続きが気になって気になって仕方ないけれど、読み終えてしまうのがもったいないと思うような小説に出逢ったことはありますか? 残りのページが減っていくのが惜しくて、でも先を読まずにはいられない。そのような小説に出逢えた時の興奮は、何年経っても忘れられずに残っているのではないでしょうか。『竜馬がゆく』『
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『
深夜特急』など、私にも思い出に残る作品がいくつもあります。
『
本格小説』もそんな一作です。夜を徹して夢中で読み耽り、さらに、驚きの結末の余韻に浸り、ドキドキして眠れなかったほどでした。
――あたしが死んでも、殺したいって思い続けてちょうだい。
――僕が死んだって、殺したい。
作中、ある男女が交わす言葉です。
切ないとか哀しいとかそのような言葉で表すのがはばかられる一途な想いには、愛情の美しさと同時に、恐ろしさや醜さを感じて背筋が寒くなりました。
著者の水村美苗さんは言います。
「この“小説のような話”を書くために私は小説家として生まれてきたのだ。天に感謝した」と。
喜び、情念、執着、憎悪、快楽、醜悪。
男女間や血族間で繰り広げられる身を裂かれるような愛憎物語には、現実を離れてふわふわと体が浮いてしまうような、それでいてずっしりと心にのし掛かり離れることのない、なんとも筆舌に尽くし難い感情が湧き上がります。この小説に出逢えて本当に幸せだ、と心から思えます!
長いですし分厚いです。物語の始まる前の長い長い序文に、じれったさを感じるかもしれません。けれど少し読み進めていけば、ページを捲る手を止められなくなるはずです。そして読後は、もう一度読み返したい!と思わずにはいられないでしょう。
さぁ携帯電話の電源は切って、この究極の“本格小説”にどっぷりと浸って下さい。
「yom yom」編集部(M・T)