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yom yom ヨムヨム 23号 特別定価:780円(743円)

『新源氏物語』田辺聖子

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 遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。本年もyom yomをどうぞよろしくお願い致します。
 年末に仕事で京都を訪れたのですが、街のあちらこちらで、「源氏物語」という文字を見ました。古の都だからというわけではなく、ご存知の方も多いと思いますが、2008年は「源氏物語」が書かれてからちょうど千年の記念すべき年となるのです(「紫式部日記」のなかで、「源氏物語」について初めて記されたのが1008年なので、それをもとに決められたそうです)。
 年が明け、正月休みボケでふわふわとした昼下がりに新聞を見ていたら、瀬戸内寂聴さんと綿矢りささんが「源氏物語」についての対談をしていました。瀬戸内さんはyom yom vol.5にもご登場頂きましたが、「源氏物語」を現代語訳し、京都・宇治にある「源氏物語ミュージアム」の名誉館長もされています。世界最古の長篇小説であり、400人以上もの人物が登場する壮大な「宇宙のようなスケール」の魅力を、瀬戸内さんは端的に「小説として滅法面白いから」と断言されていました。千年という歳月を生き残り、様々な言語に訳され世界中で楽しまれている物語というのは、そうなかなかありません。
 瀬戸内さんの他にも、谷崎潤一郎、与謝野晶子、円地文子などの現代語訳は大変有名ですし、コミックでいうと『あさきゆめみし』はもとより、最近では江川達也さんによる漫画化も話題になりました。他にも、映画に歌舞伎に能、宝塚にテレビドラマ(向田邦子脚本ではジュリーが、橋田壽賀子脚本では少年隊のヒガシが光源氏を演じています)といった本当に幅広いジャンルで扱われていることでも、「源氏物語」が持つ“物語力”の強さが窺えます。
 この記念すべき年に、「源氏物語」を通しで読んでみようかなぁ、でもやっぱり(何といっても長いし)しんどそうだなぁと、一念発起し切れずにいる方(私自身ですが……)にオススメなのが、田辺聖子さんの『新源氏物語』です。
(あやふやながらも)学生時代の記憶を掘り返してみると、紫式部の「源氏物語」の一帖は「桐壺」と題され光源氏の母・桐壺更衣の話、つまり光源氏の出生から始まります。一方田辺源氏は、原文でいう三帖「空蝉」から始まり、すでに光源氏が色恋にせっせと勤しみ、人妻空蝉との一度きりの逢瀬が忘れられずに思い悩んでいつつも様々な女と次々に関係していく姿から描かれます。このことからもお分かりのように、原文に忠実に「現代語訳」したわけでなく、田辺さんが新たに構成し、“現代の小説”として紡がれた『新源氏物語』なのです。「注釈書なしに“源氏”を読める楽しみを読者と共有したい」と、後に田辺さんが書かれていますが、叶わぬ恋に身を焦がしたり、逢えない日々に悶々としたり、手練手管を尽くし手強い相手を口説き落としたりといった、千年前も変わらぬ恋愛心理を楽しめるだけでなく、田辺さんが使われる言葉の美しさや語彙の豊かさからは、当時の王朝の雅でたおやかな様子が伝わってきます。古典の授業で“勉強した”「源氏物語」の印象が、ガラッと変わることでしょう! (『新源氏物語 霧ふかき宇治の恋』にて「宇治十帖」が描かれています)
 田辺源氏といえば、『田辺聖子の「源氏物語」』として、講演CD(全9巻)も発売されています。こちらは原文通りの順番で、桐壺の章から終章の夢浮橋まで、田辺さんのユーモアたっぷりのお話を楽しむことができます。
 田辺源氏を読破して、すっかり源氏の世界に夢中になった後には、『《新潮日本古典集成》源氏物語』で原文に挑戦してみるのもいいかもしれません。原文の脇に注が付けられ、大変読みやすくなっています(受験勉強の役にも立つかも!?)。また、中村真一郎さん著の新潮選書『源氏物語の世界』では、人物関係など作品の解説だけでなく、「源氏物語」を通じて当時の平安朝の生活を浮かび上がらせています。
 様々な人が様々に描く「源氏物語」を読み比べるツワモノを目指すのも、乙な心意気かもしれません。その暁には、どれが一番面白かったか、どうぞこっそり教えて下さい。

「yom yom」編集部(M・T)

2008年01月17日
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