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第一回 テーマは「食べ物」回答と解説 出題:南陀楼綾繁
yom yom vol.1の「小説検定」、挑戦して頂けましたでしょうか?
たくさんの方から解答をお送り頂きました。ありがとうございました。
vol.1の「今号のお題」の解答と解説を以下に掲載致します。ぜひご覧下さい。


問12 池波正太郎の時代小説にはさまざまな料理が登場するが、江戸っ子の食べ物といわれながら『鬼平犯科帳』にも『仕掛人・梅安』にも登場しないものは?
a・蕎麦 b・握り鮨
c・天ぷら d・鰻
 b・握り鮨
池波正太郎はインタビューで、「〔鬼平犯科帳〕には、鮨というのは出て来ない。というのは、当時すでに鮨はあったけど、いまでいう握り鮨のようなものはなかったから書かない。いまのような鮨はもっと後ですよ」と語っている(佐藤隆介編『池波正太郎・鬼平料理帳』文春文庫)。


問13 谷崎潤一郎が名付け親である神戸のレストラン「ハイウエイ」。京都在住時の谷崎が、この店からわざわざ取り寄せていたメニューとは?
a・クリームシチュー b・ビーフステーキ
c・鴨のテリーヌ d・コンソメスープ
 d・コンソメスープ
渡辺たをり「祖父・谷崎潤一郎の美味追求」(『饗宴』第二号、婦人生活社)によると、「谷崎が下鴨の家にいた頃、一時体の具合が良くなくて、食事が思うように食べられなかった事があったのだが、『ハイウエイ』のコンソメスープなら飲めるというので、この店にも良く使いをやってコンソメスープを取って来させたのだそうだ」


問14 作家・森茉莉が限りなく愛した父・森鴎外。「私の父親は変った舌を持っていたようで、誰がきいても驚くようなものをおかずにしてご飯を食べた」。さて、それは何でしょう?
a・イナゴ b・葬式饅頭
c・みたらし団子 d・センベイ
 b・葬式饅頭
「鴎外の味覚」(『記憶の絵』)には、以下のようにある。「その饅頭を父は象牙色で爪の白い、綺麗な掌で二つに割り、それを又四つ位に割って御飯の上にのせ、煎茶をかけて美味しそうにたべた」という。子どもの茉莉たちも、父にならって同じようにして食べたそうだ。ほんとにウマイんだろうか……。


問15 恩田陸のミステリー『木曜組曲』では、五人の女性が集まりよく飲みよく食べる。この五人が一緒に食べた最後の食事は何でしょう?
a・パンケーキ b・鯛すき鍋
c・クラム・チャウダー d・トマトと茄子のスパゲッティ
 a・パンケーキ
この物語は、最初から最後まで、「古い住宅街に溶け込みつつも異彩を放っているこぢんまりした洋館」うぐいす館を舞台に進められる。美味しい料理には、ときどき、毒が仕込まれている。


問16 千一篇ものショートショートを書いた星新一。彼が書いた、味をテーマとした作品に登場しないモノを選べ。
a・自動調理機 b・料理の妖精が宿るペンダント
c・不味い料理が旨くなる調味料 d・電波で味覚を伝えるラジオ
 c・不味い料理が旨くなる調味料
aは「安全な味」(『マイ国家』所収)、bは「美味の秘密」(『妄想銀行』所収)、dは「味ラジオ」(同)で登場する。cは星新一ではなく、藤子・F・不二雄『ドラえもん』の秘密兵器である。


問17 次の作家と、死ぬ直前に食べたものを結びつけなさい。
a・永井荷風 ア・赤貝のにぎりずし
b・林芙美子 イ・浅草・染太郎のお好み焼き
c・久保田万太郎 ウ・市川八幡・大黒屋のカツ丼
d・坂口安吾 エ・氷アンズ
e・安藤鶴夫 オ・深川・みやがわの鰻
 a-ウ、b-オ、c-ア、d-イ、e-エ
荷風は大黒屋のカツ丼が好物だった。いつものようにそれを食べた日の夜、胃潰瘍の吐血による心臓発作で死去。林芙美子は鰻好きで、取材のあとに寄った深川の「みやがわ」で鰻を食べ、その夜、突然苦しみだして死んだ。久保田万太郎は梅原龍三郎邸でのパーティーに出張していた鮨屋で食べた鮨の赤貝を咽喉に詰まらせて死去。万太郎はふだんナマモノを口にしなかったのになぜこの日は鮨なんか食べたのか、と弟子の川口松太郎は腹を立てた。坂口安吾が染太郎に寄った後、桐生の自宅に帰って死んだのはたしかだが、お好み焼きを食べたかは不明。安藤鶴夫は、好物の氷アンズを食べ終わろうとしたとき、糖尿性昏睡に陥った。


問18 次の日記の記述と書いた人を結び付けなさい。
a・気分良好。食欲なし、サンドイッチ、ヨーグルト、メロン、バナナ、アイスクリーム、夜はオイナリさんと納豆巻。茶うまし。「ユリイカ」の青年来る。「美しい土地」という詩と、宮本美音子さんの絵二枚渡す。夜、氷枕。
b・新宿第一劇場の稽古が始まる。終って、雨の中を、第一ホテルの夕食ってものを食いに行く。西銀座の辺、電車路掘り返されて泥んこ道、暗澹たる銀座。第一ホテルの夕食のコースたるや、ゆるいビール一杯、くさいポタージュ、かぼちゃの煮たの、塩辛い肉一片。これで客は押すな押すなの行列。
c・今日からのご飯は、赤土色の豆粕が入っているやつだ。美味い。何でも美味いのかもしれない。味噌汁はウドで、これも春の香り清純に美味い。美味いけれども私は一杯一椀で止す。坊やは二杯目を喰い三杯目もよそって貰い、浮かれてニャンニャンニャンニャンと言う。
d・朝  ぬく飯三わん 佃煮 なら漬け/便通及ほーたいとりかへ/牛乳五勺ココア入り 菓子パン/午  まぐろのさしみ  粥三わん みそ汁 なら漬け 林檎一 ぶだう一ふさ/牛乳五勺ココア入り 菓子パン/便通やや堅し/晩  親子丼(飯の上に鶏肉と卵と海苔とをかけたり) 焼茄子 なら漬  梨一 苹果一/九時眠る
e・仕事場にいるおかみさんは、小さい男の子と二人で、うどんだかそばを、茶わんの熱い汁に浸してはすすっているところだった。(略)私も熱いうどんが食べたくなる。おかみさんは煮干の匂いのする咳をし乍ら話すので、食べたくなる。
ア・武田百合子『富士日記』
イ・徳川夢声『夢声戦争日記』
ウ・正岡子規『仰臥漫録』
エ・古川緑波『悲食記』
オ・田村隆一『退屈無想庵』
 a-オ、b-エ、c-イ、d-ウ、e-ア
日記の日付は、aが平成四年二月六日。bが昭和十九年十月四日。cが昭和十九年三月三十一日。dが明治三十四年十月一日。eが昭和四十年十二月一日。


※お詫びと訂正
yom yom vol.1の小説検定「今号のお題」問17の、イ…「浅草・初太郎のお好み焼き」は「浅草・染太郎のお好み焼き」、オ…「銀座・宮川の鰻」は「深川・みやがわの鰻」の誤りでした。読者のみなさまにお詫びして訂正いたします。

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