」
む、木村くんか。
「後任って、誰なんでしょうね。さっきの口ぶりからいくと、僕のような気がするんですけど」
・・・。すまん、木村くん。
「まぁまぁ、リーダー、落ち着いてくださいよ!! 後任なら上原さんが居るでしょww」
「あ! は、は、は、あ、は」
「おい、上原ぁ!!」
また始まった。
「あ、ひ、あ」
「お前、藤田の分も働けよ」
いや、それは無理だ。
「え、あ、む」
「うるせぇ!!! 働けよ、わかったか!!」
すると割り込むように
「リーダー、僕が働きますよ。藤田さんの仕事ぐらい、僕にだって出来ますから」
木村くんが出てきたぞ。
「あぁ? お前じゃ無理だろうが」
「やってみなきゃ分からないじゃないですか。マ男さんの仕事だって僕がこなしたし、不可能とは思いません」
何という自信だ・・・。いや、確かに俺は木村くんのおかげで助かったけどね。
「おい藤田、木村が後任なのか?」
「いえ、違いますよ。マ男くんです」
その瞬間、(゚Д゚)←全員、この顔で見てきた件

・・・。ジロジロ見られる俺。なんなんだ。
分かってるさ、俺が藤田さんに及ばないことぐらい・・・。
実際、そのプレッシャーに耐えかねて、スレまで立てたんだぞ。
みんなの目から
『コイツで出来るのかよ・・・』
というのが感じ取れる。俺だってホントは不安なんです。だから、そんな目で見ないでください・・・。



「なんだ、マ男か」
「マ男くんかよwwwだったらいいやwwww」
「ちぇっ。マ男さんですか」

あれ、何か予想とはずいぶん違う反応だな・・・。
ちなみに、竹中くんは何言ったか覚えてない。

「えぇ、どうです? 信頼できると思いますが」
「いや、仕事面じゃまだまだだな」
「コミュ力も低いですよねwww説得力も無いしwww」
「大体、僕の方が仕事できるじゃないですか」

はいはい、わかったよ・・・。どうせ俺は藤田さんの劣化だよ・・・。

「そういう面は後で付いてきますからね。マ男くんは、努力の才能と決して諦めない強い心を持ってますから。
 将来的には、この二つがどんな点をも凌駕するんですよ。そして、こればかりは中々身に付かない」

反論を唱えた3人が黙り込んだ。俺は当事者なので、どうしていいか分からず勝手にオロオロしてました。

「で、社長は何て言ってんだ?」
「上の役職に付ける、とは言ってましたよ」
リーダーの顔色が青くなった。
「り、リーダーか?」
「さぁ・・・ただ、経験が浅いので、どちらにしろすぐに、という事はないと思いますが」
「なんてこった」←小声
俺もなんてこった、だよ・・・。マジにリーダーになれるのか、俺。
いや、なるつもりではあるが、実際は不安と恐怖が強い。人を扱うなんてこと、俺に出来るのか・・・。



「どちらにしろ、マ男くんは部下よりも、上司の方が向いていると思いますよ。
 人に好かれる何か・・・。それを持ってるでしょうから」
そんなバカな。不用意に持ち上げないでください。俺、プレッシャーに弱いんですよ。
「そりゃ分かるが、いきなりリーダーはねぇだろwwwwwww」
焦りまくっているリーダー。
「なるほど、リーダーになるには、人間性重視か。覚えておこう」
隣で呟く木村くん。
「なぁ、井出! やっぱ、いきなりでリーダーはねぇよな!?」
「ちょ、リーダーwwwさっきから露骨すぎwww」
「お前に言われたらお終いだよ」
笑いに包まれる室内。
「おい、上原ぁ!! 仕事しろ!!」
そして荒れる室内。



とまぁ、こんな事がありつつも、昼休みを迎えたのだ。
木村くんに昼ごはんを誘われていたので、それに付き合うことにする。
「マ男さん、藤田さんの送別会ってしないんです?」
え? 何? 何て言った?
「え?」
「だから、藤田さんの送別会をしないんですか?」
何が? いや、送別会はするつもりというか、絶対にするが・・・。
問題は、なんで木村くんの口から? ということだ。
「もちろんするつもりだよ」
「なんか、不思議そうな顔してますね」
そりゃそうだろ・・・。敵意丸出しの木村くんの口から、送別会とは。
でも、辞めるって言った時、俺の次に突っかかっていったのはこの子だった。
本当は、藤田さんの事を尊敬しているのだ。
「あぁ、ごめん。でも、木村くん・・・以前話してたけど・・・」
「うーん、あれはよく考えたんですけど、マ男さんにさせてもらいますよ」
え、何?

ここまで書いて気付いたが、木村くんと以前話したことって、スレ内で書いてないんだよな。
書いてる時間帯のせいもあったけど、俺と藤田さんに焦点を絞りすぎてました。
ということで、追加エピソードについては、ここで一時停止。
過去にさかのぼり、木村くんと以前話した事について、書こうと思う。



藤田さんが退職宣言をしてから、1週間経つか経たないかの時だ。

俺は精神的に追い込まれ、まさにスレッドタイトルの様相、そのままになっていた。
そんな中だった。俺がスレを立てる前、木村くんと話をする機会があったのだ。

「マ男さん、ご相談があります。応接室に来てもらっていいですか」
「あぁ、いいよ」
とは言ったが・・・そんな余裕はない。藤田さんが去るのだ。
自分の事だけで精一杯だぞ。
いや、それすらも限界を超えつつあった。

だが、後輩だった。先輩としての立場もある。話ぐらいは聞くべきだ。
「・・・じゃ、行こうか」
「すいません、ありがとうございます」
何とも重い足取りで応接室に入った俺と木村くん。

無言。

「・・・藤田さんが、やめるんですよね」
「うん」
「どうして、やめるんでしょうか」
わからない。一身上の都合、と言っていたが・・・。
「せっかく、僕と肩を並べられる人が出てきたと思ったのに、これじゃ、全く意味が無いじゃないですか」
どこまで本気で、どこまで嘘かはわからなかった。
だが、藤田さんが居なくなる。この事については、明らかな拒否反応を示していた。
「木村くん、藤田さんが居なくなったら、どうするつもり?」
俺はやめるつもりだ。
「分かりません。マ男さんは、どうするんですか」
「私も分からないよ。本当に急な話だったから」
「マ男さん」
木村くんが顔をあげ、俺の目を見てきた。



「僕はこれから、誰を目標にすれば良いんですか。
 藤田さんが居なくなってから、僕は誰を目標にすればいいんですか」
目標、と言ったのか。木村くんは、藤田さんを目標として見ていたのか。
「どういう意味?」
「僕は、藤田さんを超えることだけを考えて、今までやって来たんです。
 なのに、それが急に居なくなるんですよ? 僕はこれから、どうすれば良いんですか。
 目標の無い人間なんて、生きている意味が無い。僕はそれと同時に、働く意味だって失う」
木村くんの口調が、少しだけ感情的になっていた。
たぶん、これは本音だ。この子は、体面を考えてあの手この手で真実を隠そうとするが、今回はたぶん本音だ。
「木村くん、社会には凄い人がたくさん居るんだよ。藤田さんだけが、凄い人ってわけじゃないんだよ」
心にも思ってないが、俺は言っていた。たぶん正論だ。
「じゃあ、藤田さんより凄い人を、マ男さんは知ってるんですか。
 僕は知らないですよ。この会社の人間なんて、みんな僕以下だ」
・・・。そりゃどうも・・・。
「僕は、これから誰を目標にすればいいんですか・・・」
「木村くん、それは今すぐに決める事じゃないよ。
 ゆっくりと周囲を見定めて、自分が認める事のできる人を見つけたらいい。
 それでも見つからなかったら、その時にまた考えればいい。焦っても、何もいい事はないよ」
「・・・そうですね、ありがとうございました」
そう言って、応接室を出て行く木村くん。相変わらず、足取りは重かった。

何もしてあげられなかった。いや、当たり前だ。
自分の事ですら、どうにも出来ていない。それなのに、どうして人を助けることが出来るんだ。
俺は、今はとにかく、自分の状況をどうにかするんだ。

この経緯を辿り、俺は藤田さんから退職理由、後任の件について話を聞き、限界を迎えたのだ。

よし、追加エピソードの方に戻るよ。



「え、何て言った?」
さっき、マ男さんとか言わなかったか?
「さっきから人の話聞いてないんですか? マ男さんを目標にするって言ってるんですよ」
マジかよ。
「私を目標にするのは、やめた方が良いとおもうけど・・・」
むしろ、やめてくれ。プレッシャーがかかる。
「いや、他の人はもう相手にもなってないですから。ただ、マ男さんだとすぐに追いつけそうなんですよね。
 だから、こうやって明言して、ハクをつけようと思ったんですけど」
この小僧、中々やりおるではないか。
い、いや、俺の立場から見ると結構イヤだ・・・。木村くんは、本当に追いつきそうだから怖い・・・。
俺はどうすれば・・・。そうだ、藤田さんに、いやいや、もう藤田さんを頼ったらダメだ。
ひとり立ちの時が来ている。こんな小童、俺が本気を出せば
「これから、マ男さんを観察させて貰って、盗める所は盗んでいこうと思いますから」
本気出してもダメかもしれねぇ・・・どうしよう・・・。
「それで、送別会はいつするんですか?」
「うーん・・・。リーダーに相談してみないと分からないけど
 忘年会も近いから、これに合わせる事になるんじゃないかな」
「確かにそうですね。でも、飲み会・・・また荒れそうですね」
「うん、荒れるだろうね」
そして廃人へ・・・編の飲み会や、それまでの飲み会が脳裏をよぎる・・・。
「まぁでも、楽しくやりましょうよ」
「あぁ、そうだね」
そんなこんなで昼飯を食べ終わり、俺たちは会社に戻った。



「リーダー、ちょっと良いですか?」
早速、送別会について提案だ。
「あ?」
「忘年会って、今年はされるんです?」
「やるぞ。藤田の送別会も兼ねてな」
よし。思った通りだ。
「おい、藤田。年末、飲み会やるから出ろよ」
「あぁ、はい」
「次の会社はいつからだ?」
「年始ですね。歓迎会などの予定も聞いていないので、問題ないですよ」
「よし、わかった。おい、井出、メンバーにメール出しとけ」
「りょーかい!! でも俺、忙しいからぁ」
竹中くんの方を向いたぞ。
「竹中くん、君に決めた!!」
ゲッツのポーズを繰り出す井出。ポケモンか何かだろ、それ・・・。知らんけど・・・。
「うーっす」
そしてメールを出す竹中。

今年は社長が仕事だと言う事で、忘年会はチーム別という事になっていた。
最も慣れ親しんだメンバーで、藤田さんを送り出せるという訳だ。

余談になるが、ちゃんと上原さんにもメールを送っていた。ナイスだ、竹中。



12月20日

この前日、つまり19日だ。実はヤフーニュースに俺のスレが取り上げられていた。
たぶん、この日だ。違ってたらごめんね。

俺はそんな事、全く知る由も無い。
そして20日、俺はいつも通りに出社した。

「おはようございます」
挨拶を済まして、自分の席に移動だ。
ふと井出に目をやってみた。ニヤニヤしながら、画面を見ていた。
「ぶふっwこの井出、センスあるなぁwww」
何言ってんだ、コイツ・・・。
「お、マ男くんwwおはようwwww実はさーすんごい面白いの見つけたんだよww」
・・・どうせ、ロクでもないものなんだろ。
「これ見てよ、これwww」
興味が無いので、あーそうですか、的にあしらっておく。
「ねーマ男ちゃん、これ見てってwww」
うるさいな・・・。何がだよ。
画面を見る俺。
うーむ、どっかで見た文章だな。でも、井出が面白いって言ってるものだから、どうせしょうもない物だろう。
「この井出って奴がさぁww」
・・・え? 井出?
「見てよこれwwwセンスバツグンじゃねwwww」
画面に顔を近づけて、確認する俺。


『おい上原ぁ!!』
『は巨人のエース』


俺のスレでした。



そんなバカな。なんでコイツがこのスレを知ってるんだ。
いや、別に知っても良いが、何でコイツが知ってるんだ?←混乱している

「井出さん、これどこで知ったんですか?」
凄く遠まわしに言ったつもりだったが、めちゃストレートだな、これ。
「え、何が? 普通に昨日、ヤフーニュースに載ってたよ」

衝撃の事実が発覚しました。

「あ、そ、そうなんですか」
どーりで、井出が知ってるわけだ。だが、一体いつの間に・・・。
俺はいろんな意味で混乱していた。

ど、どうする俺!? どうなる俺!?
続くぅ!!



まさかスレが完結してからも、これを使う事になるとはな。

「でも、この話ってさー人間関係がウチと似てるんだよねww」
そりゃそうだろう。ウチの会社の事だからな・・・。
「しかし、この井出wwww俺とは親友になれるよwwww」
親友ってか、あんた自身なんですけどね、井出は。
「これ、リーダーにも教えてあげよwww」
なぬ、それはダメだ。落ち着け。
「おはよう」
そして、こんなクソ良いタイミングで来やがるリーダー。
「ちょwリーダーwwww面白いの発見しましたよww」
「あ?」
「これ見てくださいよwww」
リーダーが画面を覗き込む。落ち着け、まだ大丈夫だ。
「文字ばっかじゃねーか」
「いや、これ凄い読みやすいですよwww」
読みやすくないよ、面白くないよ。だから早くどっかに行くんだ。
「うるせぇ、何が楽しくて仕事以外で文字を読まんといけんのだ。そんな暇あったら寝るぞ」
「いやいや、ホントにww」
しつこいぞ、井出。諦めろ。いや、諦めてください。
「うるせぇな~~~。とっとと仕事しろ」
そう言って、買ってきた漫画雑誌を見るリーダー。おめーも漫画じゃなくて、仕事しろよ。
「ちぇー。まぁいいや、俺だけの秘密にしよっとww」
とか言ってた割には、竹中くんにも教えていたんだがな。
しかし、この時ばかりはリーダーがこの性格で良かった、と始めて思ってしまった。

結果的には、井出と竹中だけが知る事になっただけで、俺がマ男だという事はバレなかった。



ある程度は覚悟していたが、あの二人は頭がお天気なんだろう。
まさか、あの話の舞台がこことは思いもしなかった、という事だろうか。

こんな危機的展開(そうでもない?)もありつつ、ついに藤田さんの送別会兼忘年会が行われる事となる。
飲み会は毎回波乱となるが、果たして今回はどうなるのか?

12月28日、ついに運命の日はやってきた。



「よーし、お前ら、大掃除終わったかー?」
今日は仕事は午前中で済ませて、大掃除をすることになっていた。
リーダーはイスをグルグルしながら、全く動かないし
井出は蛍光灯の取替えで
「で、電気がビリビリって来た!!! ってうっそぴょ~~~~~んwww」
とか騒ぎ出す始末で
「ねぇ、びびった?wwびびった?www」
と今年もうざいし
「び、び、び、ん、び」
上原さんのたまりにたまった栄養ドリンクの瓶は物凄い量だし・・・で、毎年恒例のお掃除となったわけだが
「終わりましたよ、リーダー」
「よーし!! お前ら、これから藤田の送別会兼忘年会に繰り出すぞ!」
何とか無事に、飲み会に行くことになったのだ。


飲み屋に到着し、席に案内される俺たち。
「今日は藤田が主役だから、お前真ん中な」
「えぇ、わかりました」
とかやってる内に、もう上原さんは隅っこに座ってるんだけどな。
「おい、上原ぁ!!」
それを見たリーダーが声をあげる。
「おまえ、何勝手に座ってんだ!?」
「あ、は、すす、い、す」
即座に立ち上がり、何故か割り箸を持って揺れる上原さん。落ち着け。
「てめぇ、ふざけんなよ! お前は隅っこだ!」
もう隅っこだよ・・・。

というわけで、席が決まった。
図で表すとこうだ。


上原  俺.藤田.木村
---------------------

---------------------
  リーダー.井出.竹中



木村くんが藤田さんの隣って大丈夫なのか・・・。
というか、リーダーの言ってた藤田さんは真ん中って、上原さん抜きで考えているような・・・。
いや、何でもない。気のせいだ。

「おーし、おまえらメニュー開け! 遠慮すんなよ! ワハハ!」
言っておくが、飲み代は会社の経費からであって、リーダーが金を出すわけではない。
「んじゃーとりあえずー生飲む人ー」
みんなが一斉に手を挙げる。当然、俺も挙げる。あんま好きじゃないけどな。
だが、例の如く上原さんだけが手を挙げていない。
すると当然
「おい、上原ぁ!!!」
こうなる。好きにさせてやればいいだろ・・・。
「は、は、はは」
「お前、何飲むつもりだ。言ってみろ」
「 」「ふざけんじゃねぇ!!」
待て、まだ何も言ってない。
「おい、藤田が転職するんだぞ? お前が飲まなくてどーすんだよ」
「は・・・は・・・」
「よく分かってるじゃねーか。おい、上原、お前ピッチャーな」
え、何? ピッチャー?
「いい、え、いいいい」
「すいませーん」
手を挙げる井出。そしてやって来る店員。
「とりあえずー、ピッチャーを一つとー。生を6杯とー。枝豆を3皿とー」

・・・。

そんなこんなで

「よーし、お前ら! 今年も良く頑張ったな!」
「ちょwwリーダー、ここは藤田さんが挨拶やるべきでしょw」
「バカ野郎! 藤田にやらせたら、神妙な空気になっちまうだろうが」
苦笑する藤田さん。
「それもそうですねwwサーセンwww」
同意するのかよ。
「よし! そんじゃ1年間、おつかれ!! かんぱーい!」
『かんぱーい』
こうして飲み会は始まったのだ。



みんなが思い思いの人と絡み、盛り上がる飲み会(一人除く)
相変わらず、リーダーと井出はうるさい。しかも竹中くんもプラスされているのだ。
この3人が固まると、さながらコントを見てるかのようだ。

「藤田さん、なんで後任がマ男さんなんですか」
出た。予想はしていたが。
「うん? マ男くんだと、納得いかないかな」
「そうじゃないですけど。うーん・・・。マ男さんはどう思ってるんですか」
お、俺か。俺は・・・。
「最初は無理だって思ってたけど、今はそうでもないよ。藤田さんが居なくなる、それは確かに辛い事だけど
 それを乗り越えた先に、何かがあると思うから」
きっとある。考え方も、気持ちも変わったのだ。
「へぇ~。そうですか。なんかマ男さん、人間的に成長しましたよね。
 ちょっと前までは、腑抜けた廃人みたいな感じだったのにw」
そこまで言うか。ちょっとショックだな。
「話変わりますけど、藤田さんから見て、この会社の人達ってどうなんですか」
人物評か。確かに興味がある。
「どうって言われても、やっぱり人にはそれぞれ適性があるよ。万能な人なんて、存在しないと私は思う」
あなたが万能な人だと思うんですけどね。
「でも、竹中さんって何も取り柄が無いじゃないですか」
ちょっと待て、はっきり言いすぎだ。
「彼一人で見たらそうかもしれないね。だけど、井出さんとセットで見ると、どうかな」
「うーん、確かに井出さんって竹中さんが居ないと」
「キムちゃん呼んだー?」
食いついてくる井出。
「呼んでないですよ」
「またまたーwwww俺が恋しくて仕方ないんでしょーw」
「アホじゃないのか」
小声でつぶやいていたつもりかもしれないが、藤田さんを挟んだ俺にも聞こえている。
「ちょまwwwパパwww」
「どーした息子よ!!」
いつの間にか親子らしい。
「あのお兄ちゃんが、僕の悪口言うの!!」
「おい、木村!! おまえフザけるなよ!?」
「フザけてるのは、そっちでしょ」
「ちょwwwリーダーwww修正しないとwww」
「よーし、制裁を加えてやる!!」
そして揉みくちゃにされる木村くん。



「マ男くん、少し横に移動してくれないかな」
「あ、はい。分かりました」
1席ズレる俺と藤田さん。
「こういうのも、今日で最後か」
藤田さんがつぶやいていた。なんか懐かしいような、寂しいような、そんな口調だった。
おっと、そうだ。ここで改めて今までのお礼を言わないと。
「藤田さん」
「うん?」
「あの、今まで何度も助けてくださって、本当にありがとうございました」
「いや、私は何もしていないよw君は自分で立ち上がり、自分で進んできた。それだけの事だろう」
いやいやいや、それは違う。藤田さんが居なければ、俺はここには居なかった。
「いえ、それは違います。私は何度も挫折して、何度も会社をやめようって思いました。
 だけどその度に、藤田さんが居たんです。藤田さんが居たから、ここまで来る事が出来たんですよ」
「ハハハwそうやって改めて言われると、何か照れるな。でも、ありがとう」
これからは、藤田さんが居ない。自分一人でやっていかないといけない。
藤田さんから、卒業する時が来ているのだ。

すると
「マ男さん、藤田さんとばっか話してないで、早く助けてくださいよ!!」
木村くんが助けを求めてきた。
リーダー・井出・竹中が、木村くんの頭をワシャワシャしまくっている。お前らはマドハンドか。
「だーうざいな! はしゃぎすぎですよ!」
「うざいだぁ!? お前、全然懲りてねぇな!!」

その瞬間

「ハックション!!」

上原さんがくしゃみをしたようです。
当然、視線が集まる。

「おい上原ぁ!!!」

出た。



「は、は、はは、ヘクシ!」
「てめぇ、飲んでんだろうな!?」
リーダーが立ち上がり、上原さんの方へと向かう。痛い、足を踏むな。
「おいおい、飲んでねーじゃねーか! ほら、飲め!」
「いいい、の、の、ん、の、んで、の」
「うるせぇ!!! ほら、とっとと飲め」
そう言って、コップを口へと押し付けるリーダー。
「ブッ、ブッベシ!」
くしゃみをする上原さん。飛び散るビール。
「ぶわははははwwwwwビール大爆発wwwww」
「上原ぁ!!!!!!!!!!!」
「すすすすす」
「酢じゃねぇ!!! ビールだ、ボケが!!」
「ぶわはははwwwww」

ごめん、上原さん。俺もちょっと面白かった。ちなみに藤田さんも笑ってました。



こんな事がありつつも・・・何とか無事に飲み会は終わったのだ。
この後、バーに行ったり、カラオケに行ったり、みんな別れを惜しむかのように、朝まで全員一緒だった。
藤田さんが居るメンツでの、最後の飲み会。
みんな口には出さないが、やはりここは意識しているのだ。

そして

「おー朝日が出てきてんなぁ」
「いやー疲れましたねwww」
「久々に騒ぎまくったからな。よし、んじゃーそろそろ解散するか」

解散の時はやってきた。

「おう、藤田。お前とは長い付き合いだったが、次の会社に行っても頑張れよ。
 お前は、どこ行っても通用する人間だし、いちいち言う事でもないと思うがな」
「ハハハwありがとうございます」

「藤田さんwwwなんかお堅い人間って感じで、近寄りがたかったよ!
 次の会社では、もっとスマイルを大事にしてww」
「えぇ、すいません。ありがとうございますw」

「ふふふふ、ふ、じじじ、たさささ」
「? 手紙ですか」
「は、はははは」
「どうも、ありがとうございます。帰り道、読ませて頂きますね」
「はは、は、いは」

「まぁ、今更? 言う事でもないんすけどぉ。ぶっちゃけ、尊敬してました。
 次の会社に行っても、頑張ってくださいっす」
「あぁ、ありがとうw竹中くんも頑張るんだよ」

「藤田さん」
「うん」
「・・・僕は」
「うん」
「自分より上だって思える人間が、今まで居ませんでした。認めたわけじゃないですけど
 藤田さんは、そう思える人だったかもしれません。僕がリーダー補佐になった時、藤田さん言いましたよね」
「うん?」
「・・・君は力はある。だけど、それだけだって。今でも忘れてません。
 だから僕は、それだけじゃない、それ以外のものも身につけて、藤田さんを超えますから」
「あぁ・・・。君は、もっともっと成長する。まだまだ若いんだ。
 今、何故泣いているのか。それが分かった時、君は、また一回り成長すると思うよ」



「藤田さん」
「あぁ」
「今まで、本当にありがとうございました。今日まで、何度も何度も挫折して、その度に手を差し伸べてくれて。
 いくら感謝しても、感謝しきれないです」
「・・・」
「私は、藤田さんから色んな事を学びました。
 人との出会いの大切さ、小さな力が集まって、大きな力となった時の凄さ・・・」

「うん」

「他にも、数え切れない程、多くの事を教わったと思います。
 だからじゃないですけど」

もう俺は、藤田さんが居なくても大丈夫です。
だから

「これからは、藤田さんが居なくても大丈夫なように、頑張っていきます。
 だから、もう私の事は心配しないでください」

「マ男くん、君は本当に大きく成長した。これからも、留まる事なく成長していくだろう。
 その成長を、最後まで見届ける事が出来ないのが残念だが」

出会いあれば、別れあり。大事なのは、それで何を得たかだ。

「君なら、これからどんな事があっても、やって行ける。そんな気がするよ」

「はい、本当にありがとうございます」

こうして俺たちは、藤田さんと別れた。
どこまでも偉大で、どこまでも尊敬できて、どこまでも追いつけない人。
俺にとって、それが藤田さんだった。
袂を分かち、それぞれの道を進んでいく。だけど、この尊敬の気持ちだけは、いつまでも変わらないだろう。
いつまでも、俺の目標。それが、藤田さんだ。



そして、2008年1月7日 月曜日

「というわけで、今年からマ男くんがプロジェクトリーダーだ。みんな、よろしく頼むぞ!」
「へーいwww」
「マジかよ、マジでマ男がリーダーかよ。マジかよ」

俺は、プロジェクトリーダーに就任した。
元リーダーであるリーダーは、ちょっとした廃人状態になっていたが、
しばらくの間、実質、俺はリーダー補佐だ、という事を伝えると
「おうwwwwそうかそうかwwwそりゃそうだなwww」
と、こんな感じに元気になった。

んで、現状としては

「井出さん、テスト完了しました?」
「おー終わってるよwwwどうよwww俺の完璧な仕事はwww」
「今確認したんですけど、バグ表があがってないですね」
「ごめん、それは忘れてたwwww」

「木村くん、ちょっと良いかな」
「何ですか?」
「木村くんの作ったやつのテスト担当者って、竹中くんだよね」
「そうですね」
「悪いんだけど、あれは少し複雑だから、木村くんの方でテストデータを作ってあげてくれない?」
「うーん。そこはやらせないと、いつまで経っても出来ないままだと思いますよ」
「うん。だから、そこらへんの面倒も含めて、かな」
「僕がですか」
「うん」
「・・・。しょうがないな」
「ごめん、頼んだよ」

「以上が、進捗報告です」
「ふむ、なるほど。ところで、お客さんの所での実地テストは誰がやるのかな」
「まだ未決定ですが、リーダーに行って貰おうかと考えています。私では経験不足が目立つかと思いますので」
「だそうだが、リーダーくん、どうかね」
「異存は無いですね。担当者とも顔見知りだし、マ男の提案で良いと思います」
「うむ、わかった。それじゃ、みんな頼んだぞ」
『はい』

こんな感じで、割と上手い具合に・・・



「おい、上原ぁ!!」
「はは、はは」
「お前、前に任せたって言った仕事はどうしたんだよ!?」
「いいい、い、え、い」
「あの、すいません。あれってリーダーの仕事でしょ。上原さんの仕事じゃないですよ」
「うるせぇ、木村! 俺が遅れちまってるから、上原に一部を任せたんだよ」
「うるさいも何も、もう遅延を取り戻したんだから、上原さんに預ける意味が無いじゃないですか」
「あぁ!?」
「ちょっと。少し落ち着いてください」

「マ男は黙ってろ!!」

とまぁ、一回荒れると中々収拾はつかないが・・・何とかやれてる。

藤田さんが居なくなって、確かに辛い事は増えた。だけど、何だか前より、仕事が充実している気がするよ。
これも励ましてくれた、みんなのおかげなんだろうか。
この先、俺には色んな困難が待ち受けていると思う。
だけど、俺はそれを乗り越えて、どこまでも前へと進んで行くつもりだ。

まぁもし、また限界が来たら、みんなの世話になるかもしれないけどなww
その時は、また助けてくれるとありがたい。

あーそうだ。
そういえば、最後のカラオケの時、藤田さんがGLAYの『SPECIAL THANKS』だったかな。これを歌ってたんだよ。
この歌詞で「君といた日々は宝物そのもの」ってのがあったんだ。

ちょっと感動してしまったよ、俺は。
藤田さんと居た日々、もちろんこれも宝物だ。
でもそれ以上に、スレを進行していた日々、これがまさに宝物だったと思う。
あれが無ければ、もう俺は会社には居ないだろうから。

それじゃ、長くなってしまったけど、また縁があったら会おう。
さらば!



『ブラック会社に勤めてるんだが、まだ俺は頑張れるかもしれない』

-完-



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