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yom yom ヨムヨム 23号 特別定価:780円(743円)

司馬遼太郎『峠』

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 秋山真之、山内一豊、坂本龍馬、土方歳三。この人物たちの共通項はお分かりですか? みな司馬遼太郎さんの小説の主人公たちで、小説に描かれたことで認知度が格段に上がりました。今回ご紹介する『』の主人公、河井継之助もその一人です。

 河井継之助こそ“ラストサムライ”、だと私は思っています。幕末維新期の越後長岡藩に生きた河井継之助は、坂本龍馬にも引けをとらないくらい時代を見据える能力に長けていたにもかかわらず、最後まで「武士」を貫きました。龍馬のように、脱藩をして日本中を駆け巡る道を選ばなかった。いや、選べなかった、といった方が正しいかもしれませんが。藩の家老として継之助は、旧幕府側でもなく新政府側でもなく長岡藩を何とか中立に保とうと努力しますが、やがて戊辰戦争に巻き込まれていき……。分厚い文庫3冊のページが、あっという間に捲られていくはずです。

 余談ですが、私は初めて『竜馬がゆく』を読んだとき、面白さのあまり熱に浮かされ興奮し、描かれた世界の全てが史実だとすっかり思い込んでしまいました。司馬さんの描く「坂本竜馬」のあまりの格好良さに、初恋のような一途な思い込みの極致にいたのかもしれません。
後日、高校の授業で、その熱からふと冷める瞬間を迎えます。幕末のある史実が『竜馬がゆく』とは、少し違う流れで紹介されたのです。「竜馬がゆくと違う!」とひどく混乱して、日本史の先生に詰め寄った覚えがあります。『竜馬がゆく』はあくまで小説、という現実を突きつけられて勝手にひどくがっかりしたものの、何故、敢えて変えたのか、ということを考えるようになりました。

 史実との違いを楽しむことも、時代小説を読む醍醐味の一つだと、今では思っています。その「違い」には、著者の何かしらの想いが込められているわけで、そこに想像を巡らす楽しみは、他ジャンルの小説ではなかなか味わえないのではないでしょうか。司馬さんは『竜馬がゆく』を書かれた際、「これはあくまでフィクションですよ」という意味を込めて、坂本龍馬の“龍”の字を敢えて“竜”にしたという説もありますし。
何だか、『峠』より『竜馬がゆく』のおススメになってしまった気もしますが、どちらもおススメの一冊に間違いありません。歴史を知らずとも、歴史に興味がなくとも、きっと心が震えるような感動が湧き上がるはずです。

「yom yom」編集部(M・T)

2007年03月15日
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