つい先日25歳になりました。四半世紀生きたのだと感慨深くもあり、外見も中身もちっとも「大人」になっていない自分を眺め、ふぅとため息が漏れたりもします。
憧れの人の人生と重ね合わせて、ふわふわと妄想する癖があるのですが、沢木耕太郎さんが『
深夜特急』の旅に出た年齢にあと一年と思うと、そわそわとした心地になったり、遠藤周作さんが大病を乗り越え『
沈黙』を書くまではもうしばらくあるぞと、妙な安堵感を(勝手に)覚えたりします。
今回ご紹介するのは、森見登美彦さん著『
太陽の塔』で、これは森見さんがまだ大学生のときに応募し、日本ファンタジーノベル大賞を受賞したデビュー作です。半年以上かけて書かれたそうで、おそらく23歳頃に書かれた作品でしょうか。23歳といえば、大江健三郎さんが『
飼育』で芥川賞を受賞された年齢でもあります。……23歳。その年齢をとうに超えていることに気づき、自分の人生もう取り返しがつかないような、何ともいえない気持ちになります。もちろん、大作家と自分とを比べるなんておこがましいにも程がありますが。
『太陽の塔』の面白さは言葉では伝え切れないところがあり、ぜひ読んで頂きたいのですが、内容をほんの少しだけご説明すると、失恋の痛手から回復できない「クサレ大学生」森本が、元恋人である水尾さんを「研究」と称して観察(尾行)することから物語が展開していきます(作中森本は、「この研究はストーカー犯罪とは根本的に異なるものだ」と断言していますが、どうみても……笑)。バカなことに真剣かつ深刻に取り組んだり、朝まで飲み明かした友達の家で雑魚寝し、二日酔いと体の節々の痛みに自己嫌悪に陥ったり、ふと将来について不安に駆られたり、自分はなんと孤独なんだと一人落ち込んでみたり……。学生時代の懐かしさに浸る一方で、森見さん独特の文体、ちりばめられたユーモア、そして何より、いつの間にか幻想世界に入り込んでしまっている不思議さに、一行も一言も読み飛ばせない、読み飛ばしたくない気持ちに駆られます。
発売当初は、どうしてこの小説がファンタジーに分類されるのかと、読者がわいわいと騒いだそうです。確かに、魔法で変身したりドラゴンが出てくることはないのですが、水尾さんの夢の中の叡山電車に迷い込んだり、クリスマスイブに「ええじゃないか騒動」が京都の街中に巻き起こったりと、実は幻想的な要素が満載です。京都という街が持つ、「何が起こってもおかしくない」と思わせる不思議な力を、森見さんは小説の舞台装置として大いに活用されているというわけです。
9月27日に発売となる「yom yom」4号では、「『ブンガク散歩』に出よう」という特集を組んでいます。そのなかで、森見さんには京都を「やや文学的に」さまよって頂きました。森見さんらしい、ホントかウソか分からない、エッセイか小説か計り知れない、不思議な世界が繰り広げられます。どうぞご期待下さい。
「yom yom」編集部(M・T)