世界の終わりは君と一緒に、なんてね。

yom yom vol.41

(季刊誌 年4回発売)

特別定価990円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2016/08/01

発売日 2016/08/01
JANコード 4910090190962
価格 特別定価990円(税込)
◆NEW SERIES
朱野帰子「わたし、定時で帰ります。」
絶対に定時で帰りたいOL・東山結衣は、ブラック残業大好き勢力に反旗を翻す! 『駅物語』の著者による痛快お仕事バトルロイヤル。

須賀しのぶ「夏の祈りは」
今年こそは、絶対に甲子園に行け! OB会の悲願と伝統校の重みを双肩に感じ、主将は県大会準決勝に臨んだ。相手は波に乗る「逆転の溝口高校」――。

梶尾真治「Aクライ・プリンセス」
中田栄子、二十歳。近頃珍しい真面目な女の子。しかし彼女には、自らも気づいていない不思議な能力があった――。泥酔型ニューヒロイン、ここに降臨。

◆SPECIAL STORY
読み切り競作 十年交差点
畠中 恵「一つ足りない」
あの禰々子親分が攫われた!? 天敵の猿の陰謀で九州を逃れてきた河童の王、九千坊は救出作戦に向かう。「しゃばけ」スピンオフが始動です!

読み切り競作 十年交差点
原田ひ香「君が忘れたとしても」
結実子47歳独身、もう二度と彼には会えないと思っていた。
ある日、一通の手紙を受け取るまでは――。

万城目 学「当たり屋」
私めが、この神社をお守りする神でございます。どうぞよろしく。昇任が決まり、次の神への〈引き継ぎ〉の最中、鳴るはずのない言霊の音が――。

恒川光太郎「母の肖像」
もう十三年も音信不通の母親が、ぼくを探しているという。何かに依存することしか知らなくて男と薬におぼれたあの人に、ぼくはどうして会おうとするのだろう。

◆SERIES
青柳碧人「ブタカン! 池谷美咲の演劇部日誌 第三幕」[第3回]
新生演劇部(ゲキブ)は文化祭に向けていよいよ始動! のはずが、錦野派がついに離反、まさかの退部宣言。高校最後の夏はどうなっちゃうの!?

浅葉なつ「カカノムモノ」[最終回]
大禍津日神(おおまがつひのかみ)を呑みそこねた碧の体は異形のものへと変容し始めていた。なんとか濁り人の女を発見した碧は、彼女を次の獲物とするのだが……。

蒼月海里「夜と会う。」[第2回]
人の心の闇が異形の者となって襲いかかる〈夜の世界〉。そこで澪音(れいん)の前に現れた謎の組織・〈ノクターン〉は、麻薬のような紛い物の〈夜〉を商品として売りさばいていた。

谷 瑞恵「殻の祭壇」[第2回]
逃げてしまったインコの声を額に飾りたい――。初老の男の突飛な依頼に戸惑う夏樹は、依頼人の本当の望みを知るため鳥探しをすることになり……。

トミヤマユキコ「たすけて! 女子マンガ」[第3回]
女の人生をマンガに教えてもらう本連載。強い女はかっこいいけど、たくましすぎるのも気が引ける……? そんな遠慮はいりません。尋常でない強さをもったマンガの女たちには、案外共感できるところも多いのです。

吉川トリコ「マリー・アントワネットの日記」[第2回]
つ・い・に♡ 夫・王太子殿下とご対面~♪ ……って、あれ? なんか、冷たくね? 会話ほぼなくね? 前途多難な新婚生活。

畑野智美「消えない月」[最終回]
彼女は逃げた。愛を置き去りにした。僕を捨てた。
だから探そう。見つけ出そう。またふたりで愛しあおう――。

岡崎琢磨「春待ち雑貨店ぷらんたん」[第2回]
京都御苑にほど近い小さなハンドメイド雑貨店。そこには、あなたも知らないあなたの涙の理由を探してくれる人がいる……。本格連載開始!

◆COMIC
益田ミリ「マリコ、うまくいくよ」[第9回]
――せめてうそっぽくない人でありたい。

error403「神梅さんが思うに。」[第9回]
気持ちが塞いだら散歩! とはいえ
神梅さんにはこれにも流儀が。

◆ESSAY&COLUMN
押見修造「表紙のBACK STORY」

神田松之丞「嘘と欲」

◆FEATURE
新潮文庫nex二周年
ラインナップ全作品紹介

[対談]知念実希人×美山加恋

『レアリア』の世界

雪乃紗衣「in a blue MOON―レアリア―」
会いたい。知りたい。触れたい。呼ばれたい――。たった一人で生きてきた少年に、初めて生まれた感情。『レアリア』特別読切!

この号の誌面

編集長から

Googleさんは教えてくれないですからね。

 yom yom夏号、まさにお待ちかねの作品が揃って発売です。
 世の中すっかりポケモンGO一色で、私もかなり廃人に近い状態のためネットで攻略法を研究したりするのです。そこではたと気付くのは、ゲームならぬ人生の攻略法とか隠し設定とかはGoogleさんも教えてくれないのだということ。当たり前かもしれませんが。
 一方で、小説はそうした「どうしたらいいのだろう」「何が正解なのだろう」という部分をひたすら行ったり来たりするところが、なんだかいじらしいほど誠実な感じ。
 よく「バーチャルに浸るのではなく現実を見よ」みたいな話があって、個人的には「でもバーチャルが存在すること自体が、私たちの現実だし」と思ったりしつつも、小説の誠実な問いかけに耳を澄ませる時間は何物にも代えがたいと改めて感じる次第です。

 さて、前置きが長くなりました。
 誌面のご紹介は、まず畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズ外伝、「一つ足りない」から。
 本年でシリーズ開始から15年を迎える「しゃばけ」のスピンオフストーリー諸作は、すでに新潮文庫の短編集『えどさがし』に収録されて好評発売中ですが、いよいよ第2弾の準備が始まりました。

 心優しき病弱若だんなの一太郎、最強の兄やコンビ“仁吉&佐助”といったお馴染みの登場人物のみならず、物語中をたまさかのように行き過ぎる人々の味わい深い横顔も「しゃばけ」の魅力。誰にもその人が主役の一生があり、その人だけの物語があるのだと、信じる機会を得られることほど幸せな瞬間はありません。

 今作「一つ足りない」は、天敵の猿の陰謀で窮地に陥った九州の河童の王・九千坊が、「太郎君、東へ」(『えどさがし』所収)にも登場した東の河童の大親分・禰々子(ねねこ)の元へと向かいます。西の王と東の親分、はたして平和に出会えるのか――。
 実はこの作品、2月発売の冬号から始まった競作企画「十年交差点」の一作という位置づけでもご執筆いただきました。以下は畠中さんのコメントです。

〈「10年」をテーマにした作品を、書きませんかという提案を頂きました。
 10がキーとなるお話の筈でしたが、何故だか主人公は、9の字を名に持つ“九千坊”となりました。
 何故“10”ではなくて“9”なのか。九千坊のぼやきと共に転がっていく物語を、どうぞ楽しんで下さい〉

十年交差点』は、新潮文庫nex2周年記念アンソロジーとして8月28日(日)に文庫化発売されます。畠中さんの「一つ足りない」、同じく夏号掲載の原田ひ香さん「君が忘れたとしても」のほか、中田永一/白河三兎/岡崎琢磨の各氏(いずれも本誌掲載)が競演する豪華な一冊を、ぜひ文庫版でもお楽しみください。

 新連載3作もお見逃しなく。
 新人駅員と個性的な同僚たちのまっすぐな奮闘を描いた感動作『駅物語』がベストセラーとなった朱野帰子(あけの・かえるこ)さんは、「わたし、定時で帰ります。」を執筆開始。誕生日だから休んだと悪びれない新人に、皆勤自慢の中堅が激怒、傍らには「俺がなんとかする」と悲壮な決意をホイホイするから逆に迷惑なリーダーがいて……。
 本作は、無謀なプロジェクトに突入した職場を“絶対に定時で帰りたい”OLが頑張って立て直そうとする物語。いるいるいるよねそういう社員、と笑いつつも密かに私が青ざめるのは、ダメ同僚たちのダメポイントが確実に我が身の中にもあるからで、イタくて痛快なお仕事小説です。
 
 須賀しのぶさんの「夏の祈りは」は、公立の強豪として悲願の甲子園を目指す高校野球部を連作形式で描く青春小説。かつて甲子園一歩手前で涙をのんだチームの主将がやがて同じ高校の指導者として返り咲き、再び悲願の成就に挑むというのが、作品の大まかな構想だそうです。まさに人生のほろ苦さと祈りを宿した物語と言えましょう。
 スコアブック片手に、プロのみならず高校・大学・社会人の地方大会まで観戦してきた須賀さんですから、誰にも真似できないドラマが展開されること間違いなしです。

 さらに梶尾真治さん「Aクライ・プリンセス」は、プチ超能力を持った〈泥酔型ヒロイン〉の物語。泥酔型って何でしょう? お酒で気が大きくなってなんでもやっちゃう……わけではありません。真相は誌面でお楽しみいただくとして、ヒロインと彼女を囲む人々の素朴な(そしてユーモラスな)毎日と、超能力という非日常のマッチングが素敵です。
 梶尾さんの「エマノン」シリーズ、中学生の頃から大好きでした。いつかエマノンに会いたいと思いながら、今だって生きてます。

 ほかにも万城目学さん、恒川光太郎さんの特別短編、新潮文庫nexの全作品が一覧できる「nex2周年特集」など、充実の誌面でお届けします。

 なお、以下ご案内です。
 小説投稿サイト「エブリスタ」と本誌がコラボレーションし、〈1万字小説を書いて「yom yom」編集長に読んでもらおう! コンテスト〉を開催いたします。応募期間は2016年9月30日(金)23:59まで、発表は本誌2017年冬号(2月1日発売)およびエブリスタWEB上で行います。詳細はhttp://estar.jp/lpr/yom001 でご確認ください。
 なんとも面映ゆいタイトルの企画ですが、私が応募作から選ばれた数作に講評をさせていただくという内容です。
「エブリスタ」は、累計100万部を突破した「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」シリーズをはじめ「オークブリッジ邸の笑わない貴婦人」シリーズ(新潮文庫nex刊)など人気作を続々刊行している太田紫織さんも執筆する有名サイト。
 書き手の皆様が「自分の一番面白い物語」をぶつけてくださる公募原稿を読むのは、常にとても楽しい体験です。たくさんのご応募、お待ちしております。

「yom yom」編集長 西村博一

次号予告

2016年秋号は、11月1日発売です。
次号は辻村深月さん「ツナグ2」の第四話、「一人娘の心得」をお届けします。
ほかにも谷瑞恵さん、朱野帰子さんなど豪華連載陣はますます充実!

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

yom yomとは?

どんなに親切な人に囲まれていても、やっぱりわたしはダメなんです。
友情や愛情や、絆やお金や、いろんなものを与えてもらい、時には自分から差し出してみたりもするのですが、わたしはいつも破れていて、温かなものは心からダダ漏れに漏れていってしまうのです。

それで自分の気持ちをもてあますと、わたしは物語を探します。
縁もゆかりもないはずの誰かの壮絶な戦いや、未来に人類が見つけ出す希望だとか絶望だとか、あるいは恋やら萌えやらに夢中で悶絶している少年少女……。そのままの自分が描かれるでなし、そして必ずしも幸せばかりの結末でもないのに、何で物語というものは、心を立て直してくれるのでしょう? 登場人物という人々は、わたしの丸まりきったこの背中を、さすって叩いて、伸ばしてくれるのでありましょう?

文字を覚えてからこの方、いや誰かに読み聞かせてもらっていたあの頃から、たくさんの物語に出会ってきたと思います。そして物語は、ああダメダメで困ったなどと呟く面倒くさいこのわたしに、幾度も見知らぬ世界を見せてくれました。
あるときは「なるほど、オトナになったらこんな恋とかしちゃうのね」と身の程知らずのドキドキを教え、またあるときは「がーん…自我崩壊! でも、でも、立ち上がるし!!」と若干キレ気味の元気を絞り出させる。しかしてその実体は、いつも困っているその人に、「世界はこんなにも様々な可能性に満ちているから。あなたの袋小路、そのうち出口できちゃいますから」と囁きかける、不思議な力を宿していると思うのですよ、物語というものは。

「yom yom」は、そんな物語の囁きを、あなたがこっそり聞きに来る雑誌になりたい。ダメな人と(ダメでしょ? あなたも)一緒に歩いてくれる、あなたのための物語が、見つかる場所になりたいのです。それでお気に入りの物語を読み終えたら、「まーしょうがない。明日も生きていってやるさ」とでも思っていただければ幸せです。

切れ味鋭い読み切り小説に加え、長編やシリーズ作品の掲載にも力を入れます。最近の文芸誌の流行に逆らうようではありますが、長いお話の面白さというのも、やっぱり捨て難い気がするのです。その分、この公式サイトでは、各作品のあらすじや登場人物の紹介に頑張ります。
それでは見知らぬ物語の世界へ、ようこそ――。

「yom yom」編集長 西村博一

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞

yom yom

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